《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》二十七話
賢者の息吹に戻ってきた俺は、一旦マリーと別れて自分の部屋へと戻った。
「さて、それじゃあ早速試してみますかね」
ストレージ畫面を開き、スキル出のコマンドを選択。
「えっと、今日手にれた魔石は、ゴブリンとホーンラビット、そしてオーガの魔石の三つだったな。とりあえず、最初はゴブリンの魔石を選択して……あれ?」
ゴブリンの魔石からスキルを出しようとした所で、肝心のスキルが表示されない事に気が付いた。
バグか? とも思ったが、そもそもスキルにバグなんてあるのか?
「んー、仕方ない。これは後回しにして、次はホーンラビットの魔石をっと。あったあった、跳躍」
お目當てのスキルを発見し、早速スキル出でスキルを習得。これだけでスキルが手にるんだから、反則だよな。
スキルを出した魔石は、そのままただの石になってしまったが、これはいい。予想の範疇だ。
「さて、次はお待ちかねのオーガの魔石。一どんなスキルを持ってるのかな、と」
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スキル出畫面でスキルを確認すると、そこには「剛力」とだけ出ていた。これは魔核と同じなのか。
まあ剛力だけでも充分すぎるし、別にいいけど。
「とにかく、剛力も習得、と」
これで跳躍と剛力の二つのスキルが手にった事になる。試しにステータスプレートを開いてみたが、そこにはやはり「跳躍」と「剛力」が増えていた。
そしてやはり、スキル出した魔石はただの石に。うん、これは多分間違いないな。
「これでスキル習得は完了。次は」
ホーンラビットとオーガの魔石からは問題なくスキル出出來た。という事は、ゴブリンの魔石からスキル出出來なかった原因は。
「ゴブリンって、実は何もスキルを持っていない、とか?」
あり得る。今日討伐したゴブリンは、昨日の特殊個と比べて明らかに力が弱かった。それはつまり、強化を持っていなかったという事の裏付けでもある。
気配探知を持っていたかは分からないが、もし持っていればあそこまで一方的に攻撃が當たるとは思えないし、持っていなかったと考えて問題ないだろう。
という事は。
「スキルを持ってない魔もいるって事か?」
ゴブリンだけがスキルを持っていないとも限らないし、今後はそういうのも確認していった方がいいか。
「ちょっと殘念だったけど、スキルを持ってなかったからって、俺に害がある訳じゃないし、別にいいか」
さて、気を取り直して次の作業に移ろう。
今度はストレージ畫面からゴブリンの魔石と水を選択すると、やっぱり水の魔石が合出來る。
すぐに合して、スキル出畫面に。
すると、火の魔石の時と同様「水魔法」というスキルが出出來る様になっていた。
そのまま出して、スキル習得。
ステータスプレートを開いて確認すると「水魔法」のスキルが増えていた。
「ヤバい、スキルはイメージで使うって知ってから、どんどん頭の中にコマンドの使い方が浮かんでくるんだが」
こういう生産系のスキルは、ある意味想像力との勝負な気がする。
いや、一応ストレージは収納スキルなんだけど、やってる事はほぼ生産スキルなんだよな。
そのおかげで、使えるスキルがどんどん増えていくのだから、別に文句はないけど。
「これで三つの新しいスキルが増えた訳だが」
正直、使いこなせるかは分からない。けど、持ってて損はないだろう。
「実際、気配探知は全然使いこなせてなかった訳だし」
そう。さっき気付いたのだが、俺は今日の依頼の最中、一度も気配探知を使っていなかった。
昨日は使いこなせていると思っていたけど、それはあくまで気配探知を意識している間だけみたいだ。
現に今は、隣の部屋にマリーの気配をじている。
いくらスキルを習得して訓練しても、ちょっとやそっとの訓練じゃ付け焼刃にしかならない、という事だ。
なら俺が一番に使いこなすべきスキルは、やはりストレージという事になる。
「これだけは、他人にはない俺の強みな訳だしな」
もちろん他のスキルも出來るだけ使える様になった方が良いのは間違いないが。
「まあ、當分は訓練の毎日だな」
便利なスキルも、使いこなせないと意味がない。継続は力なりとも言うし、頑張るか。
數時間後。
俺は一階の酒場に晩飯を食べに來ていた。
「すまない、し遅くなった」
現在の時間は、昨日よりし遅いぐらいだと思う。この世界で時計を見た事がないから、正確な時間は分からないけど。
「いや、別にそこまで遅くはないと思うけど。なあマリー」
「そうですね、そこまで遅くはないです」
正直さっき串焼きを食べたから、時間的にはむしろ丁度いいくらいだ。
「そうか。それならいいのだが」
フーリは生真面目というかなんというか。
別にそこまで気にしなくてもいいと思うんだけど。
「何か食べたいはあるか? 無ければまた適當に注文するぞ」
「あ、じゃあブルーベアーのを使った料理が食べたいんだけど」
「ブルーベアー料理だな。なら、このブルーステーキを頼んでみるか。で、後は」
「はい! 私は」
「すみませーん」
「聞いて! せめて聞いてよ姉さん!」
いやぁ、流石にマリーが食べたいは俺でも分かるからなあ。聞くまでもないって事なんじゃないかな。
「どうせオイ椎茸のグラタンだろ?」
「……ち、違うし」
「ん? 違うのか。なら別の料理を」
「ごめんなさい噓ですオイ椎茸のグラタンをお願いします」
否定しようとしたマリーだが、フーリの言葉にあっさり陥落した。
認めるの、早かったなあ。
「じゃあ注文するぞ」
「ああ、頼む」
「……お願い」
マリー、落ち込むな、強く生きるんだぞ。俺は心の中でマリーにエールを送っておいた。屆いたか分からないけど。
「お待たせしました! ご注文をお伺いします!」
今日も元気に接客するアミィ。この子の元気な接客は、見ていて本當に気持ちいいな。
「ブルーステーキとオイ椎茸のグラタンを三人分、それとラガーを二杯とエールを一杯。後、旬野菜のサラダを頼む」
「かしこまりました! 々お待ち下さい!」
手元の伝票にメモを取り、廚房に走るアミィ。日本だと店員が走るだけでクレームをつける客もいたが、ここでは特に文句を言う人はいないみたいだ。
これも文化の違いというものなんだろう。
「ところでマリー。その元のブローチ、買ったのか?」
フーリが指差してるのは、寄り道した時に俺がプレゼントした雫型の青いブローチだった。
「え? えっと、これは」
「うん? どうした? 妙に歯切れが悪いが」
マリーは頬を薄く染め、俺をちらっと見ると、視線を落としてしまった。
「ん? カイト君がどうかしたのか?」
フーリが尋ねるも、マリーは相変わらず恥ずかし気に視線を落としたまま。
「あー、実はだな」
俺はさっきの出來事を大雑把にフーリに説明した。
「ほうほう、なるほどな。それでマリーはこんな調子なのか」
話の途中で屆いたサラダをつまみながら、フーリは興味深げに俺の話に耳を傾け、最後まで聞いていた。
そして現在、フーリはニヤニヤしながらマリーの事を見ている。その顔は、この狀況を楽しんでいるみたいだった。
「もう、姉さん! この話はこれぐらいでいいでしょ!」
俺がフーリに説明している間、百面相みたいな事をしていたマリーは、辛抱堪らんといった様子で話を終わらせようとしている。
「はは。あんまりからかうと、マリーに恨まれるからな。この辺でやめておくか」
「お待たせしました! ご注文のブルーステーキです! オイ椎茸のグラタンもすぐにお持ちしますね!」
話が終わるタイミングで、丁度メイン料理が屆いた。いいタイミングだな。いや、もしかしてタイミングを計ってた、とか? まさかな。
「さて、丁度メインも屆いた事だし、早速食べるとしようか」
「賛賛! もうお腹ペコペコだよ!」
マリーが何かを誤魔化すように聲を上げ、俺達は屆いたブルーステーキを食べ始めた。
ナイフでを一口大に切り分け、それを口に運ぶ。
そしてを一噛みし。
「うわ、何このステーキ。めっちゃ旨い!」
程よい塩気と溢れ出すが、良いじにマッチしていて、晝間の串焼きとはまた違った旨さをじた。
パンに挾むと、溢れたをパンが吸って、これまた旨い。
これは手が止まらん。
「気にったか。ブルーベアーのは食べやすく、旨い事で有名だからな」
そうなのか、全然知らなかった。
と、今はそんな事より目の前のステーキだ。
結局オイ椎茸のグラタンが屆く頃には、ブルーステーキを半分以上食べ終えており、追加でもう一つ頼んでおいた。
いや、これ本當に旨いわ。
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