翌日。

引っ越しを考えて昨日探索をしたが、ここから出られる道を見つけることができなかった……

快適に生活する目標を立てたけど、もうここでも普通にある程度の生活を送れている。

周辺燃え盛ってるから暑いっちゃ暑いんだけど、こので転生されたお蔭で猛暑日くらいの暑さで済んでるし。

土魔法で家作れたし、水魔法で風呂も問題ない、何なら外気熱で勝手に沸いてお湯になってくれる。『千里眼リモート・アイ千里眼』で地球を覗けば好きなアニメも見放題。殘念なのは、漫畫やゲームが出來ないことくらいか。

“住めば都”って言葉もあるし、地獄のり口に家を建てたけど、もうここに住めば良いかな～。

そう思っていても、やっぱり何とかしたい部分は々ある。

まず、食料の問題。

については、狼いるからあれを狩れば問題無さそうだけど、調味料も無く味しくない。焼いて食べるという原始的な方法でしか調理できない。

それと添えが圧倒的に足りない。

魔法で作れば良いじゃないか？　確かにその通りだけど、もし萬が一ＭＰが必要な時に無かったらどうなるか、それを考えるとおいそれと魔法を使うべきではない。私のＭＰがどれくらいあるのかも見當が付かないし……

この場所は灼熱だから、草や木が全く見當たらない。

この家が建ってる部分もカラカラになった土ばかりで、例え種があったとしても育たないだろう。

家も土魔法で作ってあるから、熱による劣化が早い。一部分は陶のようになっている。きっと外気熱は何百度もあるんだろう。すぐに修復作業もしないとならないかもしれない。

灼熱の原因はなんだろう？

あと、人間である限りは、やっぱり太がしい。

ずっと真っ暗闇に炎の赤で染められて鬱々うつうつとしてくる。

まあ、地獄って伝承や伝説によると、地の底を突き抜けて更に突き進んだ異空間のようなところにある場所らしいし、太のなんか屆くわけもない。

これについては、ちょっと考えがあるので後々試してみよう。

次に、話し相手が全くいない。

トロルならいるけど、アイツら私を敵対視してるし、頭悪そうなんだよな～。

『転生したらスライム案件』って漫畫で、魔に名前付けただけで進化するってのがあったけど、それだけで進化してくれたらどんなに楽だろう……

コミュニケーション取りに行ってみようかな？

昨日ちょっと相手にしたから大人しくなってくれてると良いんだけど……

高い壁と通路だけ見てて気が付かなかったんだけど、上を見ると吹き抜けで真っ暗だけど空 （？）が見えている。

「ってことは、私羽生えてるからここ飛んでいけるんじゃない？」

わざわざ何時間もかけてあの通路を歩く必要は無いのだ。

上空に飛んで周囲を見渡してみる。

思った通り、この地獄の門広場とトロルの集落だけ壁で囲まれているだけで、周囲にも地面がちゃんとある。

真っ暗でよく見えないけど、見える範囲だけで火を噴いてる大き目の火山が一、二、三、四、五、六、七個ある。

灼熱の原因はコレか……

このエリアのすぐ近くまで溶巖が流れてる。ここは何かバリアめいたものがあるのか、広場まではってこない。

これは私の考えだけど、『地獄』という場所が、ある種の神域だから溶巖が到達しないのではないかと予想。悪いことした人間の魂を浄化させる機関だから溶巖で潰されてしまうと都合が悪いとか。まあ、予想でしかないからただ単に運良く潰れてない可能もあるけど……

「活火山がすぐ近くに七個もあれば、そりゃ熱いわけだよ」

魔界から出ることは……出來そうもない。現世に帰れそうな道は見當たらない。

「現世には帰れないか……」

改めてここから出られないことを痛し、絶に苛まれる。

「もうしょうがないか……」

くよくよ悩んでも仕方がない。ここをしでも住みよく快適に生活できるように努めよう。出來ることなら、魔界・地獄全域を快適に住めるような場所に！

と思ったけど、地獄はそのままで良いか、現世での極悪人が刑をけるためにある場所なんだから、どんな激しい拷問けてても知ったことじゃない。そもそも地獄に來るようなことをしてきたヤツの方が悪いのだ。きちんと苦痛を味わって魂を浄化して、真っ當な転生をしてもらいたい。

となると、地獄の外にあるこの魔界には住んでいる生が大勢いるだろうから、そちらの生活改善をしてやろうではないか！

とりあえず、昨日作った家、通稱：我が家へ戻って來た。

「トロルとコミュニケーションを取るとしても、手土産が必要ね」

現世なら菓子折りでも持っていくところだけどお菓子が買えそうな店は見當たらない。

「こんなに荒廃している土地だから、食料も不足してるだろうし何とか作が作れたら良いんだけど……」

試しに樹魔法で木を生やしてみる。

木はどんどん長し、私の長の三倍くらいにまで長する……予定でいたが、長している最中にすぐさま火が著き、ほどなく焼き落ちてしまった。

私は熱をじていないが、この場所はこんな瞬時に火が著くほどの溫度だということを、再認識する。

ケルベロスの方をチラッと見て思わず呟いた。

「何でアイツこの熱で大丈夫なの？」

當のケルベロスは涎よだれ垂らして就寢中だ。

あぁ……地面が毒の涎よだれに汚染される……トリカブトは……地面が灼熱のためか生えてこない。

「三つ全部の首が寢ることはないって書いてあったと思ったんだけど……昔読んだ話と違うな……」

一つの首が寢て、二つの首が起きてるはずだけど……三つともガッツリ寢てるやん！

種は魔法で作れそうだけど、この灼熱の土地で作れる作など、恐らく存在しない。種を撒まいた先から焦げついて死んでしまう。

「何とかならんかな……誰かアドバイスくれる人がいれば良いんだけどな……うわっ！」

人が私の近くを橫切った！

どこから來たのかわからないけど、突然現れた！

ここに來て三日経つけど、人間を全く見たことが無かったから失念してたけど、ここって地獄のり口だから悪いことした人がやって來るのよね。

「そもそも地獄に來るほどの極悪人なんて中々いないから何日かに一人くらいしか見かけないのかもしれない」

歩いて來た人は、目の焦點が合ってないように見える。生気や覇気のようなものもじられない。無思考で歩いているというじ。服裝は死裝束しにしょうぞくだ。これが本來の亡者ってやつなのかな、私も亡者のはずだけど。

「木が発火する溫度なのに、死裝束しにしょうぞくが燃えない不思議……じゃあそれを焼き盡くしたケルベロスの火炎放って相當熱かったのね……」

亡者は熱でがただれてきているが、意識が無いためか意に介さず歩いて行く。

「私みたいに自由に思考できてるのが特殊で、ここに來た人はあれが普通なのかな？　まあ、私は日々質素倹約しっそけんやく質実剛健しつじつごうけんに生きてきたから、何でここに落とされたかもわからないんだけどね」

亡者はケルベロスをよそに地獄の門へって行った。

ケルベロスは相変わらず寢てる。

「アイツ、自分の仕事してないな。何人か走させててもおかしくなさそう」

今日は種のことは諦めて、我が家に戻った。

作と種については、ここを快適にするために絶対に考えなければならない。

何でも知り得るスキルみたいなのがあれば楽なのにな……そんなことを考えながら風呂って寢た。

“住めば都”という言葉は確かにありますが、私は熱いのが苦手なので灼熱は遠慮したいです……

次回は7月28日の夜頃の投稿を予定しています。

第7話【萬能書『オルシンジテン』】