今日は植を育てる方法を模索するため、庭に出てきた。

昨日、オルシンジテンで木が自然発火する溫度を調べたら四百五十度らしいことがわかった。

私にはせいぜい猛暑日くらいの気溫にしかじられないから、そんな超高溫の中、日々生活していた事実に驚きだ。

今思い返してみると、毎日ってるお風呂、必ずししたら泡が出てくるけど……あれってジャグジーじゃなくて、沸騰してたってことなのかな？

スキル『水知』で知可能な溫度が四十三度くらいまでだから沸騰してても気が付かなかったのね……私は風呂釜でグツグツ煮られてたのか……

ケルベロスを見る。

「アイツ何で450℃の高溫の中平気でいられるの？　人間だったら多分即死する溫度よ？」

相変わらずアホみたいにびてくる犬。

「昨日フラフラ歩いて來た亡者はもう死んだだから熱さとか大丈夫なのかな？」

そういえばオルシンジテンが昨日「死者は一定期間、または、恒久的にほとんどの思考能力を無くします」って言ってたな。

“または”ってことは、思考能力が戻ってくるやつもいるってことよね？

この熱さの中思考能力が戻られても、更なる地獄ね。何も考えずに働いてた方がよほど幸せかな。まあ、苦しませることで魂の浄化を図るらしいし、そのための地獄か。

「トロルたちにも熱耐があるのかな？」

トロルは生命力が高く、適応力があるって話を聞いたことがある。切斷されても再生するやつがいるとか。熱に適応しててもおかしくない。

まあ……私がトロルだと思って、勝手にトロルって呼んでるだけで、実際は何の種族なのかわからないんだけども……

「じゃあ狼たちは？」

地獄のり口付近にいるような生だから、適応しているとも考えられる……見た目赤いし。それは関係無いか。

この間歩いてみたじでは、トロルよりも地獄の門広場に近いところに群れが居たから、熱への適応力はかなり高いと思われる。

もしかしたら、熱に強いコイツケルベロスの眷屬か何かなのかもしれない。

何か前に見たことあるな、冥界にいる狼……たしか……『ガルム』？

あの狼は仮にガルムと名付けよう。

と言うより、これらの生は“この場所”で生まれているので、そもそも環境に適応できてる生態なのかもしれない。

ただ、トロルの集落はこの間歩いたじから推測すると、ここから多分五十キロくらいは離れてるから、火山が集しているここよりは大分熱くない可能がある。

まあ、そんなことは今はどうでも良いや。

當面の目標は、どうやってここに植を植生させるかということ。

「私の魔法は生命は作れないけど、植は作れるって言ってたはずよね」

試しに、樹屬と火屬を組み合わせて、自ら燃える芽を作ってみる。

自ら燃えてれば、熱にも耐があるはず！

樹魔法で長促進させ、木にする予定だったが、育たない。

「あれ？　樹魔法って植作れても長はさせられないの？」

それならと昨日、時間魔法という系統があるとわかったので、芽の周りの時間を早めて実が実る大きさにまで長させてみようとした。

が、時間を早めているのに長はせず、芽が出ただけであっという間に枯れてしまった。

「あれ？　これでも無理だ。何で？」

私の時間魔法がダメだったのかな？

試しにその辺に落ちてるし大きめの石を持って、時間を一萬倍に早めるイメージで魔力を込める。し経った後表面がボロボロ崩れて風化していく。

時間魔法は問題無いようだ。

しかし、今使ってみて思ったけど、この時間魔法ってかなり危ないな。生にかけようものなら即座に塵ちりと化しそうだ。今後注意して使おう。

「何がダメなんだろ？」

………………

そこで植の生育に必要なものを思い出した。

植にはによる合が必要なのだ。

地球上最悪の侵略的植である『ナガエツルノゲイトウ』でさえ、太が無いと枯れてしまうって話だ。

ちょうどこの空の鬱々うつうつとする赤暗さを何とかしたいと思っていたところだ。

そこで、時間魔法と魔法を組み合わせて疑似的な太を作ってみようと思う。

これだと熱を発しないので、火魔法も含めたいところだけど、今火をプラスするとこの場所が更に熱くなってしまう可能が濃厚なので、とりあえず魔法と時間魔法だけで作って、この場所の熱問題を解決したら効果をプラスしようと考えている。

魔法で疑似的な太を作り、空のちょうど良さそうなところへ浮かべる。

時間魔法で二十四時間周期で一定の間隔を移するように設定する。

これらを組み合わせて、移ルートを設定。魔界がどの程度広いかはわからないから、端から端を疑似太で照らすというのはちょっと無理がある。

そこで、日が沈む時には、地面に接した時にが消え、翌日の日の出にまたが付くという方法に設定する。疑似太の日の出から日沒までの移範囲は…………う～ん……百キロもあればこの生活圏なら十分だろう。百キロに設定した。

一応日の出と日沒の場所に生活圏のある生がいるかどうかも確認に行ったが大丈夫そうだった。

ちなみに、日が沈む地點に行けば疑似太にれることができるが、れたところでダメージとかは無い。まあ、まぶし過ぎて近寄ることが難しいかもしれないけど……

「東西の方向がどっちかわからないな……じゃあ、適當に広場の中央から見て、地獄の門のある方向を北ってことにしようかな」

昔の人は北は死の方角って言ってたしね。

「いや、オルシンジテンに訊きけば良いんだ！」

そういうわけでオルシンジテンに訊きいたところ、適當に言った地獄の門のある方向が北だったらしく、どちらにしても問題無かった。

北の方角も分かったので、疑似太が広場を橫切るように設定した。

ちなみに、トロルたちの集落は南の方角にある。

「よーしっ！　これで疑似太の完だ！」

雨が降らないから、年中晴なんだけど、そこは魔界だから仕方がない。

晝間の時間帯に“がある”という事実だけでも、幾分か心が安らぐ。

でも……

私にとっては太が出來て良いことなのだが、何だかさっきからケルベロスの様子がおかしい。萎して怯えてさえ見える。

そういえば、ケルベロスって太のが苦手だって設定があったな。ヘラクレスにのの下に引きずり出された時に怯えてたんだっけ。まあ、あれは真っ暗な地底の環境下から、突然の下に出されたからビックリしただけらしいし、そのうち慣れるでしょ。

「でもまだ空の暗さが気になるわね。確かオルシンジテンが『小規模な範囲・十分な魔力があれば景ごと書き換えることも可能です』って言ってたから、この地獄の門広場だけでも、青空に書き換えよう」

空間魔法を使い、空の一部分だけ、効果『（永続）』で地球と同じ青空に書き換えた。

これで一応人間界に居た時と似たような景を再現出來たと思う。

でも、書き換えたのは一部分だから、ちょっと遠くの方を見ると……

「真っ暗ね……何て歪な空なんだろう……」

青い空と黒い空の間にグラデーションの部分が全く無いため、まるでこの世の終わりかのような様相を呈している。

今後徐々に青い空の部分を広げていくことにしよう。

「よし！　本日は雲も無く快晴だ！」

活火山が周囲に七個あって、外気溫を450℃に設定しましたが、これが無理があるだろうと思った場合は、火山が何個あれば450℃に達するか教えていただけるとありがたいです。

火山七個あれば450℃くらいに達するのではないかとある程度適當に設定したため、間違いである可能が高いと思っています。

次回は8月2日の夜頃の投稿を予定しています。

第12話【燃える木、凍てつく木、潤いの木】