「それで私どもに何のようですか？」

態度が急に紳士的になったな。格好は腰巻きだけでほぼだけど……

これが噂の変態紳士か。

初めて遭った時は怪並の巨きょ軀くだと思ってたけど、こうしてきちんと対面してみるとそんなに大きくないな。

生前の私の長は大160cmだから、まだその覚が抜けておらず2m超えてるのかと思ったけど、転生後のは生前より小さいから、多分その差を考えると180cmくらいかな？　普通の人間のし大きい人と変わらないくらい。

あと……よく見るとやっぱり細いな……初遭遇の時はかなり怪補正がかかってたんだな。

「この集落は凄く貧乏に見えます、食べるのに困っているのではないですか？」

「確かに日々獲を捕まえられなければ、その日は何も食べることができないでいます。この辺りには熱に強い狼くらいしかいないので、狩りをするのも命がけです」

「じゃあ作を育ててみませんか？」

「作？　先日大量の水が空から降ってきて熱さは和らぎはしましたが……灰と煤すすだらけのこんな土地で作が育つとは思えません」

『大量の水』……

彼は『雨』のことをそう表現した。

このトロルたちは、この地で雨というものを経験したことがないのかもしれない。

何百年、何千年、もしかしたら何萬年かもしれない。ずっと灼熱の大地だったから。

生にとって水は必要なもののはずだけど、この人たちは水が必要ないように適応進化しているのかも？

「ここで育てることが出來る作の種を私が用意します」

「そんなことが可能なんですか！？」

「し時間がかかるかもしれませんが、何とかします。水の流れる川は近くに無いのですか？」

「近くにはありません、毎日ここから4時間ほど歩いたところにある川から水を汲んできます。川の近くには木が群生しているところがあり、村で使う木はそこから調達しています。水や木を取りに行くにも、狼より強い生がいるため命がけです」

周辺に植あったんだな……私はこの辺一帯しか見て回らなかったから気付かなかった。

火山帯から遠くなれば、しは植が育っている場所があるということか。

いずれにせよ大地が熱せられた狀態では作が育つことはなかった。大地を冷やしたのは、現時點では正解だったと思いたい。

「狼より強い生がってこないように、集落と外界を隔てる壁のには見張りを置いています」

え？　見張り？

見に行ってみる。

ホントに居た……

壁の側からしか見なかったから気付かなかった。

やっぱり、この壁を壊さないことには意味があったのだ。狼より強い生がってくるのを防ぐ意味で、壁の一部分だけにを開けて、そこから食料その他を調達しているのだ。

川まで4時間……往復8時間か……遠いな……

川や木が生えてる場所も一応あるにはあるんだな。これはちょっとした収穫かも。歩きで4時間なら私なら30分かからない。

水が必要無いように進化しているのかと思ったけど、生である以上はやっぱり水は必要らしい。

「先日の空からの大量の水で、この辺りの水不足が大幅に改善されました」

あれはやっぱり正解だったのかな。

「空からの大量の水……ちょっと言いにくいですね……今頭に浮かんだ言葉があります。仮に『滝』という名前にしましょうか」

惜しい！　落下してくるのは同じだけど大分様子が違う！

「あれは、滝じゃなくて雨と言います」

「既に名前があるんですね、では雨と呼ぶことにします。あの雨が降ったくらいの頃から、この地をが照らすようになりました」

その作ったのも私です。

「ただ……この地の水はけが良すぎるのか、水はすぐに消えてしまいました。確保できている水ももう殘りないので、間もなくまた水汲みに出なければならない時が訪れるでしょう。それと、あの雨が降った頃から急激に寒くなり、すぐにしだけ溫かくなりましたが、今も寒さに震えています」

そりゃあ、そんな腰巻きだけの格好じゃ寒いだろうよ……早いところ、食住全て改善してやらないとならない。

ん？　ちょっと待って？

「さっき確か木が群生しているって言ってたけど……」

「生えてますよ、川のほとりに黒ずんだ葉っぱの木ですが」

「それってが無くても育つ木なんですか？」

「木ってが無いと育たないものなんですか？」

「なくとも私はそういう認識でいました」

影で育つものなんて、コケやカビくらいかと思ってたけど……この世界にはが無くても大木に育つ木があるのか。

じゃあ無理に太を作らなくても良かった。

………………いや、やっぱり太無いと鬱になりそうだから必要ね！

住環境となるトロルたちの家も酷いものだが、それよりもまずは食を何とかしないと生命を繋ぐことができない。結果食住の『住』は後回しだ。

喫きっきんの課題はやはり食と水、その次にあの男は腰巻き、は當てと腰巻きしかない服裝の改善だ。

「わかりました、それらも私が解決します。あなたの名前は何と言うのですか？」

「リーヴァントと言います」

姿に似合わず何かカッコイイ名前だな。

「ではリーヴァント、今からあなたをこの集落のリーダーに抜擢ばってきします。この食料を集落の皆に分けてください」

予あらかじめ狩っておいたガルム十匹を空間魔法で取り出す。

見ていたリーヴァント含め、數人の村人から「おおぉ？」という聲が上がる。

「水はあと何日分くらいありそうですか？」

「そうですね……普通に使って3日、多く見積もっても5日というところでしょうか」

「わかりました、その間に何とか解決策を考えます」

1日くらいは水を飲まなくて良いとすると、タイムリミットは6日ほどか……

「では、私は一旦帰ります」

おっと、帰る前にまだやっておくべきことがあった。

リーヴァント以外の村人の知も上げておかないと。

「今から集落の住民全員を集めてもらえますか？　子供赤ん坊年寄り至るまで全員を」

「な、何をするつもりですか？」

かなり怯おびえがあるわね……私にはこの人トロルに対して前科があるし仕方ない……

まあ、「子供赤ん坊年寄りまで全員集めろ」なんてセリフ、アニメや漫畫でも村を滅ぼしに來た悪いやつからしか聞いたことないし、不安も當然か。

「危害は加えないと約束します、必ず一人もらさずに連れてきてください」

そうしないと、全員に魔法かけられないから、一人だけおバカとか出てきちゃうしね。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

しばらくして、村の全員がここに集まった。

「いない人はいませんね？」

何か學校の先生が點呼を取るようだ。

しかし、集まった人數多いな……1000人くらいいる？　これＭＰ足りるかな……

全員集めろって言った手前、出來ないとは言えない……人數甘く見積もってた……集落だからせいぜい500人くらいかと……

ガルムも十匹だと一匹當たり100人で食べないといけない。明らかにない……帰る前にもう二十匹くらい狩って持ってくるか。

「村外れのタイレンがおらん」

まだ來てない人いたか。

またし待つ。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

タイレンらしきトロルが遅れてやって來た。

もういない人いないでしょうね？

まあれてたら後から個別に掛け直せば良いか。

「コホンッ……では！　全的永久的エターナル・ハイ・伝的知インテリジェンス上昇 (大）・オール・ジーン」

集まった村人全員に知上昇の強化魔法をかけた。これで集落の全員の知が上がったはずだ。

我ながらチートじみた力だ……

でも、ドッと疲れた……どれくらいＭＰ持って行かれたんだろう……

一応次の世代まで影響するように『伝的』って意味も込めてみたけど、実際のところは次の世代までこの強化魔法が続くかどうかはわからない。

しかし、これでもう私を食べようとは思うまいよ……多分。

今回はおバカだったトロルの知が劇的に引きあがりました。

次回は8月7日の20時頃の投稿を予定しています。

第17話【嫉妬の王襲來】