《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》18 魔

なんとかラピスとそれに群がる男子達から逃れたロイドは、そそくさと逃げるように屋敷に戻った。 軽く息を切らしつつ、何より神的な疲労をじながら門を開くと、庭で紅茶を飲むエミリーがいた。

こちらに気付いたエミリーが紅茶を置く。

「あら、どーしたのロイド?」

「あ、姉さん。いやラピスさんと男子達につかまったから逃げてきた」

「ふぅん、いつも通りじゃない」

そう言って再び紅茶を飲むエミリー。

その所作は年不相応なしさがあり、弟ながら見惚れそうになる。――返された言葉はロイドに深く突き刺さったが。

「そうなんだよ…ほっといてしいんだけど」

「無理だと思うわ」

愚癡のようにひとりごちるロイドの言葉にエミリーは即答した。

なんでだよ?という目線を向けるロイドに、エミリーはどこか呆れたような目線を返す。

「まぁ鈍いあんたには分からないでしょうけどね。それより手の本は何?しは魔について発見があったの?」

「……はぁ。これは本屋にあった古代語っぽいのが書いてある本。なんかヒントになればと思ってもらっーー買ってきた」

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「ふぅん。まぁ頑張りなさい。さっさと魔につけて、からんでくる男子達をボコボコにするのよ!」

「しねーよ」

理由を答える気がないエミリーに嘆息するロイドに、エミリーは握りこぶしを顔の前に掲げ、騒な事を言い放つ。

ロイドとしては腹立たしい時もなくはないが、神年齢だけなら30歳以上ほどの目線からするとこれは「子供の嫌がらせ」でしかない。

さらに言えば自分が弱く、武を以て領地を守るウィンディア家としては”恥さらし”である事は事実だとけ止めている。

なので、魔という恥さらし卻の糸口が見えた今でも、やり返そうという考えは湧いてこない。

「しないの?!道場に行く度にボコボコにされてるのに?!」

「めんどいし。てか姉さん、休憩はいつまでなん?あと、紅茶冷めてるけど」

「えっ、あ!やばっ、怒られる!」

一口で紅茶を飲み干し、慌てて屋敷に戻るエミリー。

ロイドはため息をつきながら後を追うようにして屋敷に戻った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その夜、鬼ごっこをして帰ってきた3人を庭で待つルーガスが迎えた。

「おかえり。今日はどっちが勝った?」

「ロイドよ!もう、こそこそとき回って!」

「正面きって逃げても勝てる訳ないじゃん」

もはやエミリーとロイドの一騎打ち狀態である事を知ってるルーガスは「誰が」ではなく「どっちが」勝ったのか聞いてくる。

いつもを隠しつつ、トラップを仕掛けてまわり、見つかったらトラップに導しつつまたを隠す。を繰り返して逃げ切ったロイド。

そのせいで1人だけ手が土で汚れているが、當然の事だろう。

「しかし父上、どうされました?庭で待ってるなんて珍しい」

「うむ、どうせ室外で試す事になるなら最初からと思ってな。ロイド、これを試してみろ」

「え、俺ですか?」

ルーガスが差し出してきた布の巻かれた棒狀のけ取る。

ズシリと重みをじさせるそれを、ロイドは汚れた手である事を気にした様子もなく布をはがしていく。

そこには黒い鞘に緑の皮を巻かれた柄があった。

「ん?これ、短剣?」

「うむ、抜いてみろ」

「分かった……ってこれは…」

刃の部分には何やら文字が刻まれていた。

見てみるが、全く読めない。

「古代語らしい。魔じゃないかと言われるだ」

「なるほーー」

「なるほど。魔が使えずとも魔ならと言う訳ですね」

「…うん、んじゃ早速つかっーー」

「さすがお父さん!ロイド、早く使ってみなさいよ!」

フィンク、エミリーと立て続けに自分のセリフを遮られ、思わずジト目を向けてしまうロイドだが。

「どうしたんだロイド、早く見せてくれ」

「何よ、勿ぶってないでさっさとしなさいよ!」

2人が自分より興しているのを見て仕方なく文句の言葉を飲み込んだ。

なんだかんだいつも心配してくれている2人である、ロイドに力が手にるかも知れない事に喜びを隠し切れてない様子だ。

それを見て怒る気にもなれない。むしろ、正直嬉しい。

「分かってるよ。魔力を流せばいいんかな?」

「そのはずだ。フィンク、エミリー、し離れてなさい」

「分かりました。父上は?」

「不測の事態に備える。ロイド、心配はいらん。思い切りやれ」

フィンク、エミリーが十數メートル程離れた所に移した。

ロイドは真橫に立つルーガスに頷く事で意思表示をして、短剣に意識を集中する。

魔力を握る柄から流していく。

以前魔法を使えないか試した際は、魔力がすり抜けるような手応えの無さしかなかった。

それならと思い切り魔力を流してみれば魔法々に砕けてしまった。

しかし、この魔には自分の魔力が吸い込まれるような覚を覚える。

それでもなかなか反応を見せない短剣。

覚的には手応えをじているので、魔力量の問題か?とロイドは流す魔力量を恐る恐る高めていく。

「ロイド、気にするな。もう一度言うが、思い切りやれ」

 

そんなロイドにルーガスは肩に手を乗せて言う。

その肩にれる手に安心を覚える。

「……おう、やってみる」

いつの間にか壊す不安も未知への恐怖もなくなったロイドは言葉の通り思い切り魔力を流し込む。

バケツの底にが空いた水のように、どんどん魔力が吸い込まれていく。

そろそろ魔力がきつい、と頭の端で考えた瞬間だった。

ごうっ、と風が渦巻いた。

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