《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》19 パパは化け

「うわ、ちょ、やばいこれっ…!」

離れた場所にいたフィンク、エミリーでさえ咄嗟に腕で顔を庇う。

庭にあった機や椅子は吹き飛ばされ、植えてある庭の木々は盛大に枝葉を揺らして葉を散らしていく。

吹き荒れる風に押されるようにフィンクとエミリーは歯を食いしばって踏ん張るしかない。

一方、暴れ回る風に慌てるロイド。自に風の影響がないのは幸いだが、慌てている為か制が出來ない。

視界の端でエミリーが豪快に転がっていくのを見てより焦るロイド。

「ふむ、功だな」

「いやどこがだよ!」

そんなロイドの耳にいつも通りの落ち著いた聲が響く。

ついツッコミをれてしまうロイドだったが、珍しく歯を見せる程の笑みを浮かべるルーガスに思わず目を丸くする。

ルーガスは渦巻く暴風の中心にいるにも関わらずまるで影響をじさせなかった。

そして、その笑みを引っ込めると、ルーガスが周りに目を向け、「風よ」と呟く。

次の瞬間、暴れ回っていた風がピタリと止んだ。

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「え…」

手に持つ短剣からは間違いなく手応えが返ってきている。つまり、現在も発しているという事だ。

暴風で軽いパニックになっていたロイドは肩かしになったように冷靜さを取り戻す。

「……父さんが止めてくれたのか…」

「うむ、なかなか強力な風だな。詠唱なしでは止めれなかった」

そう褒めるように言うルーガスに、ロイドは喜ぶより先に助かった、と安心を覚えて思わずその場に座り込む。

「疲れたか。だが、お前にはこれを使いこなしてしい。さしあたり、その魔の魔を停止させてみるんだ」

「あっ、そうだった」

だが、休んでいる場合ではなかった。

一度発してからは多魔力の減りは穏やかになったが、いまだに魔力を吸い取り続けている短剣に目を向ける。

(魔力は勝手に吸われていくし、出て行く量は抑えられてもなかなか止められない…)

この魔の扱いになれてないからか、それともそういう仕様なのかは分からないが、魔力の供給を止めて停止させるのはなくとも現狀は難しそうだ。

ならば、と魔に「止まれ!」と脳んでみる。すると、拍子抜けする程あっさりと止まった。

「ふむ、無事止めれたようだな」

「うん、止まれって思ったらなんか止まった」

「そうか。……もしかしたら魔は意思に反応するのかも知れないな」

顎に手を置き言うルーガスを、魔力の急激な現象や気疲れで座り込んだまま見上げるロイド。

ルーガスはその目線に気付き、ロイドに目を向ける。

「しばらくは俺がいる時に訓練をしよう。周りに危険がない程度まで使いこなせれば、後は自分で研鑽するといい」

「分かった。ありがとね」

「うむ。まだこれからだが、ともあれロイド、よくやった」

そう言って頭を暴にでるルーガス。

ロイドはし照れくさそうにしながらも、手を振り払う事はせずされるがままにれた。

「やったじゃないロイド!さぁこれで町のガキどもを吹き飛ばしに行くわよ!」

「辭めなさい。父上が抑えてくれてこの威力だし、まともにぶつけたら死ぬから。でもロイド、良かったね」

騒なことを言うエミリーと、それを諌めるフィンクも近寄って笑顔を向けてくれた。

ロイドは頬が緩むのを止められない。

それが気恥ずかしく、誤魔化すようにロイドはルーガスに尋ねる。

「ところで父さん、これはどこから手配してきたの?」

「あぁ、現在確認されている中で一番古いとされるダンジョンに潛ってきてとってきたんだ。幸いフェブル山脈にあったので近かったしな」

え、そんなノリで取って來れるもんなの?と首を傾げるロイドとエミリー。

いやいや、そんなアホな!と呆れと驚きを合わせた表をするフィンク。

「そろそろシルビアが晩飯を作り終えるだろう、ろうか」

そんな表の息子娘に構わずルーガスは先導するように玄関へと向かう。

ご飯だ!と駆け出すエミリーを脇目に、ロイドはフィンクに尋ねる。

「兄さん、ダンジョンって日帰りで行くもんなの?」

「ロイド、父上を基準にするのは無謀だ。ピクニックじゃないんだから」

フィンクは冒険者としてたまに活している。

その為、本などより現実的な、験談としての知識があるが、だからこそルーガスに呆れをじているのだろう。

、いくら自信があるにしても領主と妻2人でダンジョンなんて危険な場所に行くなと言いたい。

「そもそも、さっきのロイドの風の魔もだ。僕だってを守ろうと風魔法で対抗したけど、風のきが複雑すぎて上手く押し返せなかったんだ」

魔法とは、決められた一定のきをするのが基本だ。

を持たせる事も出來なくはないが、発の際にはそのきを組み込んでしまうか、発しても魔力を繋いで無理やり作するしかない。

 

風魔法適のあり神と呼ばれるフィンクですらその強力さと複雑なきを併せ持つ魔には対応に困ったという。

「それを、自分の周りのみならず庭中の周囲の風まで完璧に止めるなんて……いくつかの魔法を同時展開しつつ、それを完全にコントロールするなんて神業をあんな涼しい顔でやってのけるなんて……ギルドマスターでも無理だよ」

「しかも父さん、風よ、とかしか詠唱してなかったぞ」

「第1節だけの略式詠唱…そこまで行くともう訳が分からないね」

魔法は魔法陣か詠唱を用いて発する。

この詠唱は區切りを一節として上位の魔法ほど複數節あるのだが、詠唱するほど魔力を込めやすくなり、またイメージを鮮明に描ける。

ルーガスは無詠唱ではないとは言え、たった第1節までの詠唱であの暴風を抑える威力と、複雑なきを捉えるイメージとコントロールを詰め込んだというのだ。

どれほどの魔力作と魔法コントロールが必要になるか、今のフィンクでは想像を絶する程である。

「まぁ、我が父ながら化けだってことか……」

「そうだね……」

いつかはあの父の後を継いでいかなけばならないと思うと、先程までの喜びを忘れて頭が痛むのを止められない2人であった。

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