《ダンジョン・ザ・チョイス》1.初期選択

「つまらない」

もうすぐ中學を卒業し、高校生になる。

夢らしい夢はなく、無為に生きている。

異・常・者・が・の・さ・ば・っ・て・い・る・せ・い・で・、僕の方が異端者扱いされるような世界で、どう夢を見ろと言うのだろう。

喧嘩を仕掛けたら異常者扱いされる世の中。

どんな事にだってケースバイケースがあるだろうに、どいつもこいつも常識人ぶって、自分達を異常などと欠片も思わない。

……この考えがとても野蠻だと自覚していても、衝的に思ってしまうんだ。

だから、不謹慎にもんでしまう。

人類なんて……滅んでくれないかなって。

「ハァー、馬鹿だよなー」

僕の考えは、決して的外れじゃない。

でも、この社會で生きていくのには合わない。

分かってる。彼等が異常だからといって、僕が異常じゃない理由にはならない。

この世界に、異常じゃない人間なんて居ないんだ。

それに気付いてしまうと、生きている事そのものがくだらなく思えてくる。

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自室の味気ない天井を見ながら、そんなくだらない事をボーッとしながら考えていた。

カチリという音。夜の八時を告げる時計の音。

『いえいえ、貴方は見所がありますよ』

「…………!? ――おわぁーーーッ!!」

て、天井から、仮面を付けた男が生えてきた!?

けなくも椅子から転げ落ちてしまう!!

――心臓がバクバクと痛いくらい鳴っている反面、思考が研ぎ澄まされていくのが分かる。

まるで、冷靜にならないと死ぬぞと、本能が訴え掛けているかのように。

「……アンタ、なに?」

『ふむ……中々冷靜ですね。訳が分からなすぎて、まずは報収集といった所でしょうか? 話しを聞いてくれない人が多いから助かりますよ』

ピエロのような格好の男が、天井から抜け出て、床に――浮いた!?

天井にはなんて無い……幽霊みたいな存在なのか?

『えーー、巨勢こせ君ですよね? 私は”いざない人”。それ以上でもそれ以下でもありません』

「はあ……」

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格好はともかく、怖いじはしない。

男にしては高めの聲だからだろうか?

『貴方は、とあるゲームの參加者の一人に選ばれました! よって、これよりゲームに參加して戴きます!』

――ゲームという単語を耳にしたからか、非日常的なこの狀況に、ドクンとしときめいてしまっている自分が居る。

「…………どんなゲームですか?」

『簡単に言うと――――生・き・て・・出・するゲームです』

――面白そうと思っていた以上の……恐怖が込み上げてきた。

生きて出。その言葉が、言葉通りの意味に聞こえてしまったんだ。

『勘が良い方のようですね。やはり期待できそうです♪』

でバレたのか!?

「斷るのは……」

『――ノーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!』

さっきまでの高い聲ではなく、野太い聲で否定される!

『これは強制參加。斷るなんて選択肢はなーーー~~い!』

危険なやばいゲームに巻き込まれた……それだけは理解出來た。

『今から、貴方をとある場所へとお送りいたしま~す! 貴方はひたすら、そこから出するために進み続ければ良い! たーだーしー、常に死の危険が付き纏う。それだけはよくご理解下さい! ちなみに、出を目指すというルール以外は一つもありません。なにをどうしようと自由!』

ルールが無い?

『もう一度言います。なにを! どうしようと! 貴方の! 自由!! 全ては自己責任!』

「勝手に……ゲームに參加させようとしているくせに?」

出に功した方には、途轍もないご褒がありますよ! 幾つかの選択肢の中から、好きな願いを葉えて差し上げます!』

……なんでもじゃないんだ。

目の前で超常現象を起こしているから、てっきりもっと気前が良いだと。

『例えば、理想の伴しいとか、強力な武しいとか。私と同じ側に來るなど、選択肢は無數にございます♪』

ヤバイ狀況なのに、ワクワクしている自分が居る!

僕に人形のような生き方を強いる現実から、解放してくれるのではないかという期待が膨らんでしまって仕方ない!

『それでは、そろそろゲームに……おっと、大事な事を聞いていませんでした』

大事なこと?

『一・人・で・苦・し・む・の・と・大・勢・で・苦・し・む・の・、どちらがよろしいですか?』

「一人で」

なんか、自然と肝が據わった。

沙汰なが沈み消え、心が冷たくなっていく。

これから起こる出來事に、生半可な覚悟で挑んじゃいけない……それがに染みたようだ。

『フフフフフフフフ、即答ですか! いやー、貴方には期待せずにはいられないな~~!!』

僕は、普通の事しか言っていないはずなのに。

『最後に一つ。この先、貴方は多くの選択を迫られます。よく考えてから選ぶように』

急に、視界が歪んで――――

『行ってらっしゃいませ、コセ様』

「ここは?」

窟の中だった。

「格好が……」

さっきまでの部屋著から、一番気にっている私服になっている。

黒のジーパンに、黒のYシャツ、ダークグリーンのダウンベスト。

「やっぱり……常識じゃ考えられないような事に遭遇してしまったんだ」

この先、なにが起きても不思議じゃない。

急に、ウォン! という音と共に、青緑のの板が出現する。

○ようこそ、コセ様。ダンジョン・ザ・チョイスへ。

の板に、そう書かれていた。

ダンジョン・ザ・チョイスって……もうちょっと良い名前はなかったのか?

○この板の名前はチョイスプレート。任意で出現させる事が可能で、何かを選択しなければならない時にも出現します。

時間なんかも表示されている。

○手にれたアイテムを、チョイスプレートに出しれすることが可能です。

「アイテムボックスみたいなか」

本當にゲームみたいだな。

○まずは職業を選択してください。

「職業は……戦士、魔法使い……だけじゃねぇか」

本當にこの二つしかないぞ!

特に説明も無い……なら仕方ないか。

MPが無くなると、戦えなくなるイメージがある魔法使いは止めておこう。

「戦士だ」

OKボタンを押すと、本職が戦士になった。

「サブ職業?」

本職の下に、サブ職業と書かれた欄が二つある。

「……今は関係ないか」

指で、チョイスプレートのサブ職業の所にれてもなにも起きなかった。

○本職は戦士に決まりました。尚、貴方の本職は二度と魔法使いにはなりません。

こういう言いをされると、もの凄く損した気分になるな!

○次に、武を選んでください。

リストが表示され、長剣、短剣、大刀、小太刀、斧、大斧、槍、騎槍、二の槍、弓、強弓、長盾、丸盾、手甲、腳甲手など、様々な武が選択できるようになっていた。

ワクワクしてきた思考が、あれも良い、これも良いと訴え掛けてくる。

ふと、今居る場所を見渡す。

僕が居る場所は蔵の中。ここだけ、高さ二メートルくらいの位置かららかいが差し込んでおり、等間隔で小さな源が存在していた。

ここは天井が高いけれど、ここから続く道は橫幅が狹く、天井も低い。

「槍……いや」

この狀況だ。ダンジョン・ザ・チョイスというRPGっぽい名前からしても、確実にモンスターのような存在が襲ってくるだろう。

槍ならばこの狹い窟では役に立つと思ったけれど、狹すぎて取り回しが出來なさそうだ。

そもそも、弱な僕が金屬の塊を振り回せるのかという問題がある。

「……短剣にしとくか」

の中を覗いても先が見えないから、判斷要素が無い。

短剣なら使い勝手も良いはず。

短剣を選択すると、○形狀はこれでよろしいですか? と出た。

どうやら、形狀をある程度選べるらしい。

初期狀態が両刃だった短剣を、片刃の反りがったに変更する。

この形狀の方が折れづらいし、切りやすい。

「おっと!」

目の前にが集まって、鈍の短剣が出現する。

落ちそうになったため、慌ててそれを摑んだ。

まるで鋳型で作ったような頼りないだけれど、無いよりは良い。

の長さは三十センチくらいか。

○短剣が選択されたため、剣スキルを自修得しました。

「本當にゲームみたいだ」

○生活魔法は最初から使用することが出來ます。詳細はご自分で確認してください。

「戦士でも魔法は使えるのか」

短剣には皮の鞘とベルトが付いており、腰に巻いて左に裝備した。

○最後に、コセ様は一・人・で・苦・し・む・方を選択されましたので、ちょっとした特典を得られます。

表示されたのは、サブ職業特典というもの。

★初級魔法使い ★僧 ★盜賊 ★拳闘士

★盾使い ★弓使い ★棒使い

「この七つの中から選ぶのか。今回も詳細は無しね」

勘で選ぶしか無いとは。

弓や盾は無いから、選んでも仕方ない。

盜賊はよく分からないし、ここは初級魔法使いを……魔法は使ってみたいけれど、現実的に考えて僧にしておくか。

「僧なら、ちょっとくらい怪我しても大丈夫だろう」

おそらく、回復手段が手にるはず。

○サブ職業は付け替えることが可能です。新しいを手にれたら、々試してみてね。

本當、ゲーム序盤の説明みたいだよな。

○冒険に旅立つ前の、全ての準備が整いました。

チョイスプレートが消える。

「冒険か……」

今度は任意で、チョイスプレートを開いてみた。

「本當に出た」

イメージするだけで目の前に現れたよ。

サブ職業は……セットされた狀態になっているな。

「持ちは、水と布だけか」

は”鉄の短剣”と表示されており、メイン裝備扱いになっている。

ただ、今著ている服は裝備品扱いになっていない。服と書かれた欄があるにも関わらず。

「一応、グラフで能力値が分かるんだ」

鉄の短剣と僕の能力値を、レーダーチャートタイプのグラフで見ることが出來た。

ただし、數値はどこにも表示されていない。

「細かい部分が適當だよな」

チョイスプレートで々確認した僕は、窟の奧へと……進まない。

あの仮面の男と出會ったのは夜の八時。

チョイスプレートの片隅にも、21:09と表示されている。

「寢よ」

あの窟の奧は気になるけれど、もう遅い時間だ。

なにが待ちけているのかも分からないのに、ろくに睡眠を取らずに進むなんてあり得ない。

僕はチョイスプレートから布を出現させて、眠ることにした。

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