《ダンジョン・ザ・チョイス》13.犬獣人のトゥスカ
「すみません、奴隷にだけ部屋を貸すことは出來ない決まりなんです」
細のの子が、不自然なくらいニコやかに……そう返答してきた。
「倍払うと言ってもダメですか?」
「ダメです」
「ハアー……分かりました」
NPCに渉しても無駄か。
大人しく30G払って、206と彫られた金の鍵を貰い、トゥスカと二人で部屋にった。
鍵を閉めた後は、部屋の中を確認する。
「個室にキッチン、シャワーやトイレまで付いているんだ」
ちゃんとシャワールームとトイレが分けられているのは嬉しい。
一緒のタイプは、俺の中ではあり得ない!
「楽にしてくれ」
棒立ちになっていたトゥスカにそう言う。
「では、先に裝備変更の許可を」
「へ? ……ああ、どうぞ」
そりゃ、いつまでもあんな格好ではいたくないよな。
ぼろ布に、適當にを開けたかのような作りの服では。
トゥスカがに包まれると、先程購した“獣人の戦裝束”姿になっていた。
出度で言ったら、こっちの方がちょっとだけ酷いかも。
Advertisement
「武は戴けるのでしょうか?」
「ああ……手持ちにある武は限られているけれど、使い慣れているとかあるのか?」
「ブーメランです」
「ブーメラン! 凄いな! “転剣”を持っているのか!」
上位職業のスキルじゃん!
「獣人ならば、大抵皆持っています。狩りにブーメランを使いますから」
「そ、そうなんだ」
盛り上がってしまった自分が恥ずかしい。
「なら、これはどうかな?」
“獣人の伝統ブーメラン”を出現させ、トゥスカに手渡す。
「……これをどこで?」
「この村に來る前、アンデッドが襲ってきたんだ。その人が使っていた」
そう言えば、あの人自分の事を獣人だって言ってたような?
「私達獣人が、い頃に授かる一般的なです」
ブーメランを握る手に、力がっている。
俺が彼から視線を外してベッドに腰掛けようとした瞬間――トゥスカがいた。
「グフッ!!」
ベッドに押し倒され、ブーメランを首に當てたまま馬乗りされる。
左手は踏みつけられ、右手は摑まれて、あっという間にトゥスカに拘束されてしまった。
Advertisement
「ここはどこだ!! なぜ私達を捕らえた!! 知っている事を全て吐け!!」
悲痛な怒聲が部屋に響く。
「俺の知っている報は全て話す。だから、俺の質問にも答えてしい」
「そんな偉そうな事が言える立場か? 私は、いつでもお前の首の骨を折れるんだぞ」
「そんな事をすれば、君も死ぬぞ」
主の死は奴隷の死。
「奴隷として生きるくらいなら、死んだ方がマシだ」
…………見込み通りだ。
「ハハハハハハ!」
「なにがおかしい!」
「君を選んで良かったって、自分の目が節じゃなかったって思えて嬉しいんだ」
買われなければいずれ殺される。
そんな狀況で、一人だけ購されないようにわざと小汚くし、奧の方に隠れていた。
つまり、誰かに買われるくらいなら死んだ方がマシだと思っていたという事。
あの諦観混じりの聲が、俺にその事を気付かせてくれた。
高潔なプライドの無い人間には、決して出來ない振る舞いだと。
「ふ、ふざけるな……」
白の頬が、ちょっと赤くなってる?
「それに、ここを出するのが君の一番の目的だろ? なら協力しあえる。俺も、よく分からないことだらけなんだ」
「……なら、まずは私の質問に答えなさい。信用できると思ったら、離れてあげるわ」
「俺は、別にずっとこのままでも良いけれど」
「は?」
お腹に掛かっているトゥスカの重みとか、ぬくもりとか、らかさとか……正直もっとれていたい。
とはいえ……このままの勢が続くと理を保てそうにない。
「トゥスカの匂いとか、とか眼福だし……」
しからっかてみる。
大きなの谷間……はブーメランとトゥスカの手でよく見えないけれど。
「くっ!!」
「トゥスカの目、凄く綺麗だし」
寶石のように輝く、潤んだ翠の瞳がとてもしい。
「こ、この変態!」
トゥスカが離れ、を庇うような勢に。
は見えてなかったんだけれど……。
「…………話し合いをしようか」
「…………うん」
★
俺がこのダンジョンに連れて來られた経緯を、簡単に説明した。
「つまり、私と同じ被害者って事ですね」
「同じ?」
どういう意味だ?
「私達の祖先は、昔デルタって名乗る奴等に侵略されました。それまではLvなんてものは存在しなかったらしくて……ただ、文字の読み書きや言語はそいつらの方針で広まったのだそうです」
俺が戦ったアンデッドが言っていたな。デルタども……って。
トゥスカ達の言語って、日本語だよな? それも近代的な系の日本語。
「獣人の半數は、一定の年齢を過ぎると奴等に連れて行かれます。その後どんな扱いをけるかは、実際に連れて來られるまでは知りませんでした」
俺とは違う形で用意された、異世界人のプレーヤーって事か。
「買われなかった獣人はどうなる?」
「一年売れないと、処分されるそうです。病気に掛かったりしても同様に」
そこは予想通りか。
「この村に五日以上滯在しない方が良いって話しは?」
「誰かに買われたらそのルールは私達にも適用されるそうで、自分の主を積極的にダンジョン攻略に行くよう仕向けろと説明されました」
「五日が過ぎた場合は?」
「黒い鬼によって、奴隷も主も奴隷商館の商品にされるそうです」
あの時、トゥスカ達のいた扉の反対側には……奴隷に墮ちた同郷の人間がいた!?
「あのNPCという存在を、ご主人様はけれていましたよね? なぜ、あんな死んでも死なず、眠ることも食べることもない奴らを當たり前のようにけれているのですか?」
「いや、実際に目の辺りにすると俺も不気味だったんだけれど……そういうかなと」
ゲームのモブキャラだと思えば良いとか言っても、伝わらないよな。
「ダンジョンは知ってるんだよな?」
「學校の授業で、ダンジョンでモンスターと何度か戦わされました。こことは違う場所なのは間違いありませんが」
ダンジョンは複數あるのか。
「あれ? でもLv1なんだよな?」
「一度は4まで上げました。連れて來られたときに、1に戻されたようです」
わざわざ下げなくて良いのに。
「ご主人様のスキルや裝備、チョイスプレートで確認してもよろしいでしょうか?」
「良いよ。なら、俺もトゥスカのスキルを確認しようかな」
パーティーを組むと相手の裝備やスキルを見られるんだ……知らなかった。
スキル ●生活魔法 ●瞬足 ●索敵 ●剣
●斧 ●遠目 ●転剣 ●料理
「……スキル多いですね、トゥスカさん」
良いとこ四つだと思ってたよ。
「同世代では多い方でしたね。でもご主人様と數は同じですし……質で言えばご主人様の方が上です。“超頑強”とかなんですか? 聞いたことありませんよ」
「そうなんだ」
苦労して手にれたからなー。
「そうだ、スキルって修得上限があるのか?」
「基本的には、全部で十個までです」
「な!?」
第一ステージクリア時點で八つもあるのに!?
「Lvが上がるとスキル上限は増えますよ。的には分かりませんが」
「良かったー」
でも、”二刀流のスキルカード”でスキルが二つ手にってしまった場合、“連攜裝備”は修得出來なくなるわけだ。
どっちを優先するべきかな?
二刀流を生かせる機會って、あんまりなさそうだけれど。
「……ご主人様、Lv8なんですか?」
「へ? ああ、そうだけれど?」
なんか、トゥスカが固まってる。
「私の周りの大人に、8なんて一人も居ませんでした」
「そ、そうなんですか」
凄いって言いたいのかな?
「……ご主人様がその気なら、私を簡単にねじ伏せられたはずです」
「そういうことか」
そんな事、まるで考えてなかった。
信用を得るために、わざと抵抗しなかったけれど。
「私は、ご主人様を尊敬します」
トゥスカが床に膝を付いて、深々と頭を下げた。
Lv8だからって、態度変わりすぎじゃないですか?
●●●
「いやー、あんたのおかげで助かったよ!」
ボス部屋前でパーティーを組んだ槍の男が、胡散臭い笑みを向けてきた。
「そう……」
ようやく、第一ステージクリアか。
魔神・四本腕、わざわざパーティーを組む必要は無かったな。
「有効武が斧じゃなくて槍だったなら、俺一人でも行けたんだろうけれどなー」
肩で槍の柄をトントンする、嫌な空気の男。
「そう」
パーティーを解除するためにチョイスプレートを開いた瞬間――男が仕掛けてきた。
「……なに?」
槍の一撃を、左手の”雷の甲手”でけ止める。
「その甲手がしかったんだけれど、やっぱダメか」
「黒焦げになりたいの?」
甲手から雷を迸らせる。
「冗談だよ、冗談。マジになんなって」
違う。コイツは本気だった。
「まあ、本命の獲はあんたじゃねえ。今回は見逃してやるよ、人の外人さん」
男は腳から風を噴出し、あっという間に階段を下っていった。
「私は……日本生まれのハーフだ」
最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】
◆マガポケにて、コミカライズが始まりました! ◆Kラノベブックスにて書籍版発売中! 妹のため、冒険者としてお金を稼がなくてはいけない少年――アンリ。 しかし、〈回避〉というハズレスキルしか持っていないのと貧弱すぎるステータスのせいで、冒険者たちに無能と罵られていた。 それでもパーティーに入れてもらうが、ついにはクビを宣告されてしまう。 そんなアンリは絶望の中、ソロでダンジョンに潛る。 そして偶然にも気がついてしまう。 特定の條件下で〈回避〉を使うと、壁をすり抜けることに。 ダンジョンの壁をすり抜ければ、ボスモンスターを倒さずとも報酬を手に入れられる。 しかも、一度しか手に入らないはずの初回クリア報酬を無限に回収できる――! 壁抜けを利用して、アンリは急速に成長することに! 一方、アンリを無能と虐めてきた連中は巡り巡って最悪の事態に陥る。 ◆日間総合ランキング1位 ◆週間総合ランキング1位 ◆書籍化&コミカライズ化決定しました! ありがとうございます!
8 188テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記
2021.05.17より、しばらく月・水・金の週三回更新となります。ごめんなさい。 基本一人プレイ用のVR型RPGを始めることになった女の子のお話です。 相変わらずストーリー重視ではありますが、よりゲームらしい部分も表現できればと考えております。 他作品に出演しているキャラと同じ名前のキャラクターが登場しますが、作品自體は獨立していますのでお気軽にお楽しみください。 モチベーションアップのためにも感想や評価などを頂けると嬉しいです。
8 185家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら
◇SQEXノベルさまより書籍全3巻発売中!3巻は完全書き下ろしで、WEB版の続きになります。幸せいっぱい、糖分過多のハッピーエンドです。 ◇ガンガンONLINEさまにてコミカライズ連載中! コミックス2巻が発売中です。 ◇ 書籍ではWEB版のラストを変更しています。 伯爵家に引き取られたジゼルは、義母や妹に虐げられながらも、持ち前のポジティブさと亡き母に貰った『やさしい大魔法使い』という絵本を支えに暮らしていた。 けれどある日、自身が妹の身代わりとして変態侯爵に嫁がされることを知り、18歳の誕生日までに逃げ出す計畫を立て始める。 そんな中、ジゼルは奴隷市場でムキムキの青年を買うつもりが、ついうっかり、歳下の美少年を買ってしまう。エルヴィスと名乗った少年は、ジゼルをクソガキと呼び、その上態度も口もとんでもなく悪い。 ──実は彼こそ、最低最悪の性格のせいで「人生をやり直してこい」と魔法を封印され子供の姿にされた後、神殿から放り出された『大魔法使い』だった。 魔法によって口止めされ、自身の正體を明かせないエルヴィス。そんな彼に対しジゼルは、あまりにも辛い境遇のせいでひねくれてしまったのだと思い、逃亡計畫の傍らひたすら愛情を注ぎ、更生させようとする。 (あれ、エル、なんだか急に身長伸びてない?魔法が少し使えるようになったって?ていうか距離、近すぎるのでは……?) 世話を焼き続けるうちに、エルヴィスに少しずつ不思議な変化が現れ始める。彼に掛けられた魔法が、人を愛することで解けることを、二人が知るのはまだ先で。 家を出たい心優しい少女と、元の姿に戻りたい優しさの欠片もない魔法使いが、幸せになるまでのお話です。
8 181【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。
近い未來……もしかしたらここではないかもしれない現代。 東京に住む新居 燈(あらい あかり)は、少し裕福な家庭のお嬢様として都內の高校へ通うスイーツが大好きな一七歳の女子高生。 優れた容姿と超高校生級のスタイルの良さで、學園の女神、青葉根の最高神、究極(アルティメット)乳神様とまで呼ばれている。 高校でも人気の彼女には……とてもじゃないけど同級生には言えない秘密が存在している。 それは、前世の……それも異世界で最強と呼ばれた剣聖(ソードマスター)、ノエル・ノーランド(♂)の記憶。 どうして異世界で生きていた俺が現代日本へと、しかも女子高生として転生したのか? そんな前世の記憶と、現世の女子高生として悩んでいるが……。 この世界は異世界からの侵略者……降魔(デーモン)に悩まされていて……放っておけば降魔(デーモン)に滅ぼされてしまうかもしれない? 燈は前世から引き継いだ他を圧倒する身體能力と、それを生かした異世界最強の剣術ミカガミ流を駆使して降魔(デーモン)に立ち向かう。 現代日本に蘇った異世界最強の剣聖(ソードマスター)新居 燈の戦いが……今始まる! 二〇二二年九月一四日完結いたしました。 第2回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過
8 85こんにちは!この世界の勇者を倒しに來ました!〜『世界』を旅する転生旅行記〜
ある日、トラックに轢かれたワタルは、どうみても悪魔な自稱女神に異世界の勇者を倒す使命を任されました!? コメントや、いいね。もしくはお気に入り登録していただけると、制作の勵みになり、作者が小躍りします。ぜひよろしくお願いします!
8 189月輝く夜に、あなたと
いつも通りの夜、突如かかってきた彼氏からの電話。 電話相手は、謎の若い男。 彼氏が刺されている、とのこと。 そして、その男からの衝撃的発言。 禁斷のミステリー戀愛小説
8 142