《ダンジョン・ザ・チョイス》23.信奉者リョウ
「インフェルノ!」
紫の炎が、ゴブリンをまとめて葬り去る。
戦力差はおよそ十倍。あくまで単純な數での計算。
最初に現れたのがゴブリンで助かった。
鉄系統よりも上の武が手にるようだし、悪くない始まりだ。
「ベクトルコントロール!」
トゥスカが”ビッグブーメラン”の軌道を変え、ゴブリン達のを切り刻んでいく。
「ギルマス! そろそろ撤退した方が!」
「から先に後退させろ! それと、撤退後にゴブリンから手にれた武を皆に配れ!」
作戦の第一段階は、魔法使いの火力で數を減らすだけ減らすこと。
「ご主人様、マズいです! 氷が溶かされています!」
「チッ! すぐに全員後退し、作戦を第二段階に移せ!」
村の家屋と家屋の間に氷の壁を作らせ、わざと広い道だけ通れるようにしていた。
「ゴブリンが武から火を放ち、氷を溶かしています」
「壊されるのは予想していたけれど、ゴブリンに突破されるなんて」
トゥスカと並走し、弓持ちが屋上に陣取っている防衛ラインまで後退する。
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「赤い武を持つゴブリンから狙え!」
「了解です、ギルマス!」
弓を持った獣人が、俺の言葉に応じた。
「……ギルマスって」
誰かが俺をギルドマスターとか呼び出して、いつの間にか皆ギルマスって呼ぶようになりやがったんだ。
「東側、退避完了しました!」
第二防衛ラインは東西南北に一カ所ずつ通れる道を殘しておいた。
更に氷の壁で、第二防衛ラインより外を四つの壁で區切り、區別させている。
この方が、自分達がどこを擔當すれば良いのか分かりやすいだろう。
目標が明確な方が指揮も高くなる。
例外として、第二防衛ラインの外周は區切っていない。
俺が擔當するのは東側。眼鏡が西側。魔達三人が北側。リョウが南側で、どこよりも戦力を多く配置してある。
ちなみに、東側は俺とトゥスカが居るため一番人數がなく、ひそかに広めに區切ってあった。
「ギルマス! 危ないですよ!」
東側の出り口に一人で出る。
「ご主人様!」
「俺が數を減らすから、ここを抜けていったモンスターは戦士職で対象しろ! 弓持ちは氷を溶かそうとするゴブリンにのみ対処し、矢を溫存! 魔法使いはMPが半分以下にならないように援護! 氷系統が使える魔法使いは、氷の壁を補強しろ!」
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魔神・四本腕からの勝利報酬で氷炎魔法を選んだ者が多いらしいから、魔法使い職は氷の壁を生み出せる者が多い。
戦士職は”氷炎魔法のスキルカード”を使えないらしいから、売ってしまった奴が多いらしいが。
鎧や剣を選んだ人間はないらしい。
「「「「はい、ギルマス!」」」」
獣人とプレーヤー達の息のあった返事が耳に屆く。
リーダーとかガラじゃない。
黒鬼との戦いで疲れてもいるし……このクエスト、さっさと終わってくんないかな。
●●●
「インフェルノカノン!!」
ゴブリン十以上が消し炭になり、となった。
「巨の姐さん! そろそろ休んでください! ギルマスもMPを半分以下にするなって言っていたでしょう!」
「……分かったわよ! でも、巨って呼ぶな!」
まるで、私の価値がそこにしか無いみたいじゃないのよ!
「すんません、あまりに見事なんで」
私が買った獣人の男が、大して反省してなさそうに謝ってきた。
「姐さんのはただデカいだけじゃないんです! その形と揺れ合は、どんな男をも魅了出來るだけのポテンシャルをめているんです!」
私が買った、もう一人の獣人男がわけの分からない論理を披する。
その論理だと、コセが私をぞんざいに扱うというか、無視しようとする理由に説明が付かないじゃない!
「――燃やすわよ」
「「す、すいません!」」
西側の出り口の側にった時だった。
『五百のっ、ゴブリンの投がっ、終わりましたっ。これよりっ、第二陣のっ、グレイウルフをっ、投しまっす!』
五百のゴブリン。もう半數を相手にしているってこと?
「殘り五百! 勝てそうですね、姐さん!」
「お願いだから、フラグを立てないで!」
「へ、フラグ?」
グレイウルフはすばしっこいから、魔法をぶつけづらいのに!
第一ステージは狹い窟だったから、フレイムバレットで充分に対処出來たけれど。
「五百となると、こっちに流れてきたゴブリンはないようですね」
「よう、ゴブリンの半數は東側を攻めているらしい」
別の獣人の男が報告に來た。
ジュリーの命令でいている斥候か。
……結局、ジュリーってなんなの? 黒鬼との戦いで加勢してくれたけれど、なんでコセと親しげだったの!?
「グレイウルフが見えてきました!」
「數は百越え! それに、グレイウルフにしちゃきが速すぎる!」
「なにかのアイテムを裝備している可能は?」
全てのゴブリンが、雑系よりも上の裝備をしていた。
中には、私と同じ”炎のステッキ”を持っている個まで。
なら、グレイウルフにもなんらかの裝備を施している可能が出て來る。
「腳になにか、りが見える!」
「姐さん! 系のモンスターの裝備は大抵指です!」
「つまり、能力を上げる指を、全てのグレイウルフが裝備しているってわけね」
ゴブリンが皆裝備していたのだから、グレイウルフも全ての個が裝備していると思った方が良い。
てことは、より面倒になっているってことよね。ハァー。
「……あの黒鬼から手にれた力、使ってみるか」
私が選んだのは、“煉獄魔法のスキルカード”と“魔爪使い”のサブ職業。
「來るぞ!」
「インフェルノカノン!」
インフェルノよりも遠方に飛ばせるインフェルノカノンを、グレイウルフ達に向かって放つ。
十葬れたかどうかか。
「グルアアアアア!!」
モンスターは怖いけれど、人間よりは遙にマシよ!
それに、集まった冒険者の中にあの槍の男は居なかった。
きっと、魔神・四本腕にでもやられたに違いないわ!
「もう、私が恐れるはなにもない! ダークネイル!」
グレイウルフがり口を通ろうとした瞬間、魔爪を”炎のステッキ”で発。
グレイウルフが上下に分かれ、を撒き散らしながらになる。
「よし、使える!」
予想以上の切れ味!
消費するのはTPだし、魔爪でMP回復の時間を稼げる!
「うわああああ」
「なに!?」
防衛ラインの側から、悲鳴が聞こえてきた!
「グレイウルフが數、壁を飛び越えています!」
「“飛び跳ねの指”を裝備した個が、紛れ込んでいるようです!」
「そっちは任せるわ!」
グレイウルフをステッキで毆りながら、指示を出す。
Lv12になったからか、腕力も上がっている! これなら行ける!
――今私がここをいたら、グレイウルフが防衛ラインに流れ込んでしまう。
コイツらは、この場所に出り口を設けているからこそここに集まってきているはず。
氷でここ、西側の出り口を塞げば他の出り口に向かってしまうだろうし、集まる場所を用意しておけば効率的に排除出來るというもの!
私がここで持ちこたえれば、それだけ全の勝利に繋がる!
「後ろは任せてください、姐さん!」
「俺、生き殘れたら姐さんに告白するんだ」
「だから、フラグ立てんな! ダークネイル!!」
つか、告白なんてけねーし!
獣人の男なんて嫌い!!
●●●
「リョウさん、これ楽勝っすね」
數日前に聲を掛けてきた男が、ニヤニヤしながら近付いてくる。
「どうしてアンタは戦わない?」
「リョウさんこそ」
「僕はさっきまで戦っていた」
TPが三分の一まで減ってしまったから、他の人に任せて後退したにすぎない。
この男は、ギルマスの言葉を無視して最初から奴隷だけに戦わせている。それも、奴隷達の中でもかった獣人を。
その子達は、他の獣人達がカバーしているからなんとか生き殘っているという狀況だ。
「別に良いじゃないっすか。いやー、にしてもギルドマスターって俺が呼んだら、皆ギルマスとか呼び出しちゃって……なんか面白いわー」
コイツが原因か。
あの人を、ギルマスと呼ぶのは嫌いじゃないが。
「ところでさー、このクエストが終わったら、本當に奴隷を解放しちゃうの? 勿なくない? せっかく金を払って買ったのに」
「アンタ、ギルマスに逆らうつもりか? そもそも、アンタの奴隷はアンタの金で買ったものじゃないだろう」
「金があれば、とっとと買って々やってたんだよ、俺は。酒場で飯食ったりスキルカード買ったりしたらあっという間に金が無くなってさ~。奴隷は安いってのが相場じゃん? 最低10000Gとか高過ぎだよ」
「人に値段を付けること自……僕は」
「オイオイ、これはゲームなんだぜ? なにNPCに移してんだよ」
「……は?」
まさかこの男、獣人までNPCだと思っているのか?
「NPCとはいえ、アレはちゃんとあるらしいぜ。昨日買った奴が確認したらしい」
気分が悪くなってくる。
「お前!」
「おっと、貞には刺激が強かったか? まあ、俺が言いたいのは――ギルマスを殺しちまわね、ってことさ」
目の前の男が、人間に見えなくなっていく。
「アンタもさ、ずいぶん綺麗な子を買ったみたいじゃん。明日で良いからさ、俺に貸してくんね? 俺もあの二人を貸すからさ、グブッ!?」
気付いたら、男の顔を毆っていた。
「て、テメー!! なにすんだよ!」
男が武を構えた。
周りが殺気立ってしまう。
學校の先生が、先に手を出す奴が悪いとか、暴力を振るう奴は最低とか言うけれど、とても安っぽい言葉に聞こえて仕方なかった。
それは、ルールを無視する人間には黙って毆られろと言っているのと変わらないじゃないか!
――僕はある夜、ギルマス達が六人の男を殺すのを見ていた。
武屋から出ていったお二人を、下世話な言葉をわしながら六人の男達が追い掛けていったのに気付き、僕はこっそり六人の後を就けていたんだ。
あの時、ギルマスが放った言葉の一つ一つに、僕の心は震えた!!
「まるで、自分は狂っていないとでも言いたげだな」
「道理をわきまえないお前らの方が、ずっと異常だよ」
「だから人間は、みんな異常者なのさ」
「お前のような人間は、必ず繰り返す」
これまで大人達が無責任に振り撒いてきた良識という名の矛盾を越える、まさしく真理にれるお言葉!
「まさかNPCに、コイツら獣人に移してんのかよ、テメー!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ばっかじゃじゃねーの! コイツらは人形だぞ! 人形を人間扱いかよ! お前、マジでキモいわ! さっすが貞だよ!」
移と貞になんの関係があるのか、さっぱり分からない。
「テメー、俺達が人形だと! ふざけるな!!」
「バカにするんじゃねぇぞ!!」
「やめろ!!」
殺気だった獣人達を宥める。
「でもリョウさん、コイツは!!」
この男を今殺せば、コイツの奴隷であるの子達まで死んでしまう。
かといって、コイツを放置すればここの守りが崩壊する。
それだけ、僕とコイツの行がこの場に不和を広げてしまった。
落とし前は、自分で著ける。
「俺を毆った分のツケを払わせてやる!」
男が斧を振りかぶって駆けてくる。
「なんだそれは、遊んでいるのか?」
信じられないくらい隙だらけだった。
剣を抜くのを止め、“瞬足”で前に出て、顎を毆る。
「あ……うそ……だ…………」
呆気なく沈む男。
「弱いくせに、ギルマスの命を狙うとは。馬鹿は本當にの程というものを知らない……マーリちゃん、キューリちゃん、コイツを拘束して神像の前まで運んでくれ」
「「は、はい」」
男の奴隷である二人のが、返事をした時だった。
『グレイウルフ三百のっ、投が終わりましたっ! これよりっ、リザードマンとゴーレムをっ、投しまっす!』
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】
※書籍版全五巻発売中(完結しました) シリーズ累計15萬部ありがとうございます! ※コミカライズの原作はMノベルス様から発売されている書籍版となっております。WEB版とは展開が違いますのでお間違えないように。 ※コミカライズ、マンガがうがう様、がうがうモンスター様、ニコニコ靜畫で配信開始いたしました。 ※コミカライズ第3巻モンスターコミックス様より発売中です。 ※本編・外伝完結しました。 ※WEB版と書籍版はけっこう內容が違いますのでよろしくお願いします。 同じ年で一緒に育って、一緒に冒険者になった、戀人で幼馴染であるアルフィーネからのパワハラがつらい。 絶世の美女であり、剣聖の稱號を持つ彼女は剣の女神と言われるほどの有名人であり、その功績が認められ王國から騎士として認められ貴族になったできる女であった。 一方、俺はそのできる女アルフィーネの付屬物として扱われ、彼女から浴びせられる罵詈雑言、パワハラ発言の數々で冒険者として、男として、人としての尊厳を失い、戀人とは名ばかりの世話係の地位に甘んじて日々を過ごしていた。 けれど、そんな日々も変化が訪れる。 王國の騎士として忙しくなったアルフィーネが冒険に出られなくなることが多くなり、俺は一人で依頼を受けることが増え、失っていた尊厳を取り戻していったのだ。 それでやっと自分の置かれている狀況が異常であると自覚できた。 そして、俺は自分を取り戻すため、パワハラを繰り返す彼女を捨てる決意をした。 それまでにもらった裝備一式のほか、冒険者になった時にお互いに贈った剣を彼女に突き返すと別れを告げ、足早にその場を立ち去った 俺の人生これからは辺境で名も容姿も変え自由気ままに生きよう。 そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の人々から賞賛を浴びて、辺境一の大冒険者になっていた。 しかも、辺境伯の令嬢で冒険者をしていた女の人からの求婚もされる始末。 ※カクヨム様、ハーメルン様にも転載してます。 ※舊題 剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で出直すことにした。
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8 192彼女が俺を好きすぎてヤバい
魔術を學ぶ學校に通う俺、月城翼には彼女がいる。彼女こと瀬野遙は、なんというか、その。ちょっと、いやかなりヤバい奴だった。ヤンデレとかメンヘラとか、そういうのではなくだな……。 (「小説家になろう」に投稿しているものと同じ內容です)
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