《ダンジョン・ザ・チョイス》27.パラサイトコア

『殘りはっ、ガルガンチュア選手っ、一のみでっす! 皆さんっ、頑張ってくださいっ!』

いつかのガキの聲に、イライラが加速する!

「ハイパワーブレイク!!」

攻撃しても、攻撃しても攻撃しても攻撃しても倒せないガルガンチュア。

効率的にダメージを與えているはずなのに、巖は派手に吹き飛んで眼下に落下し続けているにも関わらず、愚直に神像を目指して突き進んでいく!

裂腳!!」

トゥスカによる、急降下からの強烈な一撃が炸裂する。

もう何度目の攻撃だろうか。

『ガアアアアアアアアアーーー!!』

巖の鎧がほとんど剝がされたガルガンチュアが、上半だけのを急回転させてきた!?

「キャッ!!」

「トゥスカ!!」

トゥスカがガルガンチュアに著地しようとした所で回転されたため、バランスを崩してしまう!

「瞬足!」

無理矢理にでも高く跳んだようで、落下しきる前に空中で抱き止めることが出來た。

「やっぱり來てくれた」

高く跳ぶことで、俺が助ける余裕を作ったらしい。

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「まったく」

信頼してくれるのが、重くも嬉しい!

トゥスカを抱えたまま、著地する。

「ぐっ!」

思うように衝撃を逃がせず、腳が痺れてしまった!

「ヒール」

トゥスカがすかさず回復魔法を掛けてくれる。

トゥスカは魔法による攻撃を使用していないため、MPが有り余っていた。

だからトゥスカが傷を負っていても、俺は彼に回復魔法を使わない。

「また、神像に向かって進み始めましたね」

「今は助かる」

俺とトゥスカのことは無視するらしい。

「飛行高度はあまり高くないな」

頭上まで十メートルあるか無いか。

纏っていた巖が無くなり、大分小さくなったとはいえ、中に隠れていた粘土の塊のような上半は巨大だ。

――倒せるのか、アレを?

ハッキリ言って、このクエストを失敗しても俺とトゥスカは問題ない。

ペナルティーのLvマイナス5は痛いが、Lv10もあればこの辺では充分に戦える。

むしろ、所持金が0にされる方が厄介ではある。

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今日ダンジョンに潛るつもりだったため、食糧を買い込んでいるから俺とトゥスカはすぐに第二ステージの奧に向かう事が出來る。

だが、昨日、一昨日にこの村に辿り著いた者達がこのペナルティーをけて生き殘れる可能は低い。

全ての人間のLvが10だったとして、Lv5で金も無い狀態では、この先に進むのは難しいだろう。

モンスターを積極的に倒して手にれたアイテムの売値次第では、なんとかなるかもしれないが、そうでない者はLvが低く、ろくにアイテムも無い狀況に置かれる。

あの黒い門。奴隷が居ないと進めず、進めば村まで戻ってくることが出來なくなる可能が高い場所。

その場所までに出て來るモンスターから貰えるGゴールドはないし、地道に稼いでも奴隷を買えるようになるのは隨分先。

買った奴隷の裝備や食糧などを揃える事を考えると、どれ程の金が必要になるのか。

買わせた奴隷を、クエスト終了後に解放するという約束を反故にすれば話は別だが。

約束を守った場合、今戦っている三分の一から二の人間はここで事実上の落となるだろう。

それも、最終的には人の手によって命を奪われる可能が高い。

貧困は犯罪を助長させる。

良くも悪くも、チョイスプレートの中は殺されない限り奪われない。

裝備品だって、盜が無ければ盜むのは不可能。

脅して奪う方法もあるだろうが、魔法など様々な能力が存在するのだ。悠長に差し出されるのを待つのは自殺行為。

殺さなければ安全に奪えず、殺せば金、経験値、裝備アイテム、スキル、それら全てが手にる。

このクエストに失敗しても死ぬわけじゃ無い。

余裕のある者に程、そう思わせる余地を殘しておく醜悪なルール。

俺は、トゥスカさえ無事ならそれで良い。

――でも、世の中って奴は、多くの人間の幸福を考えた方が上手くいく仕組みが隠れていやがる。

なにより俺は、この醜悪なルールが気にらない!

「ルールがダンジョンを出しようとするだけだってんなら……俺がどうしようと勝手だよな」

グレートソードを握る手に、力を込める!

「ご主人様、あれを!」

神像が置かれている付近から、無數の魔法がガルガンチュアに向かって放たれていく!

「皆、抗っているようですね」

「休んでいる場合じゃないな」

ゆっくり休むのは、クエストが終わってからで良い!

「行こう……トゥスカ」

「ご主人様と一緒なら、どこまでも」

傷が癒えた俺達は、ガルガンチュアを目指して駆ける。

●●●

「もうしだ! 諦めるな!」

強い意志を込め、激勵する。

ガルガンチュアの耐久力は高いけれど、既に巖の鎧は剝がされている。

巖の鎧は武系で破壊し、部の本は魔法で攻めるのが、対ガルガンチュアのセオリー。

ガルガンチュアが第十ステージの魔神よりもいとはいえ、これだけの人數で魔法を撃ち込めばいずれは倒せる!

むしろコセとトゥスカ、たった二人で巖の鎧を全て剝がしてしまうなんて。

「ジュリー様、私も!」

「タマは咎槍を溫存しておきなさい。まだ……なにが起きるか分からないから」

全てのモンスターがなんらかのアイテムを裝備していた。

……ガルガンチュアだけが、例外とは思えない。

「アイスフレイムバレット!」

「ウィンドバレット!」

「サンダーバレット!」

獣人の二、三十人は、下位の魔法のスキルカードをコセからけ取っている。

戦士職はスキルカードで下位の魔法を修得出來るけれど、上位の魔法はサブ職業を裝著しないと使用できない。

サブ職業までは渡していないようだったけれど、この序盤で魔法のスキルカードをあれだけばら撒くなんて。

おかげで、ガルガンチュアを倒すことに希を持てる。

『ガオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーー…………』

「やったの?」

ガルガンチュアの黒いが崩れていく。

「フラグを立てるんじゃなーい!!」

眼鏡巨が、獣人の男に抱えられた狀態で現れるなり「やったの?」と言ったアヤに文句を言った。

「……フラグを立てるなっていう言葉が、もうフラグだよね」

そもそも、フラグって最初から用意されているじゃん。

言おうが言うまいが関係ないのに、まるであたかもそれを言ったから事が起きた、事態が悪化したとでも言いたげなその考え方がそもそもウザいって言うか、実際結果がよく分からないとき皆「やったのか?」とか「上手くいったのか」とか言うじゃん?

作品の場合そういう傾向があるからと言って、リアルにその論理持ち込んでんじゃねぇよ、クソが!!

そんなケチつけてくんりゅらりょう~を、テメエでストーリー作ってみろってんだよ!

どうせ、どこかで見たようなパクリの集合(きったねー継ぎ接ぎだらけの作品)みたいなもんしか作れねーくせによ~!!

ロボット=○ンダムくらいのチンケな想像力しかねーくせによーーー!!

「ジュリー様、アレ!」

ハッ!! タマの言葉に、刺激されたトラウマから出出來た!

「何あれ?」

ガルガンチュアが、モザイクが掛かったように歪み、が立ちのぼる。

「やった、勝ったぞ!」

誰かがんだ。

……違う。

消滅したときのは青白い。今ガルガンチュアを包んでいるのは……赤黒い

「あんなの、私は知ら…………」

いや、どっかで……――――まさか。

「無機のガルガンチュアには寄・生・出・來・な・い・は・ず・だ・っ・た・の・に・」

『ウアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああ』

音のような雄びが、人の悲鳴に変わっていく!!

赤黒いが消えると……そこには赤黒いマネキン人形が浮かんでいた。

ガルガンチュアに裝備されていたのはアイテムではなく、あの悍おぞましいモンスターか!

「寄生モンスター……パラサイトコア」

宿主に驚異的な再生能力を與え、宿主が死にかけると進化するという設定のモンスター。

これじゃあ、千じゃなくて千一じゃないか!

●●●

『ここは……どこ?』

青い空と草原が、どこまでも広がっている。

『私……は……』

私は、なんでここに居るの?

《貴方が、ゲームオーバーになってしまわれたからですよ》

この聲、私の前に現れたピエロみたいな奴の……。

『ゲームオーバーってなに? なんの事?』

《記憶が曖昧なようですね》

聲が直接、頭に響いている!?

《忘れましたか? 槍の男に犯されて、殺された事を》

槍の……男……。

『ああ……ああああぁぁぁぁぁぁああああああああああ!! いやぁあああああああああああああああああ!!!』

《まあ、同級生に売春を強要、斡旋していたようなには似合いの末路ですかね。十六歳で経験人數が四十人越えとは。気付いているか分かりませんが、貴方……病を四つも抱えているそうで。クックックックック!》

『うるさーーーーーーーーーーーーい!!!』

壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す!!

私の気にらないは全部、私好みに穢してやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!

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