《『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』》イレギュラーなレッドトロール

レッドトロールは不愉快だった。

今日は、獲を――――小さな弱き者を2匹見つけた。

彼らは味い。そして、から力が湧き出してくる。

を食べれば食べるほど、強くなる。それは自分レッドトロールの知る絶対真理。

最初のアイツを食べてから……今まで、數え切れないほど食べてきた。

だから、自分は強い。だから、沢山食べたい。

しかし、今日の獲は素早く取り逃がしてしまった。

後悔

苛立ち

怒り

だが、謝もあった。

新たな獲が――――小さな弱き者が飛び出してきたのだ。

「うおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

レッドトロールは咆哮をあげる。

余談ではあるが、數十年後、とある大學アカデミーによって驚くべき研究発表がされた。

彼らレッドトロールが戦闘前に行う咆哮は、敵に対する威嚇ではない。

人の言葉に訳すと「いただきます」が適切だと……

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

ベルトは武を抜く。

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両刃短剣バゼラード

冒険者復帰が決まり、購した新品だ。

元々、ベルトは貴重な武を使用しない。

例外と言えるのは、最後に戦友に譲った短剣のみ。

代えの利く大量生産の武を好み、平気で使い捨てていた。

今回、この両刃短剣を選んだのは、魔力を刃に通しても壊れない頑丈さ――――必殺の≪魂喰いソウルイーター≫に耐え切れる武だったからだ。

しかし、いくら頑丈な武を選んだとは言え、レッドトロールの一撃をけるわけには行かない。

その巨からトロールのきは鈍いと思われている。

それは間違いである。

が筋の塊であるレッドトロールが放つ一撃は高速であり、破壊力は極大。

頭上よりも、遙かな高さから振り落とされた自然武ナチュアルウェポン。

それをベルトは後方へ飛び避ける。

だが、レッドトロールは獲が背後へ逃げると読み、前に大きく踏み出していた。

(フェイント? いや、われたか……このトロール、見た目よりも戦闘思考能力が高い)

巨大な手が自を摑もうとびてくる。

しかし――――

≪暗殺遂行アサシネーション≫

レッドトロールの腕は空振り、ベルトは姿を消した。

≪暗殺遂行アサシネーション≫はを影に変える能力だ。

摑まれる直前、二次元化したベルトはトロールの腕にり付き、そのままトロールのに沿って移

トロールの背後に回り込むと、姿を現し両刃短剣を振るう。

狙いは足回り。特に膝裏を執拗に狙い、何度も傷つけた。

それでも、レッドトロールは倒れない。倒れる事を矜持が拒んだのだろうか?

背後にいるベルトに向けて腕を振るう。

回避。

ベルトは、その場で軽く飛び上がり攻撃を回避。

回避と同時に、その腕に短剣を突き立て追加のダメージを與える。

まるで花びらのように鮮が舞う。

その瞬間、ベルトは奇妙な違和を抱く。

(奇妙だ。レッドトロールの戦意が衰えない)

シンプルな痛み。自よりの強者の存在。

力が全てのトロール系は力量差がわかると逃げ出そうとする。

それを防止するため、ベルトは初手から足を狙ったのだが……レッドトロールは逃げ出さない。

それどころか戦意が増している。

(様子見の安全策が裏目に出たか? なら今からでも――――)

ベルトは戦闘スタイルを変える。

接近攻撃の≪二重斷首刀ギロチンエックス≫

遠距離攻撃の≪魂喰いソウルイーター≫

≪暗殺遂行アサシネーション≫から≪致命的な一撃クリティカルストライク≫のコンボ攻撃

どれもレッドトロールなら一撃で殺せる。

狙いを一撃必殺に切り替えたのだ。

レッドトロールは、それをじ取ったのか?

素早く前に出る。

間合いがまり、≪魂喰いソウルイーター≫の選択肢が消えた。

≪二重斷首刀ギロチンエックス≫を放とうと飛翔。

だが――――

ベルトは衝撃をける。

まるで全がバラバラになりそうなほどの衝撃。

(何をされた?)

何らかの攻撃をけ、吹き飛ばされたベルトは信じられないものを見た。

それは構えだ。

レッドトロールが構えを取っている!?

ワキをし広げ、両手を頭より高く上げている。

後ろ足に重を乗せ、前足はリズムを取るように上下させている。

それは闘技場で、戦士が使う徒手空拳での戦闘

ベルトは、自けた攻撃の正に気づいた。

それは下段回し蹴りローキックだ。

「コイツ、ただのモンスターじゃない……魔使いに捕獲テイムされ鍛えられたのか?」

そう言った事故は知っている。

使いが鍛えたモンスターが何らかの原因で走。野生化して人々を襲う事例。

例外なく、魔使いに鍛えられたモンスターは強い。

討伐に向ったAランク冒険者たちが返り討ちにあったという話はいくらでもある。

「このトロール……ヤバイな。このままだと負けちまうかもしれない」

レッドトロールの拳撃が素早く飛んでくる。

ベルトが間合いを広げるため、後ろに下がると洗禮された蹴りが放たれる。

もしも、事前に腕と足にダメージを與えてなければ避けれる事は不可能だった。

ベルトはチラリと『呪詛』が刻まれた腕を見る。

あれから毎日、メイルから浄化をけて黒蛇はを薄めている。

「仕方がない。しだけ……しばかり本気を出させて貰うぞ」

ベルトは今まで抑えていた力を60%まで解放する事に決めた。

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