「お兄さん！　大丈夫ですか？」

後方からメイルが飛び出してきた。

し時間がかかったのは、助けを求めていた冒険者から事を聞いていたからだろう。

「ダメだな。し本気を出すぞ」

腕に激しい痛みが走った。

浄化によって弱化しているはずの『呪詛』が足掻く。

ベルトは、それを抑えるように『呪詛』の部分を握り締める。

≪能力上昇≫

≪ステータス上昇≫

≪軽気功≫

≪速攻迅速≫

≪雷神化≫

≪狂気限定解放≫

……etc.etc

自己強化系スキルに自己強化を重ねていく。

その姿にレッドトロールの表に怯えが見えた。

「メイル！　この狀態で『呪詛』に影響がでない時間は？」

「たぶん……3分。可能なら1分以でお願いします」

「そいつは十分すぎる。いくぞ！　レッドトロール！」

しかし、ベルトよりも先にレッドトロールが攻撃を繰り出した。

蹴り。だが、狙いはベルトではない。狙いは――――地面だ。

「砂や石を蹴り上げる目潰し……にしては豪快すぎるな」とベルトは笑う。

大量の砂と石がベルトに直撃。砂煙がベルトの姿を消す。

レッドトロールは、獲ベルトがいるであろう場所に拳を振るう。

確かな手ごたえ。獲を仕留めたと確信する。

勝利を確信したレッドトロールだったが、次の瞬間に異変が起きる。

けない。

その時、トロールがイメージしたのは、自より遙かに巨大な生に腕を摑まれたような覚。

だが、それに事実は相反してた。

砂煙が消える。　拳を摑んでいたのはベルトだった。

「きぇええええええええええええええぃぃぃぃぃぃ！？」

恐怖のび。　恐れを払うようにベルトへ手刀を振り下ろす。

それがベルトに屆くことはなかった。

クルリと回転する視點。　投げられたと理解するのは地面に叩きつけられてから。

慌てて起き上がるも、ベルトの姿はなかった。

「60％も60秒も必要なかったか」

レッドトロールは背後に潛む者の聲を聞く。

人の言葉は理解できないが、それが死神の聲だと言う事は分かった。

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

事実、レッドトロールが最後に聞いたのは、ベルトが攻撃スキルを発した聲であった。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「すごい！　すごいです！　お兄さん！」

メイルが駆け寄ってくる。

「メイル、『呪詛』の影響は？」

「あっ……はい！　大丈夫です。念のために浄化しておきますね」

「そうだな。……頼む」

ベルトは警戒心を強めていた。

もちろん、≪気配知≫のスキルを使っているのだが……

だが、見られているじが――――視線をじる。

もしも、≪気配知≫を無効化して潛む事が出來る相手なら――――危険だ。

相當な実力者でありながら気配を消して、こちらを覗く奴に碌ろくな奴はいない。

「もう知ってるかもしれないが、初心者冒険者がレッドトロールから逃げて森の奧にいる。ソイツを見つけたら、すぐに出するぞ」

メイルにもじるものがあったのか？　「はい」と神妙な面持ちで返事をした。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

その後、ベルトの予に反して、あっさりと初心者冒険者を救助。待っていた父親ともスンナリと合流して町まで戻ってきた。

その足でギルドへ報告に向う。

「やはり、レッドトロール走の事故は起きていないか？」

「えぇギルドが把握している限り、魔使いからモンスターの走や暴走の報告はけていません」

擔當の付嬢からは満足な報は得られなかった。

「そうか……念のため、あの森の調査はした方がいいぞ」

「はい、ギルド長へ進言します。それと……」

付嬢はキョロキョロと誰も聞いていない警戒しながら、口をベルトの耳へ近づけた。

「ギルド長からベルトさまへ特別指令ミッションが出ています。容は――――

勇者パーティの救出です」