《『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』》VS勇者パーティ ③

暗殺者であるベルトは決まった武を使用しない。

使うのは大量生産品。 直ぐに代用が可能なほどありふれた武が好ましい。

しかし、この武だけは別だった。

『サウザウンド・オブ・ダガー』

作ったのは練の職人……ではない。むしろ、真逆だ。

作ったのは職人とは、呼べない人たち。

工房に一列に並べられ、無造作にハンマーを振り下ろす。

毎日決められた時間帯、毎日決められた手順、毎日決められた作。

大量生産のために規則システマチックに作られた二束三文の短剣ダガー。

――――しかし、1000本に1本の確率で數字の奇跡が起きる。

神話の時代から朽ちずに殘った聖剣、魔剣、寶剣……

それらに匹敵する切れ味、耐久、魔力浸度を有するのが、この短剣だ。

再び、それを裝備したベルトの想は――――

「馴染む」と短いものだった。

まるで手の延長のように覚が繋がっていく。

魔力の浸度が自の手よりも高い。

それは、素手ではできない魔力を溜める事が可能という意味だ。

溜め時間は5秒のみ……

メイルの防魔法で威力は減しているとはいえ――――

対するは人類最強の後衛職2人が放った最大魔法。

「もう持ちません!」

メイルがび、魔法を弾いていた壁に亀裂が走る。

壁が完全に砕け散り、全に魔法を浴びるよりも速く――――

ベルトはダガーを振るった。

≪魂喰いソウルイーター≫

暗殺者唯一にして最強の魔法。現化された魔法の刃が全てを切り裂く。

……そのはずではなかったのか?

魔法の刃は2つの魔法とぶつかり、きを止めた。

拮抗狀態。……いや、僅かながらベルトの≪魂食いソウルイーター≫が押し返している。

しかし、それは見る者が見れば風前の燈火。

瞬間最大火力はベルトが上。しかし、それ以外は圧倒的にマシロとシン・シンラが上。

すぐにベルトの魔法は2人の魔法に飲み込まれ、者であるベルトに襲い掛かってくるだろう。

だが、その前に――――

ベルトは歌うかのように詠唱を開始した。

『これより放つは不可視の刃――――』

再び、ベルトが握る短剣に魔力が流れる。

『刃には毒と死を混ぜよう――――』

毒々しい魔力が刃を深紫に染めていく。

『贈るのは不吉と嘆き――――生者は死者へ――――殘るは灰のみ、全ては地へ戻る――――』

膨れ上がったベルトの魔力がサウザウンド・オブ・ダガーに流れ込んでいく。

それは詠唱による魔法強化。さらに十分な魔力の溜め時間。

さらに、ベルトのソレには全てを切り裂くという概念強化が備わっている。

ソレとは、すわなち――――

≪魂喰いソウルイーター≫

短剣を振るうと同時に放たれたのは現化された魔法の刃。

しかし――――

どうあがいても、暗殺者であるベルトの魔法が、本職であるマシロとシン・シンラの魔法には勝てない。

だが――――

その刃は全てを切り裂く。

それは無論、人類最強の魔法使いが放った2つの魔法すらも――――

切り裂いた。

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