《『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』》闘技者の世界観
ベルトは瞳を閉じる。
かつての記憶を呼び覚まし験する。
目にったが視界を赤く染めている。
視界だけではない。 鼻は潰され、耳は鼓が破れ、錆付いた鉄のような味が口に広がっている。
中で痛みのじない場所は皆無。 ほとんどの五が機能を低下させている。
ぽた…… ぽた……
両腕の先端から流れ落ちる。
これで≪毒の付加ポイズン・エンチャント≫は封じられた。
から逆流する毒素を中和するので一杯だ。
だが――――
≪魂喰いソウルイーター≫
魔力を足に込めて放とうとする。
しかし、できない。
蹴りのモーションの最中、足を振りぬくよりも早く、間合いを詰めた闘技者ソイツが腕でベルトの足を抑える。
――――いや、抑えるだけではない。
掌底打ち。
打たれた足がぜたと錯覚するような衝撃。
その直後の浮遊。
どのような力が加わったの理解できない。ベルトのは宙を舞った。
きりもみ狀態。前後左右、上下がわからない。
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ベルトは暗殺者になって初めて標的を見失った。
しかし、ベルトの初験はこれで終わらない。
五は低下しても気配知能力は殘っている。
(上だ!)
闘技者ソイツは吹き飛ばされている自分よりも高く飛び上がっている。
この日、ベルトは生まれて初めて神に祈った。
(どうか……この一撃だけは……決まれぇぇぇ!?)
≪致命的な一撃クリティカルストライク≫
神に祈った一撃は――――
奇跡を起こすわけもなく――――
カウンター
腹部へ強打をけ、打撃によって加速したは地面に衝突した。
これがベルト敗北の記録。
およそ5年前の記憶だ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ふぅ……」とベルトは短いため息をついた。
場所は先ほどと同じ冒険者ギルドの仮テント。
メイル、マリア、ソルの3人は無言でベルトの言葉を待っている。
「闘技者って言うのは、暗殺者と世界観が違うんだ」
「……世界観?」とメイルは不思議そうな表をみせた。
メイルだけではなく、マリアとソルも同じ表だ。
「俺たち暗殺者はどこでも良いんだ」
「どこでも……ですか?」とソル。
「あぁ、俺が闘技者に勝たないといけない狀態になったら不意打ちを狙う。試合が始まる前だ。……控え室。あるいは會場りする瞬間を狙う」
「それは……」
「反則というレベルの話ではない。無論、犯罪になる。しかし、それが暗殺者だ。闇討ちでもなんでもして、相手を殺す方法に特化した存在」
「……」と3人はそれぞれ沈黙した。
ベルトは話を続ける。
「それに対して闘技者は正々堂々と戦う。事前に決められた場所、事前に決められた時間、事前に決められた相手、事前に決められた取り決めルール……それだけで完結している世界観だ」
「まして上半」とおどけたように付け加えた。
「事前に暗の有無も調べられる。まして、俺の素が知れれば毒の使用を疑われる」
「つまり、闘技者の世界観ルールで戦えば、流石のベルトさんでも勝てない……と?」
ソルの言葉にベルトは――――
「言いにくい事をハッキリと言うな。だが……その通りだ」
「ふぅ……」とまたベルトはため息をついた。
「あいつ等は自分たちの世界観で勝つために技が特化している。――――いや、技だけじゃない。も特化しているんだ」
「も?」
「あぁ」と頷いたベルトは立ち上がる。
「たとえば、突きの間合い」と言って拳をばした。
「この距離だ。この文字通り手をばせば相手に屆く距離。そこで拳を打ち合う。その反神経、視力、察力の水準は説明するまでもない」
が充実している10代から徹底的に鍛えられた運能力。
超接近戦で編み出された対人特化の戦闘。
巨大なモンスターと戦う必要もなく、膨大な魔力を持つ魔族と戦う必要もない。
ただ人を倒す事だけに無駄を淘汰して技者。
――――それが闘技者なのだ。そうベルトは説明した。
それから――――
「相手を殺すならいざ知れず、相手を無事・・に戦闘不能に追い込むのは、俺の得意分野ではない」
それは強がりや負け惜しみではなく、事実であった。
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