重７トンのヘッドスライディング。

大きく開いたアギトとキバ。

噛み付きと呼ぶレベルじゃない。　言うならば喰らい付き？

だが、そんな巨を――――

ベルトは片手で――――いや、指先１つで止めた。

い皮で覆われた分厚い。そんなティラノサウルスの上顎部分から異音が鳴り響く。

それはメキメキともグッチグッチとも聞こえる。

ベルトが、その部分を握りつぶしているのだ。

恐竜が泣いた。

まるで怪鳥の鳴き聲のような音だった。

その姿には、もはや舊支配者の矜持は見えない。

そしてベルトがこの試合、最後の攻撃を開始する。

と神が正常に稼するために生命エネルギー……それ、すなわち『生』だとするするならば、ベルトの攻撃は逆。

人が……否、生が死するさいに生じる生命を停止させる最後のエネルギー。

すなわち、それが『死』と定義するなら――――ベルトはティラノサウルスに死のエネルギーを送り込んでいるのだ。

それが≪死の付加デス・エンチャント≫の正。

死の概念がないものに死のエネルギーを注して、無理やり殺すスキル。

そして『死』は恐竜であろうとも、平等に――――そして、安らかに執行された。

ベルト対ティラノサウルス戦。

――――終戦。

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その結末を見たキング・レオンは震えていた。

強烈な笑みを浮かべながら……だ。

そんな様子に周囲の誰もが話しかけるの躊躇していたが、やがてレオンと舊知の興行主が話しかけた。

「本當にアレと試合を行うつもりでしょうか？　なんでしたら、あのスキルを止に……」

「いや、構わぬ」

レオンは興行主の言葉を遮った。

「もとよりベルトのスキルは當たれば死の魔手よ。それに、一撃必殺の使い手と戦った経験は100や200じゃない」

「しかし……」と食い下がらない興行主にレオンは優しく笑って見せた。

「なぁに、心配するな。の震えは恐怖じゃない。猛って、猛って、猛って仕方ないのさ。が、筋が、技が戦いたい訴えてくるのさ」

それからこう付け加えた。

「ベルトがあれほどの力を匿していたのは、簡単に使えるスキルじゃない証拠さ。おそらくは條件やデメリットが膨大なはず……今頃、スキルの反に襲われているかもしれないぞ」

レオンは席から立ち上がった。

「どちらへ？」と興行主の問いにレオンは――――

「帰る。それから、ベルトとの戦いに備える」

「……ご武運を」

レオンは振り返らず、手を上げて答えた。

日常的に鍛え上げられているレオンの。

それをさらに研磨するため、これから1ヶ月間、人前に姿を現さなかった。

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さらに1人。平常心を失っている人がいた。

その獅子の頭部が表すように獣じみた唸り聲をあげ、怒りを表す。

それは魔獣將軍　ラインハルト。

ベルトが見せたスキル　≪死の付加デス・エンチャント≫

彼は知っている。アレが殺したのだ。

アレが敬する魔王さまを――――魔王シナトラさまを殺したのだ。

ゆえに許せない。

もはや人語から大きく離れた罵詈雑言。

もしも、この個室の防音能が高くなければ1キロ離れた場所でも屆いていたであろう大聲。

「いいだろう……。あの力……冥界ですら生ぬるいと言うならば――――生かしたままで、あらん限り苦痛を與えてやろうぞ」

冷靜さと人語を取り戻したラインハルトは、人の姿に擬態して、會場を後にするのだった。