「え？」

短い驚きの聲を出したのは誰だろうか？

もしかしたら3人が同時に出した聲かもしれない。

まず、そのパンケーキを切り分けようとフォークを突き刺した瞬間――――

フォークが沈んだのだ。

そうとしか思えない。まるでのようならかさ。

続けてナイフをれる。

その切れ目から蜂のシロップが滝のように雪崩落ち――――

閉ざされていた部から芳しい甘味の香りが外へと広がっていく。

卵と小麥が匂いのハーモニーを奏で始めたのだ。

信じられない事は続き、切り分けた1欠片を皿から持ち上げた瞬間にそれは起きる。

なんとパンケーキが揺れたのだ。

そのきは、まるでプリン！

やや過剰的とも言える視覚報は、全てが味だと脳そのものが肯定を始める。

（これで実際に口にしたら……）

溢れんばかりの好奇心。それから、ほんの僅かな恐怖。

気がつかぬうちにゴクリと鳴る。

それはある種の覚悟の証。さぁ！　たべるぞ！　という絶対的決意表明。

――――そして、それは実行される。

発？

それとも暴走した魔法的なエネルギー？

そう勘違いしてしまいそうなほど剎那の浸力。

ある意味では暴力的とも言える甘さ。

しかし、その現象を起こしたパンケーキは既に口から姿を消していた。

一、どこへ？

フワリとした食を殘し、口へ怒濤の進軍を終えたソレ。

後は濁さぬ！　そう言わんばかりに溶けて消えた。

……そのはずだった。

甘さ。

それ即ち活力なり！

口……いや、外部から飛來したソレは食べた者の全を駆け巡り、狂染みた信仰心を生み出される。

卵と小麥だけの甘さ。

バターの塩気がアクセントを生み出し、幻想的に甘さを加速させる。

そして蜂の甘さが、その幻想を現実へ昇華させるのだ！

から全のさが抜け、力が訪れる。

重が消えた！？

そう錯覚しても致し方ない。

まるで背中に羽が生えたように軽い。

ふわりとしたパンケーキの食がに伝播してしまったのだろうか？

そう食べた者を白羽の天使に変えてしまう魔力――――否。

神々しい力を有していた。

「お、味しいです！」

気がつけばメイルはんでいた。

し控えめな格のメイルには珍しく、周囲の目を気にせずに立ち上がり絶賛を口にした。

キラキラとした瞳には、パンケーキしか見えていない。

本來ならばマリアかノエルに窘められていた事だろう……

しかし、マリアもノエルも同じ狀況に陥っていたのだ。

そして彼たちがその余韻に浸っている最中だった。

「いや、お前たち、お店ではし靜かに……だな」

ビクッと3人は反応した。

背後からかけられた言葉はベルトのものだったからだ。