≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

それは暗殺者系スキルの代名詞。ひいてはベルトの代名詞とも言える攻撃スキルだ。

衝撃をに送り込む。あるいは離れた相手に叩き込むスキル。

防不能の一撃は、もう1つの暗殺者系スキル≪暗殺遂行アサシネーション≫で相手の背後に回りこむ事で回避不能の効果も加えられる。

それが今、ラインハルトの手によってベルトへ打ち込まれた。

へ衝撃がり込む覚。その衝撃は人の急所である心臓へ――――

「――――ッ！　やるしかないかッ！」

心臓を打ち破らんとする衝撃に対して、ベルトは――――

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

自ら部に向けて拳を振る。

２つの衝撃がで衝突。が弾そのものに変化したような震がベルトを襲った。

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫と≪致命的な一撃クリティカルストライク≫とのぶつかり合い。

相殺。

だが、完全に相殺して衝撃が消え去ったわけではない。

行き場を失った余力のエネルギーは外部へ――――ベルトのの外に逃げようとして、ダメージを刻み付けたのだ。

一瞬、意識の手綱を手放したベルト。

気を失っていたのは剎那の時間。

（――――だが、なぜアイツは追い討ちをかけてこない）

ダメージにより自由が利かない。

それを強引にかし、ラインハルトの様子を窺う。

その手には剣。レオンを背後から突き刺していた剣だ。

地面に投げ捨てていたそれを拾い上げ、ベルトへ確実なトドメを下すつもりなのだろう。

「あぁ理解したぜ。どうやってお前がレオンから背後を奪い、剣を突き刺したのか……暗殺者のスキルを使ったのだな？」

それはが回復するまでの時間稼ぎ。

しかし、剣を手にした余裕からか、ラインハルトは笑みを浮かべて答える。

「あぁ、貴様が持つ暗殺者のスキルを盜んだ」

「……盜んだ？」と訝しがるベルトがどう目に映ったのか？

「そうさ。魔王シナトラさまが新たに與えてくれた能力だ」

ラインハルトは聲に出して笑う。

「貴様のスキルを観察すれば、そのスキルを使用できるようになる能力だ。闘技場で貴様の戦いを見るだけと言う屈辱を得て、俺は暗殺者系スキルを開眼させたのだ」

噓だ。ベルトはそう判斷した。

それは直だったが、ラインハルトが見せた次の行で、それは確信へと変わる。

彼がベルトの頬にれると――――

「―――ッ！？」と痛みが走り、頬から白い煙。

「ほれ。流石に≪死の付加デス・エンチャント≫はできなくとも≪毒付加ポイズン・エンチャント≫なら、この通りよ」

ベルトに毒の攻撃は効かない。　しかし、毒屬の攻撃による痛みまで無効できるわけではない。

なくとも自の特技で痛めつけられるのは屈辱になるだろう。

そう考えた、ある種の拷問のようなラインハルトの行だった。

――――だが、ベルトが考えていたの別の事だった。

（やはり、目の前の人はラインハルトではない）

ベルトはラインハルトが現れてから、彼を偽者として斷言していた。

その理由は――――

かつて、魔王軍の戦いでラインハルトを殺したのはベルト自だからだ。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

確かに殺した。

あの戦いで、魔獣將軍ラインハルトはを激しく破損させ死に至った。

例えば、さきほど心臓が止まったキング・レオンを生き返らせたベルトの死者蘇生。

あれは冥王の力を使ったとは言え、まだに魂が殘っていたから可能だったのだ。

を失った者への死者蘇生。

忌として扱われ、大量の魔力と時間、そして人員が必要な大掛かりな儀式魔法。

確かに……忌を忌と思わぬ魔王軍なら、それも可能だが……

魔獣將軍　ラインハルト。

魔王軍四天王……最弱の存在。

その男を蘇らすために儀式魔法を使用するか？

それも、魔王シナトラを蘇らすせ、勇者カムイのを奪い取る計畫が行われた前後に……だ。