《『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』》靜かに結ばれる詠唱

ベルトは思考する。

おそらく、目の前のラインハルトは魔王によって偽りの記憶が植えつけられている別人。

彼が言うのように魔王の力によって、他者が使用したスキルを使えるようになる能力が與えられたとしても……

≪毒の付加ポインズン・エンチャント≫は不可能だ。

なぜなら、≪毒の付加ポインズン・エンチャント≫は、ただのスキルではなく、毒をで製造するという人改造にも等しい行為の末に得られるスキルだ。

相當な手練れ……自分自にも匹敵する暗殺者をラインハルトに仕立て上げている。

(しかし、誰だ?)

自分に匹敵する暗殺者は、何人もいないはずだ。

ならば、今ある報から目の前の人を推定して……

だが、そこでベルトの思考はされる。

ラインハルトが手にした剣を振り下ろしたのだ。

袈裟切り……斜めの軌道で肩が狙われる。

「くっ……」とベルトは躱そうとする。

だが、が重い。ダメージが抜ききれていないは、言うことを聞いてくれない。

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避けきれず、ベルトのに赤い線は刻まれ……鮮

紅のが辺りを濡らす。

「避けられたか。鎖骨くらいは斷てると踏んでいたのだが……」

ラインハルトの言うとおり、斬られたのは表面の皮。それからしのだけだ。

ダメージというほどの事でもない。

だが……

「だが、どうして深追いをしてこないか? 今、そう考えているだろ? 暗殺者?」

「――――ッ!」とベルトは無言でしか返せない。

それは図星だったからだ。

「教えてやろう」とラインハルトは舌舐めずりをした。

「簡単なことだ。必至に擬態をしているが、今のお前は、死にってやつだ。≪致命的な一撃クリティカルストライク≫によるダメージ。それに加えて、短期間で2度の冥王化……『呪詛』の浸度合いはどうだい?」

ラインハルトの読みは正しい。

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫のダメージは時間と共に薄れていっている。

だが、魔王に施された『呪詛』の影響は強まっていた。

その事実を前にベルトは――――

「隨分と優しいな」と笑った。

「なに?」

「今なら弱化している俺を倒せるだろう。だが、それを知っていて、悠長すぎやしないか? 暗殺者の技スキルを盜んだのなら、使い方を教えといてやるよ。 いいか? 基本は殺れる時に殺れ……だ」

挑発。

ベルトの狙いはカウンターだ。

ラインハルトを怒らせ、不用意な一撃を引き出させる事が目的。

その長剣に対して武破壊。折れた剣先を利用して、その命を絶つ。

けれども、その思は外れることになった。

「勘違いするな。今のお前だけではない」

そのラインハルトの言葉には、死刑判決のような冷酷さが宿っていた。

「……何を言っている?」

「ふん、痛みで観察眼が濁ったのか? 今の俺は、たとえ貴様が全盛期だとしても殺せるからこそ余裕を有しているのだ」

ベルトに見せ付けるように長剣を向ける。

そこに、刃に流れ込んでいるが見えた。

「貴様は魔王さまの怨敵。圧倒的憎さが全てに勝るが、それでも敬意と言うものもある。戯れであろうが、最後に言葉をわすのも俺の――――いや私の心を計り知れ」

その長剣に流れ込んでいる。それは魔力だった。

は、水に浸すが如く魔力に潤っていた。

「それは魔剣か!?」

「気づくのが遅かったな。――――いや、言い直そう。気づくのが遅すぎたな!」

その魔力は毒屬に変換され、暗殺者の最強魔法の準備にっていた。

「そう、これこそが魔剣。貴様等、人間が使う模造品とは別よ。魔界から魔素を吸い込み、鉱から取れた金屬から生まれたのではなく、初めから魔剣という概念を持って生まれた。ある意味では生に等しい存在……魔王さまより頂戴した魔剣により滅ぶがいい」

目を閉じるラインハルト。その表は不思議と安堵のようなが浮かんでいる。

「――――いくぞ、暗殺者。次に會うは冥府にて、存分に語り合おうぞ」

『これより放つは不可視の刃――――』

ラインハルトの口から詠唱が靜かに結ばれ始めた。

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