≪死の付加（デス・エンチャント）≫

冥王の心臓が発する。

その発と同時にベルトへ植えつけられた『呪詛』が一気にの半分まで侵食。

の半分が黒く染まり、じわじわと侵食が止まらない。

それに比例するように激痛が與えられる。

だが、それでも――――

ベルトは止まらない。

すでに綻びが見えているフェリックスの結界。

ベルトの連撃によって、ついにヒビがる。

冥王の力を得たベルトの手刀が真っ直ぐ突き出され――――

結界を貫いた。

生は無論、無機でも……魔法という概念ですら……殺す≪死の付加≫

ベルトの手を始點に――――結界を死が侵食していく。

「ベルト……ベルト・グリムッ！」

低く呟くような聲しか出さなかったフェリックスがびを上がる。

バラバラと剝がれ落ちていく結界の側から鋭い視線をベルトへ送り……

両者の視線は差した。

今も結界を破壊続けるベルトは無防備。

「ここで、今！　死ぬがいい！　ベルトおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！？」

迫り來るベルトに向けて手をかざし、魔力を込めて――――

「収めよ」

聲がした。一、誰の聲か？

「カムイ」とベルト。

「シナトラさま」とフェリックス。

両者ともに正しい。

聲の主は剣の勇者カムイ……そのを奪った魔王シナトラのものだった。

この瞬間、怒りと激痛で思考が鈍り、ただただ破壊衝にを任せていたベルトのきが止まる。

の限界を超えたきの代償。

「――――ッッッ！？」と凄まじい反がベルトを襲う。

けぬ。

視界ではフェリックスが「忌々しい」と言わんばかりの表を見せ、消えていく。

カレンを抱きかかえたままで……

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

ここではない地下深く。どこかのダンジョンの最深部。

「くっくっく……」と笑い聲を止めようとしながらも口かられている。

「いい見だったな」

やや大きめの玉座に腰を落とし、年のが拍手を送る。

そこには、もう1人……人間が待機していた。

人間の名はソル・ザ・ブラッド。人類の裏切り者と言われる彼だったが、今の表は固い。

「えっと……もしかしてこれのために死者蘇生の大儀式を？　生き返ったにライハルトさまの魂を？」

「ただ、ベルト・グリムへ嫌がらせをするためだけに？」という言葉は辛うじて飲み込んだ。

「その通りだ。見たか？　あのベルトの顔と焦りを？　これからもラインハルトを……いや、あのと組み戦わせてみようぞ。

魔王シナトラは高笑いをした。

対してソルは――――

（そんな馬鹿なッ！）

心の中で悪態をついていた。

ラインハルト、四天王の中で最弱と言われているが、彼の本領は単獨戦闘ではない。

兵を率いた用兵にある。それも大軍勢から遊撃隊。時には決死隊……しんがりにも立っていた。

そして、自が他の四天王に力量で劣ると理解しているため、あらゆる戦場に姿を現し、その存在を見せていた武人であった。

それは人類でありながら、敬意を送るに相応しいとソルにも思わせるでもあった。

（それを……崇高な武人の魂を……こうも容易く弄べるものなのか？）

それも忠臣中の忠臣だった人を？　あまりにもやり方が拙すぎ……いやすぎる。

この時、ソルの中に１つの疑が沸いた。

それは、およそ有り得ない疑であったが……

目前の人は本當に――――

本の魔王シナトラなのだろうか？