ベルトとシンラが陸クジラを覆うように走り、札を落とした位置。

もしも、仮に上空から見れば、魔力の線が札同士に繋がり、五芒星を描いているが分かるだろう。

五芒星の點となる場所は、それぞれ五大元素魔法を表している。

東方の五大元素魔法では『木』『火』『土』『金』『水』の５つ。

敵を結界に閉じ込め、それらの５つの屬魔法を時間差で攻撃するのが―――――

結界方　≪伽藍堂世界≫

既に5つの魔法が発。

それら5種類の屬はじり合い――――音もなく敵を消し去る。

――――そのはずだった。

魔力の殘滓が殘る中、巨の影がいた。

「仕留め切れなかった……だと！？」

驚きの聲はシンラのもの。

事前に魔力を込めた札で敵を囲み、結界と共に放たれる自の最強魔法。

いくら、桁外れの耐久力を持つ陸クジラとは言え葬り去るには十分の威力だったはず……

「すまないベルト。やはり『呪詛』による弱化の影響が殘って……」

「いや、違う。違うぞシンラ！」

ベルトは、いまだき続けている陸クジラを指差す。

「あいつ、何かに寄生されている」

「な、なにを？　なにを言ってるんだ？　ベルト！」

混するシンラ。

しかし、確かに良く見れば、き続けている陸クジラのは崩れ始めている。

「気をつけろ！　本が出てくるぞ」

崩れたの隙間より金のが溢れ出る。

それを直視した直後……陸クジラは崩壊した。

中に潛んでいた者が現れる。

そいつは金のに包まれ、背中には純白の翼が４つ。

それは人類よりも上位の存在。

「馬鹿な……どうして天使・・がこんな所に！」

天使――――それは神の使いであり、天上の尖兵。

「うむ……この生は寢ていても栄養を屆けてくれる出來の良い住処であったのだが……」

陸クジラを家代わりにして住んでいた。それだけでも十分な衝撃発言。

しかも、ベルトとシンラは天使の家を破壊してしまったのだ……

「戦闘必至……回避は無理か……」とシンラは呟いた。

しかし、天使は――――

「うむ……許そう」

予想外の言葉に「えっ？」とシンラは聲をらす。

「呆けるな人間よ。我等は寛大である。謝罪の言葉があれば素直にけ取ろう」

その表は慈悲が浮かんでいた。噓ではなく本當に許そうというのだ。

「た、助かる……のか？　いや、すまなかった。貴殿の家を破壊したのは本當に申し訳ない事を――――ぎゃぁ！！」

頭を深々と下げ、地面に膝をついて謝罪するシンラの首をベルトが摑み、強引に立ち上がらせたのだ。

「な、何をする！　いや、謝罪の最中に邪魔をするなどと、天使さまに不敬であろう！」

そんな抗議の聲を上げるシンラをベルトは一瞥もせず、天使から視線を外さない。

そして、こう告げた。

「すまない、シンラ。　すでに攻撃をれちまった」

「……はぁ？　はぁ！？」

すぐに視線を天使に戻す。　すると天使の様子がおかしい。

自分自を抱きしめるようにを抑えかと思うと、苦しみ始めた。

「貴様、貴様、貴様貴様貴様……人のでありながら天に唾を吐くか！？」

それは人の上位存在である天使の優雅さを毆り捨て、獰猛な野獣のような低い恫喝どうかつ。

――――いや、獰猛な野獣と言うよりも手負いの猛獣。

「ベルト！　お前、まさか！」

「あぁ」とベルトは頷き、それからこう続けた。

「天使にも毒って通じるんだな」