《『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』》黒い町と嗤う亡國の王者

町は中まで黒かった。

「――――っ!」とメイルは言葉を飲む。

直前まで出かかった言葉は「なんて酷い事を」だ。

散らばっている。 町のそこら辺に人影が見える。

まるで蝋人形をチョコレートで塗り固めたような悪夢の一幕。

しかし、それは蝋人形でも、チョコレートでもない。

人間だ。

の人間が生きたまま、黒い影に覆われているのだ。

最初、町に踏みれたメイルに対して、この人間たちをってメイルに攻撃を仕掛けて來た。

しかし、メイルが持つ『浄化』の力に無意味だった。

近づくことすらできず、祓われる。 だが、メイルにとっても祓う以上の事は葉わなかった。

黒い影の束縛から放たれた人間は、一瞬だけ歓喜の表を見せる。

だが、それも一瞬の事。すぐさま黒い影に覆われて、黒い蝋人形に戻る。

「やっぱり、完全に町を祓うためには元兇を排除を――――待っていてください、義兄さん」

そう口にしたのは、自らを鼓舞するためだろうか? そんな彼《メイル》をめるためか? 何か、彼の背後にいる存在が彼の肩を振れた。

「ありがとう、大丈夫です。私は大丈夫…… この戦い、あなたも力を貸してくださいね」

そう笑みを見せ、振り返ろうとするが――――

「解せないな。誰と話している? まさか、この俺と矛をえようとする人間が心に病を抱えているわけでもなさそうだがな」

どこか、軽薄そうな聲。 だが、メイルに取ってそれは、聞き間違うはもない聲であると同時に――――あり得ない聲だった。

「義兄さん……」

だが、メイルにそう言われた人は「あん?」と眉を顰める。

「あん? わかんねぇな。もしかして、あれか? お前、この……ベルトの奴の関係者か?」

その人は、ベルト・グリムだった。 しかし――――

ベルトは異形な風貌へ変化を遂げていた。

「あなたが元兇? どうして……いえ、どうやって義理兄さんのを乗っ取ったのですか?」

メイルはあふれ出てくるを抑えこえんで、極めて冷靜な口調で尋ねる。

を乗っ取った? はっはっは……どこの誰だか知らないお嬢さん、そいつは誤解さ。深い誤解ってやつさ。乗っ取れてたのは俺っちの方さ」

「それは一、どういう意味ですか? 貴方は誰ですか?」

「俺っちか? 俺っちは憐れな亡國の王さ。だから、この世で建國を目指してる――――お嬢さんは知ってるかい? 冥王ハーデスって、人間ごときに心臓を喰われて死んじまった憐れな愚王を?」

「――――っ!」とメイルは杖を強く構える。 戦闘態勢だ。

目前の男が、どのような虛言を吐いているか? 現狀のメイルには判斷ができるわけはない。

けれども、伝わってくる強者の圧は――――規格外。

様々な伝説を近くで見続けて來たメイル。

勇者、魔王、最強の暗殺者、竜王……etc.etc.

だが、それらと比較しても目前の男。ベルトのる冥王を名乗る男。

その戦闘能力は伝説たちと比較しても規格外。

圧倒的戦力差と対峙して不意にメイルの脳裏に不安が過ぎる。

(勝てるのでしょうか?)

だが――――

「ん? んん? なんだお前? なんでそんなに楽しそうなわけ?」

「いえ、しばかり――――私、強くなり過ぎたみたいなので……楽しくなっているみたいですね、しだけ格上の人と戦うのが」

「はっ!」と冥王は笑う。

「流石、一度は俺を倒したベルトの関係者だ。いかれた戦闘狂だぜ」

冥王の笑いは、さらに大きく、愉快さを増して――――

ピタッとやがて時間が止まったように、笑みを引っ込めてメイルに言う。

「それじゃ、見せてもらおうかな? お嬢さんが、どれほど強いか? どれほど、俺っちに匹敵するのか?」

「いいですね、そうやって油斷しておいてください。私って戦闘狂と言うよりも楽に勝つ方が好きなんですよ」

冥王は、引っ込めた笑いを溢れさせた。

    人が読んでいる<『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください