「≪死の付加≫　それも冥王襲名……ですか？」

メイルは、目前の冥王の脅威が何段階も上がったのをじる。

気づけば、が震えている。　認めたくない恐怖が否定しても湧き上がってくる。

「ふふん？　冥王襲名？　ベルトが使っていたアレと一緒にしない方がいいぞ」

「――――っ！？」とメイルは驚く。

離れていたはずの冥王が目前まで移している。

視界から外したわけでもない。それでも、反応する間もなく、冥王が前進していたのだ。

「ベルトが奪っていった心臓が、元々俺っちのだ。奴よりも上手く使えて當然。加えて――――」

メイルの視點が回転する。

冥王がやった事は接近し、メイルに足払いをしただけ。

しかし、問題はその速度。メイルの意識を超え、反応すらできない速度だった。

「――――っ！？（い、いつの間に！？　衝撃への準備、を！）」

が回転する験。普通の日常生活ではあり得ない狀況。

それでも、ダメージを最小限に抑えようとするメイルに対して冥王は――――

「いや、この一撃で仕留めさせてもらうさ――――よっと！」

空中に舞うメイルの腹部に片腕を添えた冥王は、そのままメイルを地面に叩きつけた。

など役に立たない衝撃。　地面の方に亀裂が走り、砕け散るとができる。

その中心にいたメイルは意識を失う――――

「ここは、俺っちの領土……冥王の権限も十全に使え、俺っちの心臓もベルトの比にならないほどの効果を発揮できる――――まぁ、當然だわな。さて……」

さて、どうするか？　失神したメイル。生かすも殺すも冥王次第。　だが……

「だが、妙だ。なにか……おかしい。俺っちの一撃をけて、なぜ失神だけで済んでいる？」

知らぬ間に手加減したのか？　それはあり得る。

の主であるベルトが冥王の一撃に何らかの介した？

「いいや、それもない」と冥王は否定する。　ならば――――

「ならば、お嬢さんが、そもそも……」と最後まで冥王は言葉にできなかった。

なぜなら――――

上から攻撃が降り注がれた。　しかも、その攻撃は――――

≪魂喰いソウルイーター≫

「なっ！　俺っちが気配を察知できない攻撃！？　それもベルトの技……いや、それ以上の威力だと！？」

それは冥王にとっても想定外。　この地上で脅威とじるのは、ベルト・グリムだけ。

……そのはずだった。　しかし、新たに現れた敵の攻撃は、ベルト以上。

「一、何者か？」と見上げ、攻撃の主を見るも、朧気な気配から、その姿はぼやけて見える。

冥王は、知らない。

その存在は、ベルト以上の才能を有した暗殺者。

ベルトを凌駕する最強の暗殺者――――　カレン・アイシュの存在を。

そして、それは冥王に取って隙に、大きな隙になった。

「上のカレンさんに意識が集中して足元がお留守になりましたね？」

冥王の背後。　それも地面から、何かが出現した。　人の言葉を発する何かが……

≪暗殺遂行アサシネーション≫

背後を取る事に特化した暗殺者の技を使った彼は――――

ベルトの師匠であるエルマは、拳を冥王に添える。そして……

≪致命的な一撃クリティカルストライク》

衝撃をる打撃が冥王のにめがけて撃ち込まれた。

「全く、世話をかける……戻ってこい、馬鹿弟子め」

放たれた衝撃は、冥王の心臓を強打させた。

だが、それでも冥王は倒せない。　心臓を打たれても、なおベルトのの支配権を離さない。

「――――これは、想定外か。まさか、ベルトと同等の――――いや、それ以上の存在が２人も同時に相手にせねばならぬとはな」

冥王は、背後に立つ暗殺者エルマを見た。　それから最初の攻撃を行った空からの襲撃者であるカレンを見る。

値踏みする視線。２人の戦力を測定する。

「うむ、間違いなく脅威。これほどまで強者は俺っちも流石に――――滾るぜ」

嗤った。

冥王は嗤った。