剣の勇者カムイの言葉

「冥王ハーデスを引き剝がす方法がある」

それにメイルは、「――――っ！」と絶句する。

「私は、考えていませんでした」

よく見れば、手が震えている。

「単純に怒ったを冥王にぶつけるためだけに私は飛び出して――――

義兄さんを助ける方法を考えてなかった。私は……なにも……」

震えは全に広がり、その瞳から涙が――――

「大丈夫よ、メイルちゃん」

「姉さん……」

「あの人は強い人だから、いざって時はグルグル巻きに縛り上げてビンタでもしてあげれば、必ず戻ってくる」

「そういう人だから……」とカレンは彼を勵ますようにお道化たじで言ってみせた。

 　空気を読んで発言をしていなかったエルマとカムイだったが、

「うむ……」とエルマが話を戻した。

「それで？　どうやって弟子《ベルト》を元に戻す？」

「そうですね」とカムイは一瞬、悲しい顔を見せるが、３人はその理由が分からなった。　なくとも、その説明を聞くまでは……

「冥王がどうやってベルトのを乗っ取っているのか？　皆さんは、どこまで理解してますか？」

「どこまで？　確か、弟子は冥王から心臓を奪った。それを自ら移植して自分の心臓とれ替えた？　……間違っているか？」

「いいえ、その通りです。あの時代……」とカムイは思い出すように語る。

「僕たちは、危機に陥っていました。不死の魔王との戦い……不死だから倒せない」

「だから、我が弟子は生きたまま冥界に落ち、冥王の心臓を奪った。全ては不死を殺すための力を手にれるため」

「その通りです。流石、ベルトの師匠さんですね」

「……下手に褒めないでくれたまえ。それよりも大切なのはベルトを元に戻す方法だ」

「そうですね。今、ベルトが冥王に乗っ取られている理由は、心臓にあります。だったら方法は簡単です」

そう言うとカムイは、手刀を作り――――

「待て、お前！　何を！」と止めるエルマをきを無視して、カムイは自らの左を突き刺した。

「……心配はいりません。僕のは人間のものとは違っています。霊の力とダンジョンコアによって別の生命に作り替えられています。だったら――――」

そのまま、引き抜かれたカムイの手。その上には――――

「ベルトを元に戻す方法。それは簡単です……冥王の心臓を抜き出し、代わりの心臓を埋め込めばいい」

カムイの手には生の心臓が脈打っていた。

「移植できる心臓は、ここにあります。　それに貴方たちの暗殺者としての技なら……戦いながらもベルトから心臓をれ替える事ではないですか？」

カムイは微笑んで見せた。しかし――――

「ダメです！」とメイルが止めた。

「それだけは絶対にダメです。義兄さんが、どうして戦っているか？　今の目的は、何か知っているはずです！　他ならない、貴方なら！」

「……」と無言でメイルの言葉を向けられたカムイは天を仰いだ。

「ベルトさんは、僕を元に戻す。人間に戻すためと言ってくれました。でも……それでも……」

それ以上、彼から言葉は続かなかった。