≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

冥王は一撃を繰り出す。しかし、ベルトの方が速かった。

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

ノーモーションの発。

腕すら突き出すこともしない。

衝撃を腳から放ち、地面を進んだソレは地面から冥王を襲う。

だか、冥王は避ける。

今の冥王はベルトと同等のスキルを有している。

ゆえに不意打ちを無効化する《殺意察知》のスキルを発。そのまま、前に飛び出し間合いをつめる。

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

両者共に同じ技を放ち────

それを寸前で拳を止めた。

「流石に≪致命的な一撃クリティカルストライク≫の打ち合いに乗らないか、冥王」

「ふん、互いに返し手を持ち者同士……迂闊に打てば、勝敗は神の削り合いに以降する。勝って廃人になるつもりはない」

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫　の返し技

≪致命的な一撃返しリバースクリティカルストライク≫

打ち合えば、終わりのない戦いに投する。

「――――だから、打つとすれば決著の一撃か」とベルト。

「うむ……」と頷く冥王。

それだけ。それが合図となったように中斷していた戦いが再開される。

同じ技を持つ者同士の戦い。

最初は離れた位置から飛び道――――　≪魂喰いソウルイーター≫

同じ技。

相殺。

牽制。

我慢比べ。

≪暗殺遂行《アサシネーション》≫

――――いやキャンセル使えない

強引に移スキルを使い、攻めに移行しようとすれば、それすら隙となる。

ジリ……　ジリ……

ジリ……　ジリ……

神経を削るように前に行く。　気が付けば、極限までまった間合い。

互いに手をばせば、屆く距離。

だが、打撃すら容易に出し合えない。

≪毒付加《ポイズンエンチャント》≫

僅かなきでの毒の打ち合い、それと同時に打ち込まれた技の解毒。

神世界での毒の打ち合い？

それは現実には存在しない。　どの毒よりも神への猛毒となる。

相手の存在そのものへ浸食を開始する猛毒。

し

笑

え

て

來

た

。

結局、削り合いだ。

あれほど嫌がっていた戦いを行っている。

だから――――

「むっ！　なんだ技が変化した！？　――――いや、同じ技。同じき……そのはず」

冥王が驚きを聲にする。だが、ベルトは反応すらしない。

ブツ……ブツ……と奇妙に呟く。

それはおのれの技を――――

おのれの存在を確認するように――――

「……もっとだ。意外を、獨創を――――新たに、原始的に、進化と退化を――――」

冥王の反応が遅れる。

一撃。　ベルトの繰り出す打撃。

それにブレが見える。激し過ぎるブレは様々な可能を――――

幻影の拳撃。

しかし、それは本當に存在しないのか？　それは本當に幻影なのか？

存在しないはずの打撃が、確かに撃ち込まれる。

それは、確かに存在していた。　それは、ここが神世界だから？

――――いや、この世界に影響を及ぼすほどの

≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

それは魔拳。　繰り出せば終わる。

冥王は、に衝撃が走る痛みに襲われる。　だが――――

「だが、俺っちも――――俺も≪致命的な一撃クリティカルストライク≫を――――まだ！」

≪致命的な一撃返しリバースクリティカルストライク≫

撃ち込まれたベルトの衝撃。　それをで生じさせた自ら衝撃で、塗り替えて――――できない。

「なっ！　俺がじてる。お前の技は――――なんだ？　何をしたッ！　ベルト・グリム！！！」

「いや、何もしてないさ」

「噓を――――うそをつくなぁ！」

「ただ、お前には到達し得ない。打撃を打ち込んだ」

「わけの――――わけのわか――――らないこと――――」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

（ダメだ！）

神世界ですらが保てなくなった冥王。

（それでも俺はッ！　早く、このから出すれば――――）

冥王は諦める。

を捨て去り、神になれば冥界に戻れる。

（そうすれば――――もういい。ベルトなんぞ、忘れよう。俺っちの國で君臨さえできれば――――）

だが、彼は気づいていない。　その背後に影が迫りきているのを――――

ベルトが放った魔拳。　それは、例え実態のない存在になったとしても逃がさない。

その存在を破壊するまでは止まる事はない。

だから――――

今、冥王は消滅した。