それは命の輝き。　それが砕け散る様子だった。

「奴め……冥王が逝きおったか」

そう呟いたのは魔王シナトラ。彼は蘇った竜王と共に宙に浮かび、それを眺めていた。すると――――

「僕は察しが良い方だと自負しているんだけど、よくわからないんだよね、魔王」

「……なにがじゃ、竜王よ？」

「これは、誰が考えた筋書き？　どういう語なんだい？」

「……」

「おやおや、だんまりかい？　それじゃ疑問點を言わせて貰うか」

そう言うと竜王は言葉を続けた。

「冥王が蘇った理由。それは君がベルト・グリムと言う暗殺者を殺した事で、顕現していた冥王の心臓が暴走した結果だよね？」

「……」

「本當に話さないつもりかい？　これだから、老人は――――まぁいいや。

そして、君はどうして蘇った？

そうだよね？　霊が、この世界の代弁者たちが脅威を排除するために勇者を生み出した。君は、その余波……勇者候補の力で蘇った。そこまで言うと僕の言いたい事がわかるよね？」

「この世界が脅威としている存在は何か？」

「そう、かつて世界の脅威とされた魔王も、この竜王も、冥界から顕現した冥王ですら、霊たちは黙認した。新たな脅威の倒すために、魔王も、竜王も、冥王も、存在を良しとされたんだ」

「そうじゃな……舐められたもんじゃな」

「ふ～ん、君はそうやって怒るんだね。僕は怖いよ、純粋に……」

「……」

「ねぇ魔王？　僕ら３人よりも排除を優先させるべき脅威ってなんだろうね？」

「さて……ワシとて想像もつかぬ。北に眠る邪神か？　星間に漂う怪か？　それとも――――」

「それとも？　あぁ、君は彼を見ている。あるいは彼が排除される対象かもしれないと思っているんだね」

「うむ……彼は霊の力を超えている。１人の人間として魔王も冥王も……そして勇者ですら倒してきた男……ベルト・グリム」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

ベルトは空を見た。　誰かが見ている、その視線。

しかし、奇妙な事に敵意と憐れが含まれている視線に不快はなかった。

「そんな事よりも……」

が長い間奪われていた弊害だろうか？　四肢をかすのも、口を開く事にも違和があった。

それでも――――

「ごめん、待たせた。何とか戻ってこれたよ。この償いはなんでもする。だから――――」

何とか彼を待っていた３人に微笑んだ。

うまく微笑む事ができただろうか？

そして、彼たちもうまく返す事ができただろうか？

「……帰りましょう。私たちの家に」

その瞳に涙が零れ落ちていた。