リィアンは戦う、大切な友達を守るため。武を砕かれ、手足を折られ、それでもなお懸命に戦う。

「はぁ……はぁ……、ふぐっ……」

「実に愚かな抵抗だな」

「でも……、それでもリィは……皆を守るの……っ」

シャルロットだけではない、オリヴィアを、ナターシャを、シャルル、ヘンリー、ベッポを守るため。敵わないと知りながらも、命を賭して戦い続ける。

とはいえとうに限界を超えており、もはや立っているだけで一杯。しかも相手は邪神ガレウスである、どう足搔いても勝ち目はないだろう。

「さて、全てを終わらせるとしようか……ぬおおおおっ！　余を信奉する者共よ、今再び力を授けよう！」

邪教の軍勢を増強すべく、ガレウスは魔力の大氾濫を起こす。その効果は甚だしく、両斷寸前だったヴァンナドゥルガまでも蘇るほど。

「時に……愚者に余の魔力は相応しくない、そうであろう？」

「ああっ……魔力が……!?」

邪悪なる魔力の氾濫は、ガレウスを信奉する者に大いなる恩恵をもたらす。しかしガレウスに背く者、すなわちリィアンには大いなる災いをもたらす。

「そんな、リィの魔力が……奪われる……っ」

「不敬な言いだな、元來は余の魔力であろうに」

「ああぁ……うぅ……」

「よもや忘れたわけではあるまいな？　魔人とは余の魔力によってり立つ存在、持ちうる魔力の全ては余の魔力である」

「まだ……まだリィは……」

「余の魔力であるが故、與えるも奪うも余の思うまま。抵抗は須らく無意味だ、諦めて弱者へとり下がれ」

「シャルロッ……ごめ……」

ついにリィアンは魔力を失い、悔しくも力盡き果てる。

もはやガレウスを止められる者はいない、だがまだ抗う者は殘っていた。

「ワタクシが……ワタクシが相手ですわ！」

シャルロットは抗う、大切な友達を、する國と民を守るため。心をい立たせ、ヨグソードを手にガレウスへと立ち向う。

「はぁ……、ワタクシの名は……シャルロット・アン・ロムルス……。ロムルス王國の第三王で……リィアンの友達で……」

「弱者の分際で余の前に立つか」

「王族として……友達として、守られてばかりいられませんわ！　ワタクシだって戦い──」

「不屆き極まる！」

「──っ」

気概はあれども悲しいかな、シャルロットに敵う余地はない。振り下ろされる兇刃を、防ぐことも避けることも出來ず──。

──バキンッ──

兇刃が迫る剎那、シャルロットは確かに聞いた。不可思議な破砕音と、この世で最も頼りになる聲を。

「あぁ……！」

涙で視界を滲ませながらも、シャルロットは確かに見た。迫る兇刃をけ止める、この世で最も頼りになる背中を。

「そこまでじゃ……！」

如何なる絶をも覆す、最強にして無敵の存在。

魔王ウルリカ、ついに降臨す。