《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》06
ミレイネの報告をけたハーラルかもしくはヴァーツラフがリーザロッテに詳細を聞きにそのうちこの部屋に飛び込んでくるだろうが、今だけはキリシヤとリーザロッテ二人だけの落ち著ける時間である。
「彼、『次代の明星』のリディアでしたか。彼もその……、リーザロッテ様やエインズさんと同じ——」
「ああ、魔師だ」
落ち著いた様子で話すリーザロッテだが、キリシヤは魔師であるリディアに対して危機を持った。
どういう原理か分からない。
だがしかし王城の中樞であるリーザロッテの部屋に侵してきたリディア。そして厳戒態勢を取られる前に一瞬で姿を消した魔。
「……お父様は大丈夫なのでしょうか?」
リディアはサンティア王國現國王であるキリシヤの父ヴァーツラフの首を獲ると公言したのだ。あれだけ強大な魔を持つリディアが魔の対象をただ一點ヴァーツラフに向けるとなるとどうなるのだろうか。
想像するキリシヤには最悪の結果しか見えない。
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「魔師を相手に魔法士では相手にならん。どれだけ防を固めようが時間稼ぎしかならんだろう、結果は変わらん」
「っ!」
リーザロッテは甘い言葉を言わない。
そんな言葉にキリシヤは息をのんでしまう。
順當に行けば、次期國王はキリシヤの兄であるハーラルになる。しかしリディアの対象がヴァーツラフのみで止まるだろうか。ハーラルにまで及ぶ可能も十分に考えられる。そして——。
キリシヤは息が詰まり、激しい悪寒に襲われる。
そんなキリシヤの青白い顔を見てか、リーザロッテが優しい言葉をかける。
「安心しろキリシヤ。何があっても妾はお前だけは守るぞ」
「ありがとうございますリーザロッテ様……」
容易くリディアを撃退したリーザロッテがそう言うのであればこれ以上に心強いものはない。
しかしリーザロッテの「キリシヤだけは」という言葉にキリシヤは引っ掛かりを覚え、し寂しさをじた。
「第一、やつに首を獲る機會があるか分からんぞ?」
「それはどういうことですか?」
「その前に死ぬかもしれんだろう。なにせエインズに挨拶へ行くと言っていたんだからな」
挨拶。リディアは確かにそう言っていたが、その挨拶がリーザロッテにしたものと同じだとすると、エインズを相手取って戦闘になるということである。
「それほど、なのですか?」
「妾からすればどうでも良いことだが、エインズからしてみればそれ以上ない程に心を躍らせるものなのだ。魔を見る、魔師との決闘というものは」
「ですがエインズさんは……」
リディアを圧倒するほどの魔を持っているのだろうか。たしかに魔法に関する知識や技量はかなりのものかもしれない。なにせ短期間でライカに無詠唱での魔法の発現を習得させたほどなのだから。
だがそれが魔となれば、リーザロッテの言葉を素直に納得できないキリシヤ。リディアの魔を見た後では。
エインズの右腕の魔。それは彼がみ、手にするのが可能な場合(その細かな條件は不明だが)において理を歪め、手にすることができる魔とキリシヤは理解している。
となれば瞬間移が可能なリディアが優位に立つと十分考えられる。もちろんリディアの魔においても細かな條件は不明だが、一瞬でエインズの背後に立ちその首に刃を突き立てることは容易だろう。
「そうだな、これは妾も直接目にしたわけではないのだがな……。キリシヤの先の疑問に繋がる答えだ」
「私の疑問ですか?」
エインズがダリアスに対して行った魔知識の提供。これはエインズの右腕の魔の効果と対極にある。剝奪と付與、そこにキリシヤは違和を覚えたのだ。
リーザロッテは小さく息を吐いた。
「……魔には段階があるのだ」
「段階?」
「魔に目覚めた者は第一段階に至る。目覚めた魔の部分的な力の行使『限定解除』」
限定解除、これはキリシヤもリーザロッテの口から発せられたのを耳にしている。
リーザロッテは続ける。
「魔の、さらに真に近づいた力の行使『不完全解除』。これに至るのは生半可なものではないが、妾はこれに至っている」
リーザロッテは小さく「あまり使いたくはないのだがな」と遠い目をしながらこぼした。
リーザロッテの言葉を聞いていたキリシヤは驚く。あれだけ異次元な戦闘を見せたリーザロッテとリディア。この二人の魔は本來の力の一部分にしか過ぎないことを。
「リディアもそこに至っているのではないですか?」
「ないだろうな。直接問うていないから確定ではないが、あれは至った顔つきではない。強い武を始めて手にして振り回し遊ぶそのものだ」
「そうですか……」
リディアを容易く撃退したリーザロッテはまだまだ余力を殘しており、絶大なる力をまだ見せていない。もちろん対する魔によって相の良し悪しもあるだろうが、魔法士と魔師が相手にならないように、『不完全解除』に至った者と『限定解除』しか出來ない者とでは、そこには雲泥の差がある。
「エインズさんは」
「間違いなく至っているだろう。妾でも至っているのだ、あいつがその域に達していないわけがない」
だからこそ、リーザロッテが持つ中で最強の切り札である魔の『不完全解除』を書庫でエインズに見せてしまったことが悔やまれるのだ。
容易く見せてはいけない代だった。
「あいつが『不完全解除』、いわば魔の第二段階に至っていると仮定するならば、どんな力を発現させるか」
「んだものを手にれる魔の、その先……」
キリシヤは顎に手をやり、考える。
魔の力は強大だ。それはリーザロッテとリディアの戦闘を見れば明らか。魔法士、いや、魔法では相手にならないほどの力。
エインズの行いはそんな強大な力を手にする魔師を次々生み出すような行為。それは対敵した際、自の脅威となりえる者を易々と生み出すもので、普通に考えれば獨占したいのが當たり前。
そこまで考え、キリシヤはその先の僅かな可能に行き當たる。
「……獨占」
獨占したくなる程の、自の脅威たりえる程の魔を果たしてエインズはしないだろうか。あれだけ魔法や魔に強い関心を持つエインズが、まだ見ぬ魔をしないことなどあるのだろうか。
「リーザロッテ様」
「なんだ?」
「魔とは単一なのでしょうか?」
もし違うのならば。
「いや、違うな。先の黒炎の魔、あれに至った魔師も多くいた。人の數だけはあるが、だからといって一人しか持たぬなどそうはない」
「だとするならばリーザロッテ様、エインズさんの問答と魔知識の提供はもしかして……」
キリシヤは行き當たる、リーザロッテが推測する右腕のその先に。
「あれは提供ではない。むしろ手にれる行為とみるべきだ」
何かはリーザロッテでも分からない。彼が目覚めた魔ではないのだから。だから推測にしかならないが、魔に至る因子的な何かをエインズは取得しているのかもしれない。
「何のために。知識?」
リーザロッテは行き著いたキリシヤを見て小さく笑う。
「キリシヤが子の時、しかった玩を與えられたときどうした?」
「それはもちろん時間を忘れて遊びました」
「そうだ。手にしたからといって見て終わるはずがない。玩を使って遊ぶのだ」
「っ! だとしたらエインズさんは——」
「あいつの右腕がどれだけの玩を包しているのか分からん。だが、現化するまでに強く抱いた人のや祈りをかすめ取るんだ」
魔の異名など、魔神の前では生ぬるいものだ。
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『隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~』
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