《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》01.ある悪役令嬢は決意する

夏の日差しが和らいだ空には、淡い水が広がっていた。

窓から見える景は平穏そのもので、屋敷の慌ただしさなど気にもかけていない。

――この世は殘酷だ。

だからこそしさが映えるのだと口が裂けても言えないほどに。

そんなことはないと否定する人は、事実から目を背けているに過ぎない。

自分には関係ないから、見て見ぬふりをしているだけだ。

「お嬢様、出発の準備が整いました」

「わかったわ。最後に、お母様にだけ挨拶していくわね」

母親の部屋は、いつもしだけドアが開けられていた。

夜になると隙間から部屋の明かりがれたものだ。

いつでも娘がって來られるようにという母親なりの配慮だった。

(お母様にとって、わたくしの年齢は三歳で止まったままなのよね)

心配で過保護な人だった。

今では閉じられたドアから、一目散にベッドへ向かう。

もうそこには誰もいないのに。

整えられ、シワ一つないシーツを見下ろす。

「お母様、行ってまいります。お墓を訪ねるべきなのでしょうけれど、ここが一番お母様との思い出が殘っている場所だから……」

母親は病弱で、一日のほとんどをベッドで過ごした。

だから真新しい墓よりも馴染みのあるベッドのほうが、自分の言葉を屆けられる気がしたのだ。

「お母様が生きておられたら、きっと反対されたでしょうね。けれどこれはわたくしの意思でもあるの。だから心配しないでお眠りください」

母親にとって我が子が世界の中心だった。

婚姻についても婿を取ることしか頭になかったはずだ。

けれど父親の考えは違った。

自分も。

それでも母親が生きていれば、父親は彼の意思を尊重しただろう。

父親にとっては、母親が世界の中心だった。最後に枕をでて部屋を立ち去る。

(二度とこの部屋へることはないでしょうね)

パタンと閉じられたドアが、その答えのようだった。

見上げた空の水に、似たの瞳が脳裏を過る。

揺るぎない強さを宿した瞳は、殘酷な世界でしいとじられるものの一つだった。

いつだって思いだすのは優しい微笑み。

和に弧を描く碧眼が、閉ざされた世界にを與えてくれる。

この世は、弱強食だと教えてくれた人。それが殘酷さの答えだった。

強くなければ生き殘れない世界なのだ。

「大丈夫よ、わたくしは強いもの」

口に出して自分を鼓舞する。

たとえ相手がどれだけ強大でもやり遂げられると。真実を知ってから、より研鑽を積んだ。

もう言われたことだけに従う昔の自分とは違う。

顔を上げて、前を向いていられる。

「あなたの思い通りにはさせないわ」

決意をに、馬車へ乗り込むときも屋敷を振り返ることはなかった。

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