《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》03.悪役令嬢は予を覚える

「仮裝舞踏會だなんてはじめて聞きました」

元伯爵令嬢だったヘレンには一般的な舞踏會の経験がある。

仮面舞踏會なら耳にしたことはありますけど、と仮裝舞踏會については想像が追いつかないようだ。クラウディアは逆行前の娼婦時代に參加したことがあった。

「仮面をつけるか、仮裝するかの違いね。仮裝のほうが全をコーディネートするから大がかりなじかしら」

中にはのかぶりものをする人もいるくらいだ。

そういった人は顔で本人確認をするのが難しくなるため、仮裝舞踏會において參加者は主催者にどんな仮裝をするか事前に申告しておく必要があった。

「なるほど、だから他の舞踏會に比べて當日までの期間が長いんですね。肝心の主催者もまだ到著していませんし」

招待狀の送り主はパルテ王國のニアミリア・ベンディン。

有力家族の令嬢で歳はクラウディアの二つ上と近いが、面識はない。

パルテ王國からの使節団に令嬢が加わっているのは珍しいことだった。

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使節団は現在移中で、王都りにはまだ數日を要しそうだ。

「というか、のんびりしていられないのでは!?」

「軽裝なら準備に時間はかからないわよ」

「何をおっしゃいます、クラウディア様の仮裝ですよ! 明日にでも侍長にお聲がけして全會議をおこなわないとっ」

「いえ、あの、大がかりなものをするつもりはなくてよ?」

「だとしても中途半端なもので済ませられませんから! あぁ、でも香水の手配はし難しいかもしれません」

「マリリンのお店が通常営業に戻るのはまだ厳しいかしら」

娼婦時代は自分で調香をおこなっていたクラウディアだが、公爵令嬢である今は専門家にオーダーしていた。

マリリンは社界でも有名な調香師で、顧客の希を的確に葉える手腕から絶大な人気を誇っている。

そんな彼の店に春先、取りがった。店は荒らされ、金目のものはこそぎ盜まれたという。事件から數ヶ月経つが犯人は未だに捕まっていない。

「幸い、調香用の素材は無事だったらしいですけど、店の修繕に時間がかかっているようです」

調香ができても、気が休まらなければ萬全とは言い難い。

には繊細さが求められるだけに、今彼に依頼を出すのは気が引けた。

「最近は騒な話題が多いわね」

「娼館帰りに貴族が襲われた件もありますからね」

強盜殺人とされているこの事件も未解決のままだ。

「犯罪ギルドによる犯行という噂も流れていますけど、暗殺の依頼でもない限り彼らはきませんよね?」

「ええ、不用意に貴族とめ事を起こすのを避ける人たちだもの」

貴族から斷罪され、犯罪ギルドが一掃されるようなことになれば困るのは自分たちだ。

そもそも彼らは住む世界が違った。

貴族が彼らの縄張りに足を踏みれたならカモにされる可能はあるが、普通に生活していれば貴族と犯罪ギルドの接點はない。

娼館も國が管理するようになってからは、彼らの縄張りでなくなった。

また王都を縄張りとしている犯罪ギルドは、クラウディアことローズが率いる「ローズガーデン」だ。

もしこの件にローズガーデンが関わっているなら、真っ先に報がる。

実際の運用は元トップであるベゼルがおこなっているが、彼は自分たちのあり方が変わったことを理解し、ローズへの報告を怠らなかった。

「ローズガーデンの構員ではなく、他勢力の構員による犯行という可能は拭えないけれど」

この場合は、々話が複雑になってくる。

「他勢力の構員がいていた場合、完全な宣戦布告ですよね?」

「抗爭待ったなしだわ」

たとえ暗殺依頼があっても、それが他者の縄張りの場合はけない。

縄張りを荒らすことは流儀に反し、抗爭を仕掛けるのと同義だった。

「だからあまり犯罪ギルドの線は追われていないわね」

現場で捜査する警ら隊が、一番こういった事通している。

濡れを著せられては困るとローズガーデンからも一定の報が警ら隊へ渡っていた。

それでも噂が流れるのは、犯罪は全て犯罪ギルドによっておこなわれていると考える人たちがいるからだ。

「盜まれたものが売りに出された形跡もないのよね」

被害者はお金の他にも、指などの寶飾品も奪われていた。

換金できる場所は限られるため、そこから報が上がってきそうだがそれもない。

これはマリリンの店の事件にも言えることだった。

族のためにも、早く進展があることを祈るわ」

昨年の夏、アラカネル連合王國を訪問してから丸一年が過ぎた。

商館の運営も順調で、事務作業にも慣れてきたところだ。

けれど暗い話題が続き不安が鎌首をもたげる。

(この天気のせいかもしれないわね)

窓から見えるのは暗闇ばかりだが、ザーザーと雨音だけはしっかりと耳に屆く。

季節の変わり目に降る雨は、まだ止みそうになかった。

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