《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》04.悪役令嬢はパルテ王國の使節団を迎える

パルテ王國の使節団が王都りしたのに合わせて、王城では晝に歓迎パーティーが開かれることとなった。

ラウルやスラフィムといった王族を迎えるものよりは小規模だが、今回は有力家族の令嬢が同行しているため、クラウディアをはじめとする貴族令嬢の參加も多い。

おかげで使節団の場前にもかかわらず、あちらこちらで話の花が咲いていた。

いつもの面々に囲まれたクラウディアも例に洩れず。

ルイーゼが扇を軽く顎に當てながら小首を傾げると、長い金髪が肩からさらりと流れ落ちる。

「ご令嬢がお一人だけ使節団に同行するなんて珍しいですわね?」

「わたくしの知っている限りでは、はじめてのことだわ」

「オレの國でも使節団への同行者はなかったな」

「ハーランド王國にしろ、バーリ王國にしろ、使節団の目的は明確ですからね」

ラウルのあとにレステーアが続く。

みんなあえて口には出さないが、使節団の目的は傭兵の売り込みと防衛費の要求に盡きた。

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「以前、訓練を視察させてもらったが、隨行した騎士が引くレベルだったぞ」

「あれを職業軍人ではなく、國民全員がおこなっているんですから驚きです。武功が大陸中に広がるのも納得できますよ」

ラウルとレステーアはパルテ王國を訪問したことがあるという。

「オレは絶対、あの訓練には參加したくない」

「視察向けにいつにも増して厳しかった可能は否めませんけど、パルテ王國の人々を見れば鍛えているのは一目瞭然ですからね」

現に今までの使節団員もみな筋隆々で、そのまま戦場に現れても違和がなかった。

パルテ王國の最大の売りは「戦力」だ。

老若男問わず國民全員が戦士という特異な理念の下、戦場における士気の高さは他國の追隨を許さない。

戦場では誰もがパルテ王國の戦士と相対するのを忌避する。

パルテ王國は自國の強みを理解し、他國へ傭兵を派遣していた。

またパルテ王國から南西部には中小の國々が立しており紛爭が絶えなかった。

ハーランド王國にとっては、パルテ王國が紛爭の飛び火を防ぐ壁になっている形だ。

傭兵は必要なくとも、壁として機能しているのだから防衛費の一部を負擔してもらうのは道理だろう、と渉するのが使節団の目的である。

そこへ令嬢が加わる必要はないのだ。

クラウディアがルイーゼとお揃いの扇を揺らす。

空気が拡散され、ふわりとバラの香りが漂う。いつもに著けている香水は、マリリンの店で調香してもらっているクラウディアのお気にりだ。

「何か新しい提案があるのでしょうね」

「みなさん、その話題で持ちきりですの~!」

シャーロットがぴょこんとピンクの頭を弾ませて答える。

どうやら周辺の話し聲に耳を澄ませていたらしい。

ルイーゼも気になっているらしく、クラウディア同様に扇を揺らした。

「ベンディン家といえば、パルテ王國の有力家族の中でも上位に位置します。パルテ王族とも親しい間柄なのを考えれば、想像は膨らむばかりでしょうね」

「貴族階級でいえば、公爵に近い家柄だと聞きましたの~」

パルテ王國は近隣諸國でも珍しい、民主制國家だ。

政治の決議は國王と、國民から選ばれた議會員たちによる議會でおこなわれ、國王一人に決定権があるわけではない。

シャーロットの言葉にラウルが頷く。

「貴族制度がないと言っても議會員のほとんどは有力家族の者たちだ。歴史ある有力家族ほどその実態は貴族と大差ないからな」

「ラウル様は、ニアミリア様とご面識はないんですの~?」

クラウディアといれば必然的にラウルと過ごす時間も長くなるおかげか、一年前は萎していたシャーロットも今では普通に會話できた。

(分け隔てないラウル様のお人柄も大きいのでしょうね)

シルヴェスターを前にすると張してけなくなっても、ラウルになら話しかけられるという者は案外多い。下級貴族ほどそれが顕著だった。

「視察のときは別の令嬢に案けたから、ニアミリア嬢とはないな」

「ちなみに有力家族のご令嬢ともなると流石に訓練は優しくなるので、シャーロット嬢のご想像とは違うと思いますよ」

訓練が免除されるわけではないところにお國柄が出ているが。

使節団に同行している令嬢、ニアミリア・ベンディンの容姿も話題の的だった。

何せ、老若男問わず國民全員を戦士とうたう國だ。

令嬢も男と見紛うほど格が良いのではと誰もが一度は考えてしまう。

レステーアに思考を読まれたシャーロットは恥に頬を染めた。

「あはは、つい~」

「ぼくたちの知っているパルテ王國の方々はみんな逞しいですからね。そう考えてしまうのも頷けます」

隣國ではあるものの、國の規模からどうしてもバーリ王國やアラカネル連合王國へ流が片寄ってしまうのだった。

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