《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》07.悪役令嬢はわれる

パルテ王國の使節団を迎えるパーティーは予想外の展開で幕を閉じた。

それはシルヴェスターも同じで、急遽このあと二人で話す場が設けられた。

とはいえ、すぐにとはいかず準備のための待ち時間ができる。

クラウディアも帰宅が遅れる旨を屋敷へ連絡する必要があった。

使いを出し、ざわついたまま帰る參加者たちを通路から見送る。

「ルーとシャーロットも同席しなくてよろしいの?」

シルヴェスターから話を聞く権利は、婚約者候補の二人にもある。

「ご自分のことを一番にお考えになって。わたしたちも他人事ではありませんが、ディーほど渦中にいるわけではありませんから」

「そうですの、お姉様のお気持ちが大事ですの。あたしは機會があったらウェンディ様とお話ししてみたいと思いますの~」

シャーロットのロジャー伯爵家も、ウェンディと同じく貴族派だ。

クラウディアやルイーゼに比べて、約束を取り付けられる可能はあった。

「絶対に無理をしてはダメよ?」

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クラウディアのためであることは明白で、シャーロットに言い含める。

まで目を付けられるわけにはいかない。

「お姉様にご心配をおかけしない範囲で頑張りますの~!」

「もし立場が悪くなりそうだったら、わたしを頼りなさい」

シャーロットの獻に、ルイーゼも後援を申し出る。

良くも悪くも貴族社會では階級がを言った。

家の歴史や人脈においても、ルイーゼはウェンディと同格だ。

屬する派閥が違っても影響力は無視できない。

「といってもディーほど力にはなれないでしょうけど」

苦笑するルイーゼに、あら、と笑いかける。

「一人より二人、味方が多いに越したことはないのではなくて?」

シャーロットもすかさず同意する。

「その通りですの~! お姉様方がいれば何だってできる気がしますの」

屈託ない笑みを浮かべるシャーロットの頭をでれば、更に彼の表けた。

(二人に心配をかけないためにも気を確かに持ちましょう)

できることから一つずつ。

急いても何も解決しないのだから。

ルイーゼとシャーロットを見送ると、隣に立つ人影があった。

「シルヴェスターの選択肢が増えたんだ。クラウディアも増やしたらどうだ?」

「バーリ王國はいつでも歓迎、というか待ちんでいますからね」

ダークブラウンと青の髪が視界にる。

通路はになっているものの、まだ日が高いおかげで合いがよくわかった。

「お二人はまだお城に殘られますの?」

「シルヴェスターから直接話を聞けなくても報収集は必要だからな」

「こちらの外は事実確認に走り回っていますよ」

一部とはいえパルテ王國と隣接しているのはバーリ王國も一緒だ。

対岸の火事であっても靜観はしていられない。

ラウルとレステーアにとってもニアミリアの件が驚きだったのは、パーティー會場での反応を見ればわかる。

事前にレステーアから報告がなかったことも加味すれば、バーリ王國もこの件に関して知らなかったようだ。

「理由はまだわからないが、ニアミリア嬢の発言から、パルテ王國は本気でシルヴェスターの婚約者の座を狙っているみたいだな」

「でなければ、あのような言葉は出ませんものね」

お茶を濁すこともできたのに、ニアミリアははっきりと婚約者になるためだと明言した。

レステーアがどこか含みのある笑みを浮かべる。

「ニアミリア嬢にとっては悪意なく目的を表明できる良い機會になりましたね。ウェンディ嬢については口にするのも躊躇われますが」

どうやら、と仮定するまでもなく、レステーアはウェンディを敵認定したようだ。

クラウディアやシルヴェスターが前に立っていたのできを見せなかったが、今もなお怒りを抱いているらしく弧を描く碧眼に鋭さがある。

「自分から発信すれば角が立つが、あの狀況でなら仕方なくという面がつくれるからな」

「ニアミリア嬢もよく対応したものです。発言容をご自の意思に留めれば、誰も否定できませんから」

まだ公にされていないことを吹聴するのは心証が悪い。

あの場では參加者の好奇心が勝ってしまったが、ウェンディの暴は令嬢としてあるまじきものだ。その點、ニアミリアは上手く言葉を選んでいた。

(急にどうしてしまわれたのかしら)

ウェンディについては、それに盡きる。

クラウディアの知っているウェンディは、決して禮儀を失するような人ではなかった。

自然と視線が下がった先で影がく。

隣にいたラウルが移していた。クラウディアの目の前へ。

背の高い彼の表を窺うには顔を上げるしかない。

たまに糖度が上がるビターチョコレートの瞳は、靜けさを保ったままクラウディアを視界に収めていた。

「クラウディア」

ダンスへわれるかのように、指先を軽く引かれる。

腰を折り、手の甲へ口付ける様子は――振りだけだが――パーティー會場でよく見けられる景だ。

おふざけで通じる気さくさを殘しつつも、ラウルの瞳が気持ちを雄弁に語る。軽く頭を下げたからだろう、クセのある前髪が目にかかっていた。それでも向けられる熱意が薄らぐことはない。

逆に香を伴い、熱が上がっている気さえする。

「オレは本気だ。いつだってクラウディアをバーリ王國へ連れて帰りたいと思ってる」

シルヴェスター同様に、クラウディアにも選択肢があるのだとラウルは唱え続ける。

(優しい人)

無理強いせず、いつだってラウルは決定権を自分にくれる。

意思を尊重してくれることにが溫かくなった。

けれど答えは一つしかない。

「わたくしの心は決まっておりますわ」

「わかってるさ。ふとしたときに思いだしてくれたらいい。今回の件が、厄介事になるのは目に見えてるからな」

「いつだってぼくはクラウディア様の味方です」

ラウルの言葉をけて、レステーアが綺麗に笑う。

クラウディアへ向けられた笑みは、令嬢たちが見たら卒倒しそうなほどき通っていた。

「オレたちは、だろうが」

「ああ、ラウルもいましたね」

「拳で存在をわからせてやろうか?」

「くっ、主人の暴力に、ぼくは耐えるしかないんだ……!」

「マジで毆ってやりたい」

はじまった茶番に、ふふっと聲を出してクラウディアは笑う。

相変わらずレステーアは場の空気を軽くすることに長けていた。

(厄介事……ラウル様がおっしゃる通りでしょうね)

意味もなくパルテ王國が婚約者を擁立するわけがない。

使節団に令嬢が同行していた目的はわかったが、理由は何なのか。

こればかりはシルヴェスターから教えてもらうしかなかった。

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