《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》08.悪役令嬢は夕日に目を奪われる

使いの者に案されて、何度も訪れた応接室へる。

見慣れた景が広がっているはずなのに、ドアをくぐった瞬間、鮮やかなに目を奪われた。

(ニアミリア様を彷彿とさせるわね)

赤ともオレンジともつかない夕日が空を、室を染めていた。

眩しいというほどではないものの、赤の存在にしばし圧倒される。

部屋にいたシルヴェスターもクラウディアの視線を追い、束の間二人で空を眺めた。

「だいぶ待たせてしまったか」

「いいえ、他の方のお見送りをしていましたから、あまり待った覚はありませんわ」

促されてシルヴェスターの隣へ腰を下ろす。

部屋の様子がいつもとし違うのは、テーブルに地図が置かれているからだろうか。

簡単なものだけれど、ハーランド王國をはじめバーリ王國、パルテ王國、以下立している國々の位置がわかるようになっている。

話を整理するために用意されたらしかった。

シルヴェスターが紅茶を一口含んでから聲を発する。

「ウェンディ嬢にも言ったが、婚約者候補についてはまだ協議中で決定には至っていない」

だが、と続く言葉があった。

「概ね決定しているというのも事実だ。數日中には公式に発表されるだろう」

「何があったのです?」

ウェンディによる糾弾、そしてニアミリアの発言に揺しなかったといえば噓になる。

それでも先に狀況を把握したかった。

(わたくしの知らないところで何が起きているの)

テーブル上の地図を見て、落ち著こうと自分を律する。

ことは國だけの問題ではないのだ。

しかしそんなクラウディアに対し、シルヴェスターは眉を下げる。

いつになくわかりやすい表に自然と笑みがこぼれた。

「怒ってはいませんわ。シルは決定してからニアミリア様について話してくださるつもりだったのでしょう?」

シルヴェスターの膝に置かれた手に、自分の手を重ねる。

正式に決定するまでシルヴェスターが出來る限り抗おうとしてくれていたのを察したからだ。

でなければ話があった時點で、それとなくクラウディアにも伝えられていただろう。

シルヴェスターだけではない。議會には父親もいる。

簡単にはれられない話だからこそ、クラウディアにまで報が屆かなかったのだ。

逆にウェンディは賛派から報を得たとも言える。

(トーマス伯爵から聞いたのかしら)

もしくは彼の父親から。けれどその可能は低いように思えた。

現婚約者候補の家にとって、新しい婚約者候補の擁立は何の得にもならない。

「すっかり後手に回ってしまい面目ない」

「お気になさらないで。ウェンディ様というイレギュラーもございましたから」

の発言がなければ、ニアミリアも公言を控えていただろう。

最初から言うつもりなら、場時などニアミリアにとって適した場があった。

あの狀況だからこそ、彼は自分の意向を表明できたのだ。

シルヴェスターが自分を責める必要はどこにもない。大丈夫、わかっています、と伝えれば、黃金の瞳が切なげに細められた。

「ディアと接していると、たまに言葉に詰まりそうになる。に去來するを上手く言葉にできぬのだ」

視界で銀髪がを弾く。

次いで溫もりに包まれ、クラウディアも大きな背中へ手をばした。

「わたくしもを言葉で表せないときがありますわ」

そうか、と熱のこもった聲が耳朶をでる。

し低めの魅的な聲音に腰が浮きそうになった。

夕暮れ時、空のが移り変わる剎那に気持ちが寄せられているのだろうか。

(真面目な話をしているのだから反応しないの!)

焦りが勝り、若い我がに言い聞かせる。

心拍數が跳ねたのを気取られたくなくて、そっとシルヴェスターのを押して二人の間に空間を作った。

顔が赤くなっているのは夕日のせいにしたい。

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