《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》09.悪役令嬢は現狀を知る

シルヴェスターはに置かれた手を握り、クラウディアと額を合わす。

「ディアに謝を。いつも君の言葉、存在に私は救われている……いざ言葉にしてみると、どうしてもありきたりなものになってしまうな」

「十分ですわ」

「だがこれだと完全に気持ちを伝えられているとは思えぬのだ」

顔が近付き、互いの鼻頭が重なる。

口付けは軽く、が合わさる程度だった。

それでも離れ際に余韻を殘していく。

まだ息がれる距離。

「ディア、している」

「わたくしもしていますわ、シル」

次いで握られた手にキスを落とされた。

上目遣いで濡れた黃金の瞳を向けられてドキリとする。

――濃厚な香りに包まれていた。

今更ながらに香りが空間を彩ることを思い知らされる。

クラウディア、シルヴェスター、それぞれの芳香が混ざり、満ちる。

日のは遠ざかり、夜の帳が下りていた。

また手にキスが落とされる。

指、そして甲へ。

目が伏せられて黃金の瞳が隠されても、銀の睫が思いをこぼす。

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薄暗い中でもはっきりと見て取れるシルヴェスターの滴るようなしさに頭がクラクラした。

丁寧な口付けが伴う熱に煽られる。

強く求められないのは、時間が有限だからだろう。その分、否も言えず、の芯に火が燈り続ける。

靜寂が続く中、吐息をらしたのはどちらだったか。

手が解放されたのを機に、クラウディアはを潤した。

シルヴェスターも仕切り直すように紅茶を飲む。

ついティーカップに付けられたへ目が行ってしまい、慌てて視線を逸らした。

「ウェンディ嬢のことも気になるが、まずはパルテ王國についてだな」

「はい、どうして今になって婚約者候補が増えることになったのでしょう?」

勢によっては他國の令嬢が婚約者候補にることもあるが、今代では自國の令嬢に対象が絞られていた。

比較的、世界勢が安定している間に、國制を盤石にしようと考えられたからだ。

「パルテ王國にて、我が國に対する敵対が高まっている。一即発と言えるほどにだ」

「まさか……」

即発、それは戦爭も視野にっているということだった。あまりの事態に続く言葉が出てこない。

ハーランド王國とパルテ王國は長年友好関係を築いている。

この突然の敵意にはシルヴェスターも苦心しているらしく、珍しく眉にシワが寄っていた。

「私もまだ信じられない。予兆はあったが、あくまで予兆に過ぎない程度だった。こうも事態が急変するとは……民主制の落としを學ばせてもらった気分だ」

君主制であるハーランド王國では、國王が決定権を持つ。

だからどれだけ國民が昂ぶろうが待ったをかけられた。

もっといえば、その間にいる貴族が先に統制をおこなうので、いきなり國民発するようなことはない。

が起きたところで、基本的に各領地でことは治まるからだ。

けれど民主制であるパルテ王國では事が異なる。

國民から選出された議會員に比べ、國王の意向は優遇されるものの決定権はない。

有力家族が貴族と同じ働きを擔っていても、法で定められている貴族制とは違う。もし私兵をかして國民を統制しようとすれば、越権行為として有力家族のほうが罰せられた。

「パルテ國王をもってしても、國民を抑えることができませんの?」

「その段階にまで至ったようだ。ニアミリア嬢の同行が、事態の合を表している。ここまで的にパルテ王國がくのは想定外だ」

パルテ王國民の不満の種は、パルテ王國がハーランド王國と紛爭地帯の壁になっていることにあった。実際、南西部に位置する辺境伯は、今や名前だけの存在になりつつある。

いくら防衛費をあてがわれていても、戦い、を流すのはパルテ王國民だけだ。

これではハーランド王國の屬國と変わらないじゃないか、というのが國民の訴えだった。

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