《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》29.悪役令嬢は不安に駆られる
部屋のプレートに武庫と書かれているのを見る限り貯蔵施設のようだ。
(規模から推測して砦ごとに設置されているようね)
案された部屋の広さは、二人掛けのソファーと小さなテーブルが置けるぐらいで窮屈極まりない。等間隔に口があったので他も同程度だろう。
室は薄暗く、照明は壁にかけられたロウソクだけだ。テーブルの上に飾られた花が唯一の癒やしだった。
「元は別の用途で使われていた部屋だったんだけどね、この區畫の裝は全てパーティー用に設え直したんだ」
「もう砦としては使われないんですか?」
クラウディアを代弁してレステーアが訊ねる。
「有事の際には使うだろうね。といっても、そんなときは來ないってクラウディアもわかってるだろう?」
殊更甘く名前を呼ばれて鳥が立つ。
だけどドレスティンの発言は無視できるものではなかった。
(ブライアンは、サスリール辺境伯が戦爭の準備をしていないとみたけれど當たっていたようね)
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しかもそのことは偽クラウディアも知っている。
「ここに來ると、あの夜のことが思いだされるよ。何度反芻したことか。小さなホクロの位置だって言い當てられるほどだ。あぁ、ボクにこんなことさせるのはキミだけだよ」
ソファーにクラウディアを座らせるなり、ドレスティンは床へ両膝を突いた。
そして背中を丸めて、波打つ髪をクラウディアのくるぶしにり付ける。
まるで飼い主のを求めるように。
(偽クラウディアはご主人様だったってこと?)
パーティー會場で王様を気取っていたぐらいだ、そういうプレイもよく知っている。
試しにヒールで太ももを踏みつけると、痛いはずなのにドレスティンは愉悅の表を浮かべた。
事の楽しみ方は人それぞれだというのに、レステーアは視線で彼を殺さんばかりである。にもかかわらず平靜を裝った聲を出せるのは流石としか言いようがない。
「申し訳ありませんが、先ほども申した通り今夜は時間がありません。危険を冒してここにいるのは、ドレスティン様もおわかりになるかと」
そこではじめてドレスティンが口を歪める。
苦蟲をかみつぶしたような顔で発せられる聲は怨恨に満ちていた。
「そうか、橫暴なシルヴェスターがまたキミを縛り付けているんだね? ああ、ヤツが視察に來ていることはボクも知っているさ」
「ドレスティン様の顔を見て、癒やされたかった次第です」
レステーアの言葉に合わせ、クラウディアは緑の頭をでる。もっと彼には口が軽くなってもらわなければいけない。
でられた悅びを隠そうともせず、ドレスティンは頭をクラウディアの膝へ預けた。
クラウディアの白い指が髪を梳くごとに、茶い瞳がけていく。
纏う空気と共に、ドレスティンの口調が変わった。
「もうすぐ、もうすぐです、ご主人様。ニアミリア嬢がヤツの婚約者になれば、ご主人様は解放されます」
「けれど、どうしても不安が拭えません」
「ご安心ください。ベンディン家とご主人様が手を組めば、必ずやし遂げられます。父上も乗り気です。ボクと結ばれる日も、そう遠くありません。あぁ、待ちきれないな」
堪らず、といった様子で太ももへばされた手を扇で叩く。それでもドレスティンは嬉しそうだ。
「どうやらボクは至らない犬のようです。だからもっと……」
「時間です」
これ以上は相手を調子づかせる。
クラウディアが視線で訴えれば、即座にレステーアはいてくれた。
「えっ、もう?」
「楽しい時間は過ぎるのが早いものです。今夜はこれにて失禮いたします」
ドレスティンを部屋に殘し、足早にレステーアと來た道を戻る。
一刻も早くこの場から離れたかった。
「思わぬ収穫が大きすぎて、頭が混しそうだわ」
「帰ったらまずは湯浴みですね。先に帰ることをブライアンへ言付けましょう」
會場へ戻るなりウェイターを捕まえる。
ドレスティンがいる以上、クラウディアは留まれない。だがおかげで引き留める聲も無視できた。
優な時間が流れる會場から最初に通った廊下へ出る。
違和を覚えたのは、人気のない廊下を數歩進んだときだった。
付時間が過ぎたからか、廊下には誰もいない。焚かれたかがり火だけがゆらゆらと揺れている。
背後にはレステーアがいるだけだ。
そのはずなのに。
(いつからレステーアは黙ったのかしら)
パーティー會場へ戻っても、クラウディアは口を噤んだままだった。
寄って來る招待客をあしらっていたのはレステーアだ。
會場を橫斷している最中は聲が聞こえていたように思う。それがいつしか止んでいた。
クラウディア同様、無視することにしたのかもしれない。
だとしても。
背後にある気配が変わったようにじられる理由にはならなかった。
冷たいものが背筋を伝う。
ドレスティンとのことで神経質になっているだけだと思いたい。
クラウディアの異変に気付いたのか、気配がすぐ後ろへ移する。
扇を握る手にぎゅっと力がった。
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