《獻遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな人ごっこ~》「どうしてほしいのかちゃんと言って」2

仕事中も心なしか気持ちが晴れやかだった。

上司にメールを送るときも、総務システムの力をしるときでも、手もとが弾む。

今日のお晝番の里見さんを殘し、私はひとりで社員食堂へ向かった。

二階の奧にある社員食堂はいくつかの定食が注文でき、持參したお弁當もここで食べてよいことになっている。

社外への訪問が多い営業部は外へ食べに行く人が多いが、基本的に社にいる人は代でここで晝食をとる。

いつもの場所、連なる長テーブルの一番端っこに座った。

アスパラのベーコン巻きやきんぴらごぼう、冷凍のおかずがったお弁當を広げ、ひょいひょいと端でつまむ。

「あ、日野さん。おひとりですかぁ?」

無心で食べていたら急に視界に西野さんがってきたため、私は「んっ」ときんぴらをに詰まらせた。

「……西野さん、松島さん。お疲れさまです」

笑顔を作って挨拶してみたものの、彼たちとどう関わればいいのか今もよくわからない。

私を都合よく利用していたのだと知ってしまったし、向こうも合コンの一件からさらに私をよく思っていないだろうし。

清澄くんの機転で完全に亀裂がることは避けられたけど、彼と付き合い始めたと知ったら、さらに大変なことになりそうだ。

西野さんたちはなぜか私の対面に座り、自分たちのサンドイッチやサラダパスタを広げる。

「日野さん、殘念でしたね。穂高さんのこと」

ふっくらしたを歪ませながら、西野さんが言った。

松島さんも隣でクスクスと笑う。

「……え?」

「だから穂高さん、いなくなっちゃうじゃないですか」

いなくなっちゃう?

「あれ?  やだー!  知らないんですか?  てっきり日野さん仲良しだから教えてもらってると思ったんですけど」

「穂高さん、異するってさっきうちの社長に挨拶に來てたんですよ。お茶出した広報部の社員が聞いたらしくて」

「東京ABC銀行は全國にあるから、どこに行っちゃうんでしょうねぇ。大出世だって社長が言ってたみたいで、海外行くかもって噂ですよ」

……そんなの知らない。

清澄くん、なにも言ってなかった。

「ふふっ」

「やだぁ、日野さん」

ふいに、ふたりが目の前で口に手を當てて笑いだしたため、私は顔を上げた。

なんでそんなに笑ってるの……?

「なんですかその顔。日野さんショックけすぎですって」

「アハハ、まさかやっぱり期待しちゃってたんですか?  自分だけが穂高さんに気にかけてもらえてたって」

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