《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第88話 「絆」Ⅰ①

※無事第1部完結までPC力しました。書き溜めが80話(11/21時點)になってしまったので、投稿頻度上げます。

「お~い千晴! 死ぬぞやめとけ!」

DMTの整備デッキに響く七道の聲。

「え~~。大丈夫っすよ。電源理的に切ってあるんで~」

答えるのは網代千春だ。ゲピューラと呼ばれる整備橋からを乗り出している。

「だめだ。刺突剣(サイフォス)には生で近づくな。誤作したら風圧で片になる」

「‥‥‥‥。ちーちゃん。師匠の言う通りだよ」

上の階層から、多賀柚月も聲をかけた。何やら換気の準備をしている。

網代が整備しているのは、サイフォスと呼ばれる刺突剣だ。特殊な形狀をしている。

ソフトクリームの様に刀が渦巻狀にねじ込まれながら畳まれていて、荷電すると一瞬で直線狀に変形する。その攻撃距離は50m、一種の形狀記憶合金だ。

初島羽や來宮櫻ら、「フェンシング勢」が使うDMT用刺突剣だが、七道の言う通り変形時の風圧だけで生の人間など吹っ飛ばせる。

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「ダメだって。落雷の磁界で誤作すんだ。お前死んだら私らが困る。16人ギリで回してんだからな、この艦。あと彼ピになんて言やあいいんだ?」

「あ~~。アイツの話はダルいんでやめましょ~。わかりましたよ~」

すごすごと引き返す網代。

「‥‥‥‥。でも師匠。結局その16人で回せちゃってますね。その艦。実戦もしてるし」

上層から降りてきた多賀が七道を追いかける。

「ま~な。『ひとりの男子と子15人。全員中學生でもバッチリこの艦戦えます。カカッテコイヤオラァ!!』っていう海軍と広報部の思どおりだ」

「‥‥‥‥。折越さんとかも、何だかんだで舵持ったり他の人のフォローしてるし。有能」

「ま~な」

「あ~。ナゾなのは紅葉ヶ丘さんだ~。ラポルト最後の謎。食堂でも風呂でも會わない。バーチャル説~」

網代も合流して、3人でデッキ出口に並んだ。七道がふたりに指示を飛ばす。

「演習も無事終わり。今夜は『重合修復祭り』だ。柚月、換気とガスは?」

「‥‥‥‥。オッケーです」

「千晴、告知メールした?」

「今、アノ・テリアに3回目を~」

「よっし。じゃあ、デッキのカギを」

七道璃湖は、指差し確認すると、DMTデッキのロックを3重にかけて、重厚な金屬扉をゆっくりと閉めた。

*****

「ふ~ん。暖斗(はると)くんは今まで大きな病気や怪我はないのね~」

「そだね。特に特徴のない人生だよ」

「保険証の既往歴は醫師権限で見れちゃうんだけどね、わたし。ふふ」

夕方の演習が終わって、日沒に合わせて撤収した。今は夏で日が長いから、醫務室にった時刻は19時を過ぎていて。

ぞうさんマグでミルクを飲む傍らで、依は僕の保険証をチェックしていた。

「でもさ、どうせ窓口でタダなんだから、病気になったほうが得のような気もするね」

「‥‥‥‥!」

この僕の発言で、醫務室の空気が変わる。ちょっとだけ。

「‥‥‥‥暖斗くん。ちょっと一言いい?」

依は パタン、と眼前のノートパソコンを閉じる。

「『醫療人』として言わせてもらうわ。『窓口ではタダ』って、絋國國民皆保険制度、の窓口負擔金、の事よね?」

「う、うん」

――――何を何のために訊かれてるのかは不明。だけど、僕がなにか地雷を踏んだのは確かなようだ。

「――典型的な絋國男子の認識よ。確かに治療費が発生しても、男子の窓口負擔のお金はゼロ。満20歳まではね。では問題です。子はいくらでしょう?」

依は右手の人差し指を立て、ちょっと真面目なをしている。

「えっ、え~と。タダじゃあないんだね?」

「そうよ。子の窓口負擔金は4割。30,000円の醫療サービスをけたとすると、窓口では12,000円払うことになるわ。でも男子は0円」

「えっ? そんなに?」

「そうよ。國が男子を厚遇する、ってこういう事なの。あ、ちなみに今は『子化対策特別法』の施行期間中で、男とも就學(若しくは満6歳)までは0割よ」

「‥‥‥‥な、なんか申し訳ない。知らなかったし」

「いいえ。知っていただければそれで」

「それじゃあ、依とかうっかり病気も怪我もできないな‥‥」

「そうよ。『子は病院に來るな!』って言われてる気分よ」

正直、絋國の重婚制度では、4人のお嫁さん全員が旦那さんの稼ぎを等分できるかわからない。男子をもうけるかで不均等や格差が出たりする。

「ただでさえ、お金が行きにくい子にそんな制度が‥‥。親も異母姉(ねえ)さんも文句言ったりしないなあ」

「言ってももうしょうがないのよ。子も無料にしたら國のお金が無くなっちゃうでしょ? あ、キャミ買ってくれた時、『外稅か。30%か』って言ってたじゃない?」

「聞いてたんだ」

「うん。ふふ。聞こえちゃった。その消費稅30%の、20%が社會保障費で、重複婚姻手當、出産手當、児手當、寡婦手當に充てられてるよ。何だかんだで、ウチみたいなお父さんがあまり來ない家にも、配慮はされてるのよ」

「出た。超記憶」

「これは普通よ。テストに出るよ暖斗くん」

依の表らかかった。ふたりで笑いあった。

そして、やはり、男異比率出生の現実は厳しかった。

*****

「‥‥暖斗くんお風呂は‥‥」

「演習前にっといたよ」

「‥‥‥‥そう。じゃあわたし、夕食とお風呂行ってきてもいいかな?」

さっきの保険制度と消費稅のやり取りから程なくして。

依からこんな提案があった。

もう、覚でじる。僕らはケンカとかはしない。よっぽどの事が起こらないと。

ミルクを規定量飲み終えたので、まぶたが重くなってきた所だ。

「‥‥‥‥じゃあ、先に寢てて。その後わたしもベッドにるから。髪のちゃんと乾かすからね」

はもう。「治験」という言葉さえ使わなかった。

僕は、依の言った「國民皆保険」を思い出していた。男子がないから、手厚くなる。それは、止むを得ない気がする。

だけど、「子の生命」ってその分軽く扱われてないか? そういう國? 僕の住む國は? ‥‥‥‥このままで、いいんだろうか‥‥‥‥。

依を待ちながら、そんな事を考えて。

僕はまどろんでいった。

ピ~ロリ ピ~ロリ! ピ~ロリ ピ~ロリ!

「‥‥‥‥」

ピ~ロリ!! ピ~ロリ!! ピ~~~~~~~~!!!

むにゃ。なんだ? この音?

バッ!!!

僕の傍らの上掛けが跳ね上がって、白いカタマリが足で走り去った。

なに? どうしたの?

えっと。

‥‥‥‥あ、ここはいつもの「授室」。ベッドの上。寢てて、「治験」やってて。

そうだ。

飛び出してったのは添い寢中の依か。

もう朝か‥‥‥‥いや、違う。‥‥今何時だ?

え? あの著信音、依の軍用スマホか。‥‥‥‥あっ!?

午前2時37分!!??

‥‥‥‥何が起こってんだ? 夜中じゃん。

※「この小説相変わらず子に容赦ないな。可哀想だ。稅率とか、そういうの數字にされるとキツイな」と思ったそこのアナタ!!

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