《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》鰻を喰おう!

セイントから電話が來た。

トラと久し振りに會って食事をした一週間後だ。

あの時はまた楽しかった。

「おう、セイントか! どうした?」

「ああ、こないだトラがさ、鰻をお前に喰わせろって言ってたじゃん」

「お、おお!」

「トラがさ、すぐに探してくれたらしんだよ。それで俺に連れてってやれって」

「ほんとかよ!」

「明後日の夜って空いてっか?」

「ああ! 大丈夫だ。何ああってもキャンセルするぜ!」

「おい、たかが鰻だぞ」

「冗談じゃねぇ! トラが俺のために探してくれたんだろう!」

「まあ、そうだけどな。じゃあ、明後日の6時にお前の屋敷に行くからよ」

「おお! 待ってるぜ!」

「うちのアンジーと聖雅も連れてく。トラがマリアたちもってやれってさ」

「え!」

一瞬躊躇った。

マリアや子どもたちはほどんど一緒に外へ連れ歩かない。

俺の店で、トラやセイントが一緒の場合は別だ。

あいつらの戦闘力は、何があってもマリアたちを守ってくれる。

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しかし、それでも相當の決意で呼んでいる。

「わ、分かった! じゃあマリアたちも一緒に行くぜ!」

「じゃあ、全部で、えーと……」

「7人だ!」

「あんだよ! 今俺がそう言っただろう!」

「あ、ああ」

「じゃあ、俺が予約しとくからな!」

「おう! 頼むぜ!」

相変わらずキレやすい奴だ。

しかし、なんであいつは金勘定だけは異常に早くて正確なんだろうか。

前にあいつの計算が子ども並みだと言ったら、副のスージーが、「未払いの契約金や小切手の額と期日は全部頭にってる」と言ってた。

ほんとかよ。

トラと違ってよく分からねぇ奴なので、護衛はこっちでも十分に揃えておこう。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

「オーナー! 7名様のご予約いただきましたー!」

「おお、そうかぁ!」

「それで、會席メニューなんですけど、3名分は二重天井にしてほしいと」

「ほお、通の人かぁ」

「白焼きは出來るかって」

「分かった! 作ろう!」

オーナーの吉川は喜んだ。

アメリカ人に鰻がどう思われるかと思ったが、順調に二年目にっている。

徐々に固定客も増えてきた。

それでも、鰻を本當に知っている客はほとんどいない。

「日本語でしたよ! こっちで會社を持ってる人なんですって」

「へぇ、なんて會社だ?」

「セイントPMCっていう會社らしいですよ。まだお若いようでした。40代ですかね」

「そりゃ大したものだなぁ」

吉川は興味をもって調べさせた。

英語の得意でない自分たちだから、ネットの検索も苦労する。

「出て來ませんねぇ。でも、なんか人材派遣? そんな會社みたいですよ?」

「そうか。まあいいや! じゃあ、一杯おもてなししよう!」

「はい!」

吉川は嬉しくなって、二重天井が余裕でる重箱を探して買った。

予約の當日。

予約時間の10分前に黒塗りの高級車が8臺ほど店の前に停まった。

何事かと吉川と出迎えの店員が外へ出た。

「店の中を検める」

屈強な黒スーツの男がそう言って店の中へった。

続いて車から10名の同じ黒スーツの男たちがって來る、

他に4人が店の前に立ち、周囲を見ていた。

「な、なんですか!」

「うちのボスがもうじき來る。念のためだ」

「だから、どうして!」

最初にって來た屈強な男が脇に吊るした銃を見せた。

「セイントが手配したから安全だとは思う。だが、今日は特別な方々も來る。しばらく大人しくしてくれ」

「は、はい!」

予約のカウンター席を丹念に調べ、金屬探知機まで使って店の中をすべて調べられた。

「あれ、ロダーリじゃん。何やってんの?」

「セイントさん!」

黒服たちが全員直立して、店にって來た男に向いた。

「セイントさん、念のために調べてました」

「あぁ? 必要ねぇよ! 俺が來んのに、何か出來るわけねぇだろう!」

「すいません!」

「すぐに出てけよ! 店の人に迷だろうがぁ!」

「はい!」

黒服たちはすぐにいなくなった。

「悪かったね。予約したセイントだ」

「は、はい!」

この人ら、大丈夫だろうか……

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

「子どもがいるんだ。頼んでた椅子を!」

座面の高いスツールが置かれた。

これで聖雅も一緒に座れる。

聖雅は黒を基調とした家の中を見ている。

香ばしい香りがする。

アンジーと俺が、聖雅の両脇に座った。

5分もすると、ジャンニーニがマリアと子どもたちを連れてって來た。

えーと、子どもの名前、なんだっけ。

「よう!」

「セイント! 來たぜ!」

「おう、お前んとこのロダーリがさっき店の中を嗅ぎ回ってやがってよ」

「ああ、悪かった。マリアたちを連れて來るんで、念のためにな」

「まったくよ!」

マリアと子どもたちが挨拶してきた。

名前を名乗らねぇ。

まあ、聞いても忘れるかもだけど。

広いカウンター席だった。

最初に鰻の切りを見せられた。

興味ねぇ。

でもジャンニーニが興味深そうに見ていた。

お前、分かんのかよ?

「おい、セイント。ウナギってどんな料理なんだ?」

「あ、知らねぇ」

「なんだよ! 日本の有名な料理なんだろうが!」

「俺、喰ったことねぇんだ」

「なんだぁ?」

「うちってさ、洋食ばっかでさ。俺も洋食が好きだからな。和食ってどうもなぁ」

「なんだよ!」

俺たちの遣り取りを聞いてか、店の人間がジャンニーニに説明した。

へぇ。

「冷凍にするとどうしても味が落ちちゃうんでね、うちは冷凍しないで空輸で運んでるんでさぁ」

ジャンニーニがしていた。

目の前で捌いていく。

やけに待たされる。

「なあ、まだ?」

「すみません! 鰻って行程が多くてどうしてもお時間が。お酒でもいかがですか?」

日本酒を勧められた。

ジャンニーニもそれでいいと言う。

サービスで豆腐が出た。

豆腐も久しぶりだ。

ジャンニーニやマリアたちが喜んで食べた。

俺も聖雅に喰わせてやる。

俺をニコニコ見て喜んだ。

頭をでてやる。

アンジーがやけに豆腐を気にった。

「こっちでもスーパーで買えるみたいですよ?」

「そうなんだ!」

アンジーが喜んだ。

やっと鰻が出た。

俺とジャンニーニ、マリオが二重天井だ。

一口口にれて、味いと思った。

やっぱ、トラの勧めてくれるものは味い。

アンジーも気にったようだ。

聖雅も嬉しそうに食べた。

「ウォォー! なんだ、この味さはぁ!」

ジャンニーニがんだ。

相當気にったらしい。

「おい! セイント! これは最高だな!」

「そうかよ」

「ありがとうな! ああ、トラにもな!」

「ああ、言っとくよ」

「こんなに味いを喰われたら、トラも怒って當然だな!」

「ワハハハハハ!」

マリアや子どもたちも気にったようで、どんどん食べた。

「世の中にこんなに味いものがあったとはなぁ!」

ジャンニーニがあまりにも喜ぶので、店の人も嬉しそうだった。

「旦那さんは鰻は初めてで?」

「そうだよ! 気にったよ! これからも來るからな!」

「はい! 是非よろしく!」

白焼きが出て、ワサビ醤油で食べた。

こっちもやはり味い。

「セイント! これも味いな!!」

「そうか」

「さっきのライスの方が味かったけどな! これも外せねぇな!」

「良かったな」

「ああ!」

店の人がまた喜んで、ジャンニーニに話しかけた。

「旦那さんはどういうお仕事で?」

「あ、ああ」

ジャンニーニが口ごもってる。

「ジャンニーニ・ファミリーのドンだよ」

「へ?」

「全米最大のマフィアだ。覚えといた方がいいぜ」

俺が説明してやった。

「は、はいぃ!」

それから店の人は一言も口を利かなかった。

最後の抹茶のアイスまで、ジャンニーニはずっと喜んで喰っていた。

ジャンニーニの娘が俺に聞いて來た。

「トラはいつ來るんですかね?」

「あ? 知らねぇ」

ジャンニーニが、「俺が呼べばすぐに來る」とか言ってた。

そんなわけねぇだろう。

まあ、そうかもしれないけどな。

トラはジャンニーニが困ってるって聞けば飛んで來るだろう。

その前に俺が何とかするけどな。

俺が支払いをしていると、さっきの店の人が俺に小聲で聞いて來た。

「あの、お客様もマフィアの方で?」

「あ? 違うよ」

「良かった! 人材派遣の會社なんですよね?」

「え? あ、ああ。傭兵の派遣會社だよ。何か困ったら連絡してくれ」

「は、はい!」

味かったので、またマリアと聖雅を連れて行った。

店の人が、ジャンニーニがよく來るのだと言った。

「うちの鰻を喜んで下さるのはいいんですけどね。毎回黒服の人が來て」

「ワハハハハハハ!」

マリアたちを連れて來ているのか。

あいつは自分だけなら何もしねぇ。

マフィアはビビったら終わりだと言っている。

トラに話したら、大笑いしていた。

「まあ、お前も気に掛けてやってくれよ」

「ああ、分かったよ」

トラが言うんならしょうがない。

まあ、俺もジャンニーニが大好きだしな。

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