《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第88話 「絆」Ⅰ③

※無事第1部完結までPC力しました。書き溜めが80話(11/21時點)になってしまったので、投稿頻度上げます。

「だめ!!」

倒れた紅葉ヶ丘さんに近づかず、皆を靜止した、依。

「お願い! 來ないで!!」

その紅葉ヶ丘さんに、一番近かった、依。

DMTデッキから大量の窒素が洩れてきて、通路の酸素濃度を薄めている。

見えないからこそ怖い。危ない。

に負けて紅葉ヶ丘さんに近づけば、二次、三次の事故になっていた。

あの瞬間、あの場所は、空気の濃度によっては、全員死んでたかもしれなかったんだ

「來ないでぇぇ!!」

みんなを睨みつけ、両手を広げて靜止をした、あの姿がリフレインする。

自分が中間地點に立つ事で、みんなを制止し、仮にガスが來ても犠牲は自分ひとりで済む。

そして、デッキの解放と紅葉ヶ丘さんがこちらに押し出されれば、真っ先に駆けつける事ができる。

あの、「ピ~ロリ!」っていう著信音は、依の軍用スマホから。

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「わたし、醫師権限でみんなの位置報とバイタル把握してるからね? 隠れて変なコトしちゃダメよ?」

旅の最初に、君は言っていた。

僕は正直、「監視されてるみたいでヤだなあ。僕だって人のいない所で脈拍が上がる事だってあるのに」 そう思ってた。

でも、依のスマホは、みんなの命を預かるスマホだった。

さっき、「治験」で僕との添い寢中。

「ピ~ロリ!」のアラームで目が覚めた依。急事態のアラーム音。

醫務室を飛び出しながら。

スマホで狀況把握。紅葉ヶ丘澪。意識喪失。呼吸異常。1Fデッキのドア前。

そこから、とっさにアノ・テリアの「艦子♡グループ」に非常事態メール。

渚さんに発進口を。

麻妃にKRMを。

浜さんにベッドを指示。 他にも指示してたかも。

災害現場って、「誰か」に110番通報お願いしてもダメなんだって。「え? 俺?」って顔を見合わせるだけで。「あなたコレやって。あなたはわたしを手伝って」ってじで指示を出さないと、あっけに取られた人は戦力にできないんだって。

そして現場に著いてからも冷靜だった。

倒れた紅葉ヶ丘さんを発見して、冷徹な「近づかない」判斷。

と、同時に、集まってくるみんなも遠ざけるようにする。を張って。

そして、狀況が好転したら紅葉ヶ丘さんに駆け寄る。

の命をかけて。

――――ヤバい。涙が出てきた。

君はどれだけ、どれだけ重荷を負ってたの? みんなの生命を守る者として。

僕はあの時、白いキャミソールで両手を広げる君を見て、「綺麗だ」と思ってしまった。

でもそうだよ。綺麗なはずだ。しいはずなんだ。

あの時の君は、あの姿は。

生命を護る者の、壯絶な覚悟の輝き、そのものだったのだから。

*****

「あ、紅葉ヶ丘さんの顔(がんしょく)戻ってきたわ。ネクローゼの兆候も消えてきてる。明日、検査ね」

パソコンに診療予約をれる依。

さんは紅葉ヶ丘さんのそばを離れようとしなかった。

莉が倒れる事を見越して、私は無理やりでもを休ませるわ」

そう言って、渚さんは部屋に戻っていった。

「‥‥‥‥逢初さん、手伝う事は何でも言って下さい。でも、取りあえずそれがないなら、みんなちゃんと休んだ方がいいです」

仲谷さんのこのひと言で、後ろ髪を引かれつつも、みんな部屋に戻っていった。

「‥‥‥‥子さん」

依は、紅葉ヶ丘さんのとなりにベッドを用意して、彼にも休むよう促した。子さんは無言だった。

「さあ、わたしたちも。『治験』の続きを。ね?」

依に促がされ、ふたりで「授室」へと戻った。

「ああ、そうだった」

依は、桃山さんに借りたカーディガンをいだ。またあの白いキャミソール姿だ。

「‥‥僕が買ったのがあるじゃん?」」

思わず訊いてしまった。

「あるよ? でもこれだってまだ著れるし」

持ち良すぎだよ」

「‥‥だって。あれは私服で待ち合わせた時とかにおろしたいし」

‥‥‥‥そんな事言われたら、白キャミにこれ以上ツッコめないよ。

それから、いつもみたいに「治験」となった。

でも、あれ?

依。僕もう、まあまあけるんだけど、『治験』する意味ある?」

「‥‥あるよ」

「でも、僕がけちゃうんだったら、『添い寢』はよくない、って基本ルールじゃ?」

真面目か! と言われそうだけど、厳にはそうだった。僕がMK後癥でけない。

つまり間違いが起こりにくいから、中學生が「添い寢」できるんだよ。それが大義名分だ。

まあ、今までの経過を見るかぎり、その辺かなりグダグダなんだけどね。

「‥‥‥‥今日は、わたしの『不眠癥対策』ということで」

そう依は言った。

「暖斗くんは全部わかってて、わざとそう言ってるんでしょう?」

そう。君の言う通りだ。

「‥‥‥‥今からじゃあ、とても眠れなさそうなんだよね。わたしが」

僕は、橫たわったまま依の方を向いた。腕まくらした右手のひらは背中に、左手は依の手に重ねる。

「‥‥目を離しても大丈夫だよね? 紅葉ヶ丘さん、目を覚ますよね? わたし、今のに休憩した方がいいよね?」

僕には答えられない。それほど、依の負った責任は重い。

「今日の依はすごかった。あんなに的確にけるなんて」

「もう、病院のバイト1年やってるでしょ? AEDの研修はもちろん、癥例が2回くらいあったんだよ。大きな事故があって、病院にわあって救急車が殺到するの。わたしも駆り出されて、輸パック運ぶとか。人がいなくてERの雑務とか」

「それって、いわゆる修羅場か。ドラマみたいな」

「うん。目を回したよ。でもだんだん慣れて。だから今日もとっさにいた、けたとは思う」

僕は、今日ほど依を尊敬した事はない。

「なんだか、今日はいつにも増して手があったかいよ」

「そうだよ。だって、今日の依は本當に凄かったから」

――――予想通り。僕の『右手』に『それ』は伝わってきた。

「‥‥‥‥何だか‥‥今頃になって‥‥‥‥‥‥震えてきちゃった」

やっぱり。こんな事があって、平気なはずは無い。僕がふれる依の背中と手は、かすかに震え出している。

でも、もう変わらない、って事がひとつ。依は、技や経験は置いといても、心は立派な「醫療人」、だって事。なくとも僕は、そう思い続ける。

僕の腕の中の君は、僕が尊敬する人だ。

「大丈夫。今はゆっくり休もう。無理に眠らなくていいから」

今からは「僕が介(たす)ける番」だって事だね。この艦に乗って初めての攻守逆転だ。「ほ瓶でミルクでも飲めば? 落ち著くよ」とでも言ってみようかな。

この戦艦を、みんなを守ってくれて、ありがとう。

※「尊敬しあうふたり」それを書くために60萬文字も使ってしまいました。

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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