《たった一つの願いを葉えるために》摑めない全容

テルは、報の整理と気掛かりなことがあるため、平民街の商業區を歩いていた。

今回の事件の概要としてーー、

・悪魔の召喚のために貴族の子供たちの拐、そのカモフラージュとして他の貴族による平民の子供の

これは街の中に限らず、王都の周辺、もしくは他の領地でも恐らく同じことが起きていただろう。

現に、アリスが王都への帰還途中に襲われた。

・地下通路からの賊の侵

これについては疑問の余地が殘る。

経路については、ルートから外れていたとはいえ定期的に巡回が行われていたにも関わらず、あれだけの人數の侵に気づかなかったというのは不自然な気がする。

そこはグランさんたちも考えたようで、王都の検問所の調査をしたが、通者も、不自然に姿を消したものもいなかったようだ。

時間が経っているため、それぐらいしか調べられなかったと足りなさそうにしていた。

地下通路の他に、転移の若しくはゲートによるものを疑ったが、魔力の痕跡は見つからず呪印も隠蔽もかけられてはいなかった。

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そして、

・事件の首謀者は執事

まぁ、まずこれは仕立て上げられた人だろう。

これだけのことをいち貴族の執事が行ったとは考えられない。

なら誰が、と問われるとこれもまぁ、まずヨークス侯爵當主本人だろう。というか、むしろ怪しんでくれと言わんばかりの振る舞いだ。

何か企んでいるのはわかっているが、証拠集めをしなければならない。

でなければ、被害者たちに顔向けができない。

その他にも、気がかりなのは拐された貴族の子供と召喚された悪魔の數が合わないことだ。

ナビによる解析と子爵位の悪魔の強さ、ガレットから聞いたところおそらく上位悪魔(グレーターデーモン)だろう悪魔を照らし合わせると、余剰分のエネルギーがあったと考えられる。

ということは、まず間違いなくもう一どこかに潛んでいる、もしくはどこかで暗躍しているだろう。

これらについては、グランさんたちにも伝えている。

「ダメだな」

ポツリと呟く。

何か、致命的な何かを見落としている。

最悪な事態が進行している気がして、焦りが思考をす。

「っと!」

「うわぁ!?」

不意にを橫にずらす。

すると、驚きの聲と共に後ろから倒れ込んできた年がいた。

「……何をしてるんだ、リク」

「あ、あはは……よぉ、兄ちゃん」

呆れたように聲を掛ければ、立ち上がりながら気まずそうに目をそらすリク。

この年は、以前店に來た駆け出しの冒険者パーティのリーダーだ。

「もう〜、バカやってないで普通に聲掛けなさいよ」

「いたずらしようとした罰ですね」

「でも、後ろから忍び寄ったのにどうしてわかったんでしょう?」

「そ、そうだっ!なんで分かったんだ?」

同じくパーティーメンバーが後から追いついてきて、そののひとり、槍士のケリントが不思議そうに問いかけてくる。

「んー、途中まで気づかなかったけど最後の最後、やったと思ったでしょ?」

「う、うん、思った」

「それで気配がれて分かったってわけ」

噓。

正直言えば、最初から狙ってるのに気づいていたが、そこは言う必要はないだろう。

「すげぇ」

「この方、冒険者じゃ無いっすよね。すごいっす」

「ん?そっちの子は?」

4人パーティーだったはずだが、ひとりシーフのような軽裝備の男の子が増えていた。

「自分は、フーガって言うっす。シーフっす。よろしくっす」

馴染のパーティーに追加メンバーとは、珍しいんじゃ無いだろうか。

馴染で組んだパーティーにるのは、なんか気まずいっすけどね。副団長に言われたんでったっす」

「副団長?」

突然出てきた副団長という言葉に、気になって聞き返す。

「《青の狩人》っていう王都では有名なクランにってるんすけど、このパーティーには盜賊が必要だって言われて、まだどのパーティーにも所屬してなかった自分が選ばれたっす。まだお試しっすけど」

《青の狩人》。王都では大きなクランののひとつと呼ばれている大きなクランだ。

所屬人數は約280人。その半數近くが新人だと聞いており、そのクランの方針としては後進育に力をれているという。

「なので、今フーガとパーティーとの相や連攜を確かめに行ってた帰りなんですけどーー」

「魔が全然見當たんねぇんだよな」

「魔が見當たらない?見つけられないだけじゃなく?」

「うん、先輩や他の冒険者たちも半年に一度くらいの頻度で、騎士団が出して數を間引くくらい魔が多いのに、むしろ數が減って不気味だって話してた」

「ちなみに君たちが向かったのって【薄暮の林野】だよね?」

「そりゃもちろん。その草原や森の淺いところにしか行かねえよ」

「……そっか」

王都周辺は、北北東からから北西方面にかけて【常闇の樹海】が広がっている。

反対に、南方面は草原とその先に森が広がっている。草原には兎や牛の魔、ゴブリンがいる。そして森には豬や狼、オークなど多種多様にいる。基本的に草原や森の淺いところは新人や低ランク冒険者向けの狩場となっている。

「冒険者ギルドでも調べてると思うんだけど、何もわからなかった?」

「そうなんです。探索が得意な冒険者を集めて調査を行ったんですけど、森の奧の方も魔の數が減っていることしかわからなかったそうです」

「そうなんだ。確かに不気味だね」

「ああ、そういえば」

「ん?」

ケリントが、何かを思い出したようにそう呟いた後に続いた言葉に、妙な騒ぎの正が朧げながら見えた。

「ギルドマスターが騎士団にも報告したのに、特にいた様子がないって不審に思ってましたね

「それか」

「え、なんて言いました?」

「いや、なんでもないよ。話してくれてありがとう。し用事ができたから行かなきゃだけど、みんなも十分気をつけるんだよ」

「う、うん。兄ちゃんもな」

し強引に話を切り上げたため、多っていたが挨拶を返してくれたの笑みを返しグランさんの屋敷へ急ぐ。

もう一召喚されたであろう悪魔。

不自然なまでに減った魔

この二つが計畫の一部であるならば、最悪な想像が浮かぶ。

一刻も早く確かめなければならない。

屋敷へ戻り、グランさんが在宅か尋ねると執務室にいるというので急ぎ取り継いでもらう。

室許可をもらったので、急ぎ向かう。

「どうしたのだ?何かものすごく慌てているようだが」

ノックをしてると、驚いたようにグランさんが問いかけてくる。

「すみません。なにぶん一刻を爭うかもしれないので」

「話してみよ」

グランさんに今起きていることと、これから起きる可能がる事態を伝える。

一瞬の沈黙の末ーー、

「急ぎ王城へ向かう。先れを」

部屋の外で待機していたロランさんに伝えた。

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