《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第3章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 〜 5 過去と未來(9)

5 過去と未來(9)

「……結局、僕は三日間留置場にれられてね、もし、あの寫真が送られてこなかったら、本當に、殺人犯にされていたかもしれないよ……」

そう言って笑う剛志に、智子は目をまん丸にして、口だけをパクパクとかした。

「だからね、その寫真に寫っていた男から、伊藤さんは逃げてたんじゃないかって思うんだ。どんな理由によってなのかはわからないけど、とにかく結果的に見つかって、彼はあの場所で殺されてしまった。もしかするとさ、火事からっていうより、そいつから遠ざけたんじゃないかな? そのために、智子ちゃんのことをあそこにれた……とかさ。そしてその時、運悪く手違いが起こって、君はこの二十年後に來てしまう。この辺は想像ばかりだから、本當のところは、よくわからないんだけど……」

昭和三十八年と1938年。こんな勘違いのような単純ミスで、今こうなっているのかもしれない。もちろんそうであっても不思議はないが、まるで見當違いだっていう可能も十二分にあるだろう。

さらに剛志が話したどれよりも、智子は伊藤の死がよほどショックのようだった。

男の振り下ろしたひと突きで、智子を救おうとした伊藤があの林で死んでいた。そんな事実は一瞬にして、剛志への怒りを小さなものにしてしまったようだ。

そうして伊藤の死を知ってから、智子の態度は大きく変わった。

「今にも、死にそうだって時に、伊藤さんは……わたしのことを必死になって、伝えてくれたのね。そして剛志、……さんが、あの日わたしを追ってきてくれなかったら、わたしは今頃、この時代でたった一人っきり。きっと昨日のマンションを目にして、自分が狂ってしまったと思ってるわ。そして、今頃は警察? ううん? 違うな……きっと神病院とかにれられちゃってるかもしれない。とにかくわたしは、伊藤さんと剛志さんのおかげで、今、こうして自由でいられるってこと、なのよね……」

そう言ってから、智子は暫し押し黙った。それから大きく息を吸い、俯き加減だった顔を剛志に向けて、そうして彼は深々頭を下げたのだった。

そしてとにかく、自分より、子供だくらいに思っていた剛志が、いきなり三十六歳で現れた。となれば一時、その接し方には戸ったりもするはずだ。

ところが案ずるより産むが易しというじだろうか?

それからは、〝剛志くん〟が〝剛志さん〟に変わった以外、まるで昔の二人に戻ったようなじとなる。多言葉遣いは丁寧ではあるが、それだって昨日までとは大違いだ。

剛志に対する謝の気持ちが、そんな態度となって表れたのか? とにかく智子は、剛志の説明がひと區切りついて、今度は一気に剛志のことを質問ぜめにした。

わたしがいなくなった後、いったいどういう人生だったか?

大學には行ったのか? 仕事は何をしているんだと聞いて、剛志が大學名を聲にした時、智子の喜びようこそ凄まじかった。

「すごい! 一流大學じゃない! そうでしょ? やっぱりな! 剛志くん頭がいいって思ってたんだから、わたしはずっと前からね~」

嬉しそうにそう言われ、剛志はなんとも気恥ずかしい。

「そんなことないって、それにあの時、合格したって日の夜にね、アブさんが店で言いまくってたよ。合格だって聞いてさ、地震と雷、いや、大雪だったかな? とにかくさ、俺のせいでそんな災難が一気に起きるからって、さんざん言いたいこと言って、店の酒飲みまくってたよ……」

「アブさんね……。きっとアブさんだって嬉しかったんだよ、アブさんらしいじゃない? そんな言い方するなんて。でも、あの人たちって、今頃どうしてるのかな……?」

次から次へと……智子の質問が止まらない。

剛志はそんな問いかけに、みんな元気だなんて返しつつ、

――またフナさんの店に行って、みんながどうしてるか聞いてみないといけないな……。

なんてことを心でこそっと思っていた。

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