《『元SSSランクの最強暗殺者は再び無雙する』》1日目 聖騎士団のスタートダッシュ

出遅れたベルトたち。その代わりと言わんばかり――――

競技開始と共に飛び出した集団がいた。

あちらこちらでその集団への聲があがる。

「なんだ!異常に速いぞ!」

「數と金を使って、速いワイバーンの厳選をしてたとは聞いていたが……」

參加者、その多くは日常的にワイバーンを使って運搬や運送を行うワイバーンのプロたち。あるいはワイバーンの育や調教に自信がある魔使いたち。

そんなプロワイバーン使いたちを凌駕したスタートダッシュを見せたのは――――

「くそっ! 追いつかねぇ!」

「1匹だけならともかく、全員速いってなんだよ」

「どんな卑怯な手を使ってやがる……聖騎士団の連中!」

そう、プロたちですら悪態をつくことしか許さない圧倒的競技への制圧力を見せたのは――――

聖騎士団だ。

彼らは、団長フォルスと一番隊隊長アレクだけではない。

フォスルとアレクを先頭にして、後方に9匹のワイバーン部隊。

合計で10匹ワイバーンで聖騎士団のチームを作っている。

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彼等は、名聲と人數を利用してスタート地點の先頭に陣取っていた。

しかし、それにしては――――

「速すぎますね」とメイル。 最後尾に位置しているベルトたちは、焦らない。

全長1400キロ。 1日で平均140キロを飛ぶ長距離レースになる。

初日が最後尾であっても、最終日に優勝する可能は十分ある。

今回が初のレースなので、何が起きるかわからない。

「……それにしても、隨分と余裕ね。なにか作戦があるのかしら?」

「え!?」と急に呼びかけられて驚くメイル。

ベルトたちの橫に並走しているワイバーンがいた。

「ど、どなたですか? 私たちが最後尾で後ろには誰もいなかったはずですが?」

「え? あぁ、ゴーグルで顔がわからないのね。私よ、私……」とゴーグルを取ると――――

「えっ! マリアさん? さ、さっきまで、主催者席で……あれ?」

「あら? メイルには私とシルフィドが參加するとは言ってなかったかしら?」

「そ、そう言えば、そんな事を言っていました……ような?」

「大変だったわよ。主催者としての挨拶と開始のカウントダウンが終わって、ドレスをぎさって、待機させていたワイバーンに飛び乗って……それで私がここにいるってわけ」

「し、主催者も大変ですね」

「そうね……それは、そうと」とマリアは視線をメイルからベルトに移した。

「聖騎士団の速度、あれって何よ? ベルトなら予想はついてるじゃない」

マリアの言葉に「ふっ」とベルトは笑った。

「な、なによ?」

「俺だって萬能じゃないさ。しかし――――メイルはわかるか?」

「え? わ、私ですか?」とメイルは慌てて、遙か前方にいる聖騎士団たちを観察する。

「あの飛び方……いえ、気になるのは聖騎士団さんたちの並び方です」

「並び方? たしかに変ね。軍の列形勢を思い出して比べると、妙に斜めになっていると言うか……」

「どこかで見た事あると考えていたんですが、渡り鳥があんなじで……」

「雁行……だな」とベルトが呟いた。

「なによ、ベルト。やっぱり、あんた知っていたんじゃない!」

「メイルの言葉で思い出しただけさ。渡り鳥は、突風や空気抵抗を減らすために、ああやって列形勢をして飛ぶのさ」

遮蔽のある地上と違い、空の風は激しい。

増して、高速で長距離を飛ぶ渡り鳥に取って、風と空気抵抗は最大の敵だ。

そのため列を作り、先頭が風を切り裂きながら飛ぶ。

そうする事で後ろの鳥たちは空気抵抗すらなく飛べるようになるのだ。

「えっと……それだとおかしくないですか? なぜ、先頭に団長さんやアレクさんが? 一番疲れる場所のはずですが?」とメイルは素樸な疑問を口にした。

「それは簡単な事さ。この競技には……妨害が許される。ほら、そろそろ始まるぞ――――戦闘が」

ベルトの予測は當たった。

聖騎士団の獨走を許さないと、後ろの集団が杖を構えた。

この競技、妨害として重力系の魔法のみ使用を許可されている(防として使用する魔法は、その限りではない)。

先頭の聖騎士団たちに向かって、參加者が集団となり一斉撃が開始された。

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