夕飯でちゃんと響子にニンジンを食べさせ、俺たちは風呂にった。

今日は早乙達に、一番いい時間を譲る。

「夕暮れから夜になっていく時間が一番綺麗なんだ」

「そうなのか！」

「ガラス張りの風呂だからな。雰囲気を楽しんでくれ」

「ありがとう！」

途中で憐花を預かり、早乙たちにゆっくりとってもらった。

「綺麗だったよ！」

「お前の語彙はなぁ」

「あ、悪い！」

「いいよ、親友」

俺たちも風呂にる。

「響子、折角になったんだから、「響子」をやってみろよ」

「絶対に嫌！」

「じゃあ「響子だぴょん」だけ」

「響子だぴょん！」

みんなが笑った。

響子も笑った。

みんなで早乙達が作ったフルーツポンチをメインに屋上へ上がる。

初めての雪野さんが先頭だ。

「ドアを開けて」

早乙が促す。

雪野さんが笑顔でドアを開け、そのまま立ち止まった。

「これは……」

うちの「幻想空間」には何度もっているが、やはり別荘のものは格別だ。

周囲が真っ暗な森であることが大きい。

遮るものが無いこの別荘の「幻想空間」は、本當に幻想的だ。

毎回來ている子どもたちも、最初にった瞬間はしている。

みんなで中心のテーブルに付き、憐花と吹雪は近くのベビーベッドで仲良く寢た。

ロボも俺の後ろの「ロボベッド」に行くが、こいつは自由にく。

早乙たちが作ったフルーツポンチは、ココナッツミルクのものだ。

イチゴ、メロン、桃、キウイ、ミカン、ブルーベリー、オレンジ、チェリー、それに杏仁豆腐がっている。

桃とミカンは敢えて缶詰のものを使っているので甘い。

今日は吹雪用のミルクを作っており、六花もハイネケンを一本だけ飲む。

他の大人たちも好きなビールにした。

俺と亜紀ちゃんはバドワイザーを。

早乙たちは俺の勧めで「イネディット」と「ジャンラン」を飲んだ。

二人に飲ませたくて、家から持って來た。

早乙がビール好きだ。

みんなで乾杯し、フルーツポンチを味わい、ビールに合わせたソーセージの焼きを食べた。

俺が立ち上がって、間にソーセージを立てた。

「柱！」

みんなが笑した。

「あれ、時々やってます？」

「いいえ、石神さんがいらした時だけじゃないでしょうか？」

雪野さんがそう言い、俺は複雑な気分になった。

「タカさん！　そろそろ！」

「またやるのかよ」

「お願いします！」

俺は笑った。

「じゃあ、折角早乙たちが來てるからな」

「はい！」

早乙と雪野さんが驚いて俺を見た。

「関係ないけど、「紅六花」の話をするか」

「いしがみー」

早乙がけない聲を出し、みんなが笑った。

「おい、六花の唐揚げを１０個とっとけ」

亜紀ちゃんが六花の前に唐揚げを置いた。

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紫苑が亡くなり、六花は高卒の資格を取るための勉強を始めた。

よしこの親戚の運送屋で働きながら、通信教育をけていた。

「紅六花」の総長は辭めていた。

「総長！」

タケとよしこがアパートに來た。

１２月の寒い日。

雪がし降って來た。

「おう、どうした？」

「新しい「紅六花」のメンバーをお連れしました」

「おい、あたしなんてもう紹介はいらないぞ」

「いえ！　是非総長に顔を繋ぎたく！」

「しょうがないな、れよ」

六花はタケとよしこ、それに新しいメンバーだという「ピカ」というを連れて上がった。

痩せている。

長は１６０センチちょっと。

重は４０キロ程度だろう。

長い茶髪が背中の中ほどまでびている。

化粧はしていない。

青山。

仲の良い連中から「ピカ」と呼ばれているそうだ。

目のが強いだった。

「１５歳です。うちの最年ですね」

「そうか。よろしくな、ピカ」

「あんたが総長か」

よしこがピカの後頭部を毆った。

「てめぇ！　総長にどういう態度だぁ！」

「いいよ、よしこ。あたしはもう総長じゃないしな」

「でも！　こいつが「紅六花」にったからには！」

「いいって」

「あたしは別に辭めてもいんだ」

「なんだと！」

六花はよしこを落ち著かせ、みんなに茶を淹れた。

よしこに手伝うように言った。

タケが取りなしてくれるだろう。

部屋に戻ると、ピカが六花に土下座していた。

「すみませんでした」

「いいよ。寒かったろう、こんなものしかなくて悪いな」

タケがピカのことを話した。

「こいつ、ツレと一緒にレディースみたいなのを作って。それで「ジャーヘッド（蛇頭）」とめたんですよ」

「そうだったのか」

「ジャーヘッド」は栃木で勢力を振るっている暴走族だった。

過去に何度も「紅六花」と衝突している。

冷酷な集団として知られ、拉致されてレイプや拷問を行ない、障害を負った人間もいる。

しかし「ジャーヘッド」の報復を恐れ、表沙汰にはなっていない。

それほど大きな集団だった。

「いい気になって、「ジャーヘッド」のメンバーと喧嘩して傷を負わせて。それから拉致られて、傘下にって賠償金と上納金を定期的に納めるように言われたそうです」

賠償金５００萬、上納金は月に１００萬だったそうだ。

「ピカの仲間はみんな引っ越して行きました。こいつは家が貧しくってそうも行かずに」

「それでお前らがうちにれたのか」

「そうでもしないと、どんな目に遭わされるか分かりませんからね」

ピカは母親との母子家庭だった。

近くの大手電機メーカーの工場で働いている。

「じゃあ、みんなで守ってやろう」

「「はい！」」

タケとよしこが姿勢を正して返事した。

「あの、あたしなんか何も出來ませんが」

「お前、困ってんだろ？」

六花が言うと、ピカが不思議そうな顔をして見ていた。

「うちにりでもしないと、「ジャーヘッド」が襲ってくる。だからだろう？」

「はい、その通りですが」

「だったら安心してあたしらに任せろよ。必ず守ってやる」

「！」

ピカが泣き出した。

タケとよしこが笑ってピカの頭と背中をでてやる。

「総長がそう言ったんだ。あたしらもきっと守るからな」

「はい！　先ほどはすみませんでした！」

六花は、心は優しい人間なのだと思った。

自分が助かりたくて「紅六花」にろうとしたことを恥じている。

その心を見通した上で、自分を守ると言ってもらった。

「総長、自分が「ジャーヘッド」と話を付けて來ます」

「そうか」

「ピカが自分らの「紅六花」にったんで、今後のめ事は無しだと言ってきますよ」

「頼むな」

「念のため、タケの家で話が付くまでは居させます」

「タケ、よろしくな」

「はい！　學校はもうじき冬休みですので、何日かはあたしが送り迎えします。なに、よしこが行けば、向こうだって諦めますよ」

「うん。ピカを宜しくな」

三人は六花のアパートを出て行った。

雪が強くなっていた。

よしこはすぐにき、渡りをつけて「ジャーヘッド」の頭に會いに行った。

ピカのことを「紅六花」で預かったことを告げ、今後の手出しは無用にと頼んだ。

しかし渉は決裂し、「ジャーヘッド」はピカの柄を要求した。

決著が著かないまま、よしこは帰って來た。

六花に詫び、今後もピカを守っていくと言った。

六花は嫌な予がしていた。