《ワルフラーン ~廃れし神話》戦に舞う刃 中編
眠るの顔を、エリはただ一人見ていた。その顔には恐れもなければ、憂いも無い。その顔に浮かぶ表は、只々穏やかだった。
何もかもを忘れてしまうというのは、案外幸せな事なのかもしれない。それはつまり何の柵にも囚われていないという事なのだから。エリのような―――死刑を控えているような者ならば、尚更彼を羨ましく思う。
―――何故死刑を控えているか。
ウルグナ達と別れた後、フォーミュルゼンの使いが砦を訪れた。用件はと言うと案の定、レイリンに対する危害の事だった。エリの予想していた通り、レイリン・フォーミュルゼンとの婚姻関係は解消。この件は否定派への侮辱行為として他國に告発されるそうだ。
こうなる事は分かっていたが……それでも、この事態を止められなかった自分が恥ずかしい。ワドフを助けたその代償は――-自らの破滅だったなんて、全くお笑いだ。
ワドフが憎んでいない訳では無いが、彼に罪は無い。この事態を引き起こしたのは、結局の所自分なのだ。そして國は―――不利益になる存在を、何の躊躇も無く淘汰するモノであるという事を、エリは忘れていた。
フォーミュルゼンとの一件もあり、エリは忠義を盡くしていたリスド大帝國に、死罪を言い渡された。自分が何よりもした國に、『死ね』と、そう言われたのだ。
今は鎧と『獅辿』を取り上げられているので、エリは丸腰も同然。本來なら牢に幽閉されているだろう所を、おけで砦に行かせてもらったが、時間は限られている。後數十分もすれば、使いの者が來るだろう。
「ワドフさん……結局、貴方の隣には誰も居なくなってしまいますね」
フィネアは直ぐ戻るとは言っているが、何しろ行先はフルシュガイドだ。相當の時間が掛かるのは言うまでもない事であり、こちらに戻ってくるまでの間にワドフが死んでしまう事の方が、十分にあり得るだろう。
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そう。ワドフは眠ってはいるが、一切起きないのだ。起きたのはウルグナ達が砦に戻ってきた時の一回。それ以降はずっと、この狀態のまま眠っている。
「デュークさんは仕方ないのかもしれませんが……私は、皆さんと一緒にこれからも仕事がしたかったですよ……」
ウルグナ、ワドフ、キリーヤ。フィネア。そして自分。今まで他のパーティーの任務を何回か協力したが、ここまで楽しいパーティーは居なかった。これからも協力したいと思えた。
勿論その願いはかなわない。自分は死ぬのだから。
「それじゃ……私、行きますね」
エリがを翻し、扉のノブへと手を掛けた―――
剎那。
視界を塗りつぶす程の巨大な『無』が、エリを呑み込んだ。
「どうやら、あれが合図のようじゃの」
リスド大帝國を一できる數ない丘で、ナイツ達はその剣閃に畏怖せざるを得なかった。あれこそが數十年前、種族の頂點に君臨していた魔人を底辺へと引きずりおろした人類の切り札、その力の片鱗だ。突破不可能と謳われたこの塁壁を、まるで何でもないかのように切り裂き、街へと刻まれるその刃。あまりにも無で、そして強大な一撃。
人間達は夢にも思うまい。まさか、かつて切り札として自らを守ってくれたアルドが、その刃を向けてくる事に。
しかしどこにもおかしい點は無い。虎の威を借る狐が、虎を蔑ろにすれば、その虎は當然牙を剝けてくる。當然の話だ。
「さて……アルド様は自由に殺してよいとの事だが……もう向かうか?」
チロチンが一歩前に進み出て、フェリーテに尋ねる。その思考からは、『ファーカが暴れたら後が面倒だから範囲でも決めてくれないか』という意思がじられた。
「いや、流石に自由に殺りすぎて主様の邪魔になってしまっては元も子もあるまいて。ここは一つ皆でエリアを分けて、殺そうと思うのじゃが」
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「エリアぁ?」ファーカが不満げに口を尖らせるが、気にせず話を続ける。
「まず妾とディナントが城下町のり口付近、チロチンとファーカが街の中心、ヴァジュラが街の北部、ユーヴァンは……城の周りを、メグナとルセルドラグは―――」
そこまで言った所で、當然のように抗議された。
「なんでこんな骸骨とッ!」
「何故にこんな蛇とッ!」
二人の聲が揃う。実に微笑ましい景だ。
湧き出る笑いをこらえつつもやはり抑えきれない。口元がどうしても震えてしまう。
「な、何よ?」
「フフフ……そんなに融通が利かぬようだと、主様に嫌われてしまうぞ?」
『嫌われる』。その言葉は、メグナの心臓を的確に捉えていた。
ここぞとばかりにフェリーテは畳みかける。
「―――しかし殘念じゃのう。もしメグナがここで妾の指示をしでも聞いてくれるというのであれば、主様の事、教えてもよかったんじゃがのう」
「え?」
「え?」
「え?」
意外な事に、メグナだけではなく、他の陣三人も、その言葉に反応した。遅まきながら、アルドは自分とオールワーク以外にそれを教えていなかった事を思い出したが、過ぎ去った時は戻らない。
思考を読むと、案の定全員の思考が『え、何それ?」という疑問に染まっていた。
やってしまった。
「ねえ、フェリーテッ! その言葉に偽りは無いわよね?」
「それはの……えー……」
「よっしゃッ! ほら、ルセルドラグ。さっさと人間共を片づけるわよ。……って、どこにいるのよ?」
程、その手があったか。確かに姿が見えないルセルドラグなら、沈黙さえしていればナイツ達に見つける事は出來ない。
眼なら。
「ヴァジュラッ! ルセルドラグはどこ?」
「……そこ」
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いつの間に裝備したのか、ヴァジュラの篭手、『魂曝』から出現する鎖が、ルセルドラグの手首に巻き付いていた。
「ヴァジュラッ、貴様!」
「うっ、ごめんねルセルドラグ。でも……僕としてもアルド様の事は、もっと知りたいんだ」
「さあ、逃がさないわよ! あ、フェリーテ。さっきの組み合わせに異議はないから、さっさと始めなさい」
鬼気迫る表のメグナに、気圧されながらも、フェリーテが告げる。
「ふ、ふむ。そうじゃの。では改めて―――」
「侵攻開始だァァァァァァァァァッ!」
―――ユーヴァンに言葉を取られたが、まあいい。リスド大帝國、攻略開始だ。
リスド大帝國騎士団団長、ガレッダ・フォーミュルゼンは、今現在の狀況を、俄かには信じられずにいた。
突如として街に魔と思われる強大な刃が刻まれ、既に街の十三パーセントは崩壊している。砦は如何なる狀態と言えば、數日前、歩哨が皆殺しにされるという事件のせいで、警備は補欠の十名。リスドアード砦の壁は、見事に切り裂かれているため、それらが無事とは思えないが、しかしおかしい。砦の壁を一撃で破壊しうる技量を持つ魔師など、この大陸には存在しない。
ならば一どうやって。
そこまで考えた所で、部下の一人が息を切らせながら、作戦會議室へと飛び込んできた。
「団長ッ!」
「どうしたッ」
「城下町に侵者あり! ―――魔人ですッ!」
「魔人だと? 何を寢ぼけた事を。魔人が人類に歯向かえる筈がない。それに、魔人とは貿易関係を築いている筈だ」
部下が目を伏せ、おずおずと答える。
「おそらく、フルシュガイドとの取引がばれたのかと……」
程。いつかバレるとは思っていたが、こんな形で実現するとは。
「―――仕方あるまい。その魔人とやらは如何程の數だ。千人か、萬人か? なにやら切り札のようなモノを持っているようだが、所詮は魔人。し兵力を回せば、簡単に制圧できる筈だぞ」
「そ、それが……確認できる限りは―――七人」
七人、數鋭という事なのか。ならば好都合。あちらが質を優先するのならば、こちらは量を優先するまでだ。
どんな技をもってしてあの砦を破壊したかは分からないが、おそらくは単発。切り込みの為に用意したモノだろう。
実に下らない。その程度で勝てる気になっているなど。
ガレッダはし考えた後、部下に伝えた。
「ならば魔部隊と弓兵部隊を向かわせ、制圧しろ」
「ハッ! 了解しました」
部下は當たりで扉を開け、再び戦地へと赴いて行った。今城に居るのは、自分を含む鋭部隊と、王だが、そこまで魔人が侵攻できるとは考えられない。よくて今向かわせた部隊を殲滅されるくらいだろう。
しかしながら、魔人の行は見過ごせない。
魔人如きが、調子に乗るなよ。
男達の前には黒い服を來た妖艶ながいたが―――今はそれどころではない。命が関わっているのだ。
男達が橫を通り過ぎようとすると、は橫に腕を広げ、なにやら黒いモノを開き、行く手を阻んだ。
「な、何するんだよッ! どいてくれよ!」
「そうだそうだ。俺達ァ、まだ死にたくねえんだ!」
「邪魔するんじゃねえ!」
男達が次々とまくしたてるが、に怯んだ様子は見られない。それどころか、むしろ微笑んでいる。
「な、何がおかしいんだよッ!」
は黒い何かで口元を隠しながら言う。
「お主らにとって、魔人とはどのような存在じゃ?」
「は?」
何故こんな所で一般常識の問題を出すのだろう。そんな事、決まり切っているではないか。
「―――だったら、犯し倒せる玩、男だったら、利用価値が無い奴隷、當たり前だろ?」
男達は聲を揃えて言った。
それが逆鱗にれるどころか引き剝がしている事すら気づかずに。
が微笑むのをやめ、目を閉じた。
「そうか。然らば、お主らを通す訳には行かなくなった」
「は? なんでだよッ!」
「どうしても通りたければ、妾を殺すなり犯し倒すなりして通ればよかろう」
その言葉に男達は疑問を覚えたが、直ぐにどういう事を示しているか、気が付いた。この、魔人だ。
こんなに人間に似た魔人は見た事がないが、かなりの上玉である事だけは分かる。本人もそう言っているのだし―――さっそく犯し倒そうではないか。
一対多。抵抗すら出來ないだろう。
「へへ、そうかよ。よしお前等、行くぞ!」
男達の判斷は素早かった。逃げ場が無くなるように広がり、へと詰め寄っていく。相変わらずだが、は一切怯えた様子を見せない。
「掛かれぇッ!」
男達がいやらしい手付きでのにれようとした時―――
大地を震わすおぞましい聲が、男達の近くで聞こえた。
「フェリーテに、フレルナッ!」
男達は皆、を綺麗に両斷され、死んでいた。憎々しげにディナントが何かを踏みつぶして回っていた。その速度たるや素早いモノで、全ての死にそれを終えると、ディナントはきを止めた。
それにしても、ディナントがをむき出しにするなんて、かなり久しい事ではないだろうか。フェリーテの知る限りでは、ジバルで行われたアルドとの決闘以來の筈だ。
「ディナント……妾が奴等にを捧げると、本気で思っておったのか?」
ディナントの手には、三メートルは優に超えるだろう大太刀が、握られていた。銘刀『神盡かみづる』。鬼の紋章が施されたその太刀は、ディナントの切り札だ。これを出したその瞬間から分かっているが―――ディナントは本気だった。
フェリーテが鉄扇を向ける。
「生憎じゃが、妾がを捧げようと思う者は、主様只一人じゃ。お主がそう憤らんでも、妾の意志は生涯変わらんよ。じゃが……」
フェリーテは鉄扇を収めると、ディナントの顔を覗き込んで、笑った。
「守ってくれて、ありがとうの」
ディナントが顔を背け、呟いた。
「馴染と……シ、て、トウ……ん」
「おろ、照れてるのか? 何じゃ、お主も可い所があるではないか」
「てれ……てなイ」
「照れてるではないか!」
フェリーテがディナントに飛び掛かろうとした時、何気なく奧の方を見ると、こちらへと向かってくる集団が見えた。
「ふむぅ、まだ來るようじゃな。今度は百姓ではなく、武士。いや騎士か」
「こコ……と……さん」
『神盡』の剣先が、僅かに上がった。
「くそッ、何だこの蛇ッ、我より強いぞ!」
「テメエより強いのは當たり前だろッ、こっちが何年この時を待ったか!」
メグナの下半が、騎士の首を捉えた。
「くっ」
「に絞められるなんて、いい夢見たわね」
男の目が見開かれると同時に、メグナは下半を引き、首をへし折った。その部分を斬ろうと他の騎士が斬りかかるが、それよりも數秒速くメグナが拘束を解除。騎士が振り下ろした剣は、まるで壊れた人形のように首が安定しない仲間を叩き切った。
しかし、一応は騎士。仲間の死には目もくれず、即座に刃を返し、メグナに追撃を掛けんと距離を詰める。拘束を解除した直後だ、メグナには當然避けられない―――
「私もいる事を、忘れるなよ」
直後に不可視の刃によって騎士のが両斷。あまりに一瞬のことだったので、騎士はどうして死んだかすら気づいていないだろう。
當然だ。ルセルドラグはカテドラル・ナイツ最強なのだから。
「……さて、これでん最後のようだな」
メグナの足元には、百を超える死が地面を覆いつくしていた。二人を始末する為に、どれ程兵力を仕向けたかは分からないが、どれ程いてもやはり無駄。真面目になった二人が真面目に戦えば、この程度の數など、訳無いのだから。
ルセルドラグが、不機嫌そうにメグナに尋ねる。
「しかし、貴様。どうして霊槍を使わん。蔭で私の負擔が、雑魚共が湧く事に増えていくのだが、どう思う?」
「當たり前じゃない? こんな雑魚に私が本気になるなんて、馬鹿らしいもの」
「一瞬で終わらせたいんと思うなら、本気になって然るべき。そうは思わんか」
「思わないわね」
ルセルドラグの言葉が止まった。即答するメグナに呆れたのだろう。いや、むしろ呆れで終わる分にはまだましだろう。本來なら殺意むき出しで殺しにかかるのだから。
ため息が聞こえた。
「やはり貴様と私は合わん」
「同よ。フェリーテがあんな事言わなきゃ、誰があんたなんかと―――」
メグナが遠方を見遣ると、こちらに向かってくる集団が見えた。鎧の類を著ていない事をみると、魔師、弓兵の類だろう。包する魔力量からみるに、上位までの魔は一通り使える集団、といったところだろうか。
かなり面倒な類であるが、どうという事は無い。なくとも、ナイツの誰かしらと相まみえるよりはましだ。
「……どうやら、こちらに來るようだ」
「んなこたぁ、分かってるわよ。それよりどうする? 魔師がいるとあんたの利が消えるでしょ?」
「利が消えようが関係あるまいん。奴らを斃せば済む話だ」
「そうよね、あんたはそういう奴だったわ―――じゃ、行くわよ」
「貴様の命に従うは甚だ不本意であるが、しかし―――承知した」
「隷魂、『悪墮』」
彼の篭手からけた鎖が出され、男達の心臓へと打ち込まれた。男達には一見して何の変化も無いが、ヴァジュラの武の質上、初期段階で変化がないのは當たり前の事だ。
「うおッ」
「なんだこれ……急に……」
『悪墮』。
対象者に神的快楽を與える効果のある幻覚を見せ、抵抗力を弱。対象者を自分に執著させる特殊能力。『言質』と比べると、効果は弱いが、自分への執著が増せば増す程、対象者を強化する他、神的快楽までもが過激になっていく、つまり自分の求めるモノに近づいていくというのが、この能力の特徴だ。
この能力の何が恐ろしいって、この世界の殆どの男達は、皆最強を目指している故に、ヴァジュラの隷魂に抗う事が出來ないという點だ。
例外の男は一人いるが―――確かな事は、今自分の目の前にいる男達ではないという事だ。
男達の顔がけてくる。
「ああ、こりゃ案外……いいもんだ」
「気持ちイィ……」
例外の人は、何時間繋がれていてもじなかったが、あれは例外中の例外。本來はこの通り、數秒と経たずに墮ちるものなのだ。
そろそろだろうか、命令が通じるのは。本來は普通に命令を出しても問題ないのだが、せっかく幻覚ゆめをみているのだ。幻覚のシチュエーションに合わせようではないか。
「ねえ……貴方の同僚……が、僕を……殺そうとして……くるんだぁ」
ヴァジュラは男達の中心を通り過ぎ、艶めかしい聲で囁く。
「助けて……しい……かな……」
「ああ、任せろ……お前は俺が……守ってやるッ」
「あいつらか……よし、全員皆殺しだ!」
ヴァジュラを気遣う言葉を言っているが、これは己が求を満たす為に紡がれた中無き言葉。ヴァジュラの心に響くことは無い。
皆、己のに負けたのだ。
仲間達へ向かっていく人間を見ていると、何故だか笑みがこみ上げてくる。
「アルド様の笑い方が……うつっちゃったかな」
人間をどう殺そうか考えているアルドの顔も、こんな笑みを浮かべていた。一何がそんなに楽しいのだろうと思っていたのだが……
「よう! 楽しそうじゃねえか、よう!」
誰かの様子でも見に行こうかと考えていたとき、突然上空から間抜けな聲が聞こえた。ゆっくりと顔を上げると、
「あ、ユーヴァン……そっちは終わったの?」
「勿論さッ。この俺様が手間取る訳がないだろう? 俺様には切り札があるわけだしなッ、かすり傷一つも負わんよ」
そういってユーヴァンは、火の手が上がっている方向を指す。
「そう」
ユーヴァンは地面に降り立ち、ヴァジュラと同様の方向を見據えた。なんと醜い景か。に負けた男達の末路と考えるならば、尚悲しい。
友とか、絆とか、そう言った綺麗事は全て無視して、己の求を満たすために仲間と殺し合う。
あれが本來の人間の姿なら、醜いと言わざるを得ない。この本を知っていて尚アルドが人間を守っていたなら、彼もまた人間だったという事だろう。
まあ、そんな事はどうでもいい。今アルドは魔王なのだ。人間だったとかそうでないとか、そんな事よりも自分達の味方で居てくれるというのが、重要だ。
「さて……ここも終わった事だし、他の奴らの様子でも見に行くか?」
「あ、そうだね。ねえ、ユーヴァン。どの辺りが厳しそうか、上空から見て分からないの?」
ヴァジュラが尾を揺らしながら、ユーヴァンに尋ねる……直前。
百を超える矢が、二人を囲んだ。その矢は徐々に二人に迫っていき―――そのを
「『獄龍』ッ!」
ユーヴァンが軽く翼を羽ばたかせると、百を超える矢が一斉に発火し消失した。姿なき敵の、息をのむ聲が確かに聞こえた。
「ヴァジュラに傷を付けようとするなど言語道斷! そんな奴はァァァァァッ!」
『竜』は言葉をいったん切り、ドスの効いた聲で、見えぬ敵に宣告する。
「……俺様が消し去ってやる」
「制圧に向かわせた第二、第三、部隊は目標と接、現在戦中ですッ!」
「そうか分かった。お前も早く戻れ」
部下の背中を見送った後、ガレッダは今の狀況を楽観視していた。
魔人の評価をし改めなければいけないだろう。幾ら人間の方が強いとはいえ、まさかここまで善戦するとは。魔人達が如何にこの時を待っていたかが分かるが、生憎こちらが數では圧倒している。そして數が多いモノが勝つのが世の常だ。負けるはずはない。
そういえば、エリはどうしただろうか。冒険者の容態を看に行くと言ったきり、こちらに帰っては來ない。
ひょっとして、今回の事件の首謀者は彼?
有り得なくても良い。違くとも良い。自分の弟に危害を加えた罰として、今すぐ殺したい。家族には既にリスド港で待機してもらっている。命の心配はない。フルシュガイドに亡命し、適當な地位を與るという予定は既に立ててある。仮にここで死ぬモノが居るとすれば、自分だけ。そして自分を殺したのが魔人と世界に知れれば、世界はいよいよ魔人の絶に重い腰を上げるだろう。
この勝負、最初から決まっている。
ガレッダは抑えきれない笑みをらしながら、部屋を出た。自分がするべき事は何もない。あるとすれば―――砦へと向かい、事件の首謀者として、エリを処理する事だ。
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