《ワルフラーン ~廃れし神話》ジバル國の欠陥
シターナの二つ目の心當たりを巡る最中、彼は不意に尋ねてきた。
「神をもわす貌だなんて、凄いじゃないか、お前の弟子は」
「人なのは認めるが、そこまでかと言われると首を傾げるな。傾國のというのはフェリーテの様な者の事を言うのであって、アイツがそれなのかと言うと……」
「不細工だと?」
「いや、そういう訳じゃない。アイツは可い。可いが、しいと可いは大分違うだろう。経験のない私がどうこう言える立場にあるとは思えないが、しさというものは、知識とか教養とか、そういう面的なものをに付ける事で初めて得られるものなんじゃないかと思っている」
ドロシアをしいに分類しないのは、彼にそう言った面的知識が存在しないからである。秩序に縛られない彼は、確かにアルドと共に數十萬年を共に過ごした。しかし、そう言ったの奧深さというものは生きているだけで積めるものではない。それに彼は、アルドと出會うより以前に親類を全て異界に吹き飛ばしてしまった。よって、誰かが彼に淑としての心得を教えられる訳でもない。
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見た目こそ年頃のだが、その実態はその辺の子供と全く一緒である。アルドが繫ぎ止めているから何もしないが、もしも彼がのままに暴の限りを盡くそうとすれば、それこそ執行者が出張らざるを得ない案件となる。アルドが諸悪の源なので仕方なかったのだが、彼等は何処まで行っても『正義の味方』だ。世界の秩序をす者は彼等によって敗される。
「お前にしては、隨分知った様な口を聞くね」
「知った様な、か。反論できないな。確かに私は知らない。の味も、の苦悩も、何もかも」
「ああそうだ。お前は分かってない。面的なモノだけでしさを得られるというのなら、私はしいという事になる。アルド、一つ尋ねよう」
「……分かり切っているが、聞いておこう」
「私はしいかな?」
栄養失調、睡眠不足。只の人のにも拘らず、シターナはそんな狀態を長らく続けている。彼はアルドとは違って普通の人間だ。その狀態を続ければ間違いなく死ぬ。死ぬけれど、そんな事には興味が無い。そんなシターナのがまともである筈はなく、はガリガリ、は死人よりも悪い(今は無理やり食事させたのでマシになっているが)。彼をだと説明しても、男に見える者だって居るかもしれない。
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そんな彼も、智慧の魔という別名を持っている。アルドの理屈が正しいなら、彼こそこの世で最もしいと言えるだろう。
だが……現実的にしいかどうかと言われると、それは無いというのが素直な意見だ。とは価値観だが、彼をしいと言える様な世界は果たしてくるのかどうか。その點でアルドは首を傾げた。
「…………しい、とは言えないな」
「正直でよろしい。そうだ、私はしくない。醜くすらある。智慧だけでしさが決まるなんて事はないのだよ。だが君の弟子がしいと言えないのは、同意だ」
「理由は?」
「初心すぎる。お前に対する好意は間違いなく本で、それ故に純粋で、だからこそい。お前の弟子が人間でないのは承知しているが、あれはもうしないのではないかな。お前のせいで」
「……幾らお前でも、言っていい事と悪い事がある。私に経験が無いのは自他共に認める事実だが、それがどうアイツに影響していると言うんだ」
「経験のない誑しとは恐れった。もしかしたらお前が英雄と呼ばれる所以は、そこにあるのかもしれないな」
「…………よく分からないが、嫌味を言われてるのか?」
「そのつもりはない……と言えば噓になる。さあ、もうすぐだ。ここにお前の友人が居ると良いな」
話していて気付かなかったが、シターナはちゃんと見ていた様だ。目の前に視線を戻すと、そこに広がっていたのは―――
風俗街だった。
時刻は既に夜。帳は既に降り、闇夜が世界を支配している頃である。大陸によって一日の生活行というものは変わるが、多くの場合は日の上る頃に起き、日の沈む頃に眠る。これが一般的である。しかし全ての人がそれを実行している訳ではない。全く逆の生活をしている事もある。或いは日の上る頃に起き、日の上る頃に眠るという者も居る。
ここはそういう人間が夜を明かす為にを寄せる場所。この區畫の一番靜かな時を挙げるならば、それは真晝間であろう。いや、ここまで明かりが點いていて、更にはまるで夜をじさせない程騒々しいと、今こそが晝間と言っても良いのかもしれない。ここまでの騒がしさは、普通の街ならば晝間に起こる狀態だ。
「…………ふざけてるのか?」
「いいや、ふざけてなんかいない。ジバルを落とすというのなら、幾らかやり方がある。先程のは防衛したから、理的に崩壊させる線はこれであり得なくなった。八天とやらはその一點だけで攻めようとは思わないだろう。その方面においては萬能なお前が居るから」
「否定はしない。私は政治方面には無知に等しいからな」
大事の処理はともかく、細かな仕事は全てチロチンやフェリーテがサポートしてくれていたので何とかなっていたのが、今までのアルドだ。自分一人となると話が変わってくる。頭が悪いとかそういう事ではなく、単に騎士學校にも通っていなかったので、そもそも知識が無いのだ。
「ならば二つ三つ作戦を同時に遂行する筈だ。幸い、人手さえあれば容易に行えるものばかり。その一つが、権力者の買収だ」
「側から崩すという事か?」
「そう。俗世に生きる人間の持つ共通の隙だ。社會という生活形態を構築する以上、何処かしらが腐敗するのは、最早防げぬ現象なのかもしれないね」
「まあそうだな。つまりあれか、ここが接待の場所に使われてるって訳か」
合理はある。風俗街は往々にしてある種の無法地帯である場合が多いので、所謂『汚い話』をするのなら、これ以上に最適な場所は無い。男関係なく、味しい食べないしは酒と、遊べる異と、お金を用意されれば、大半の人は懐されてしまう。懐と言えば聞こえは悪いが、されている人にすればメリットばかりなので仕方あるまい。
正確に言えば、俗的なメリットだが。
「理屈は分かった。それで、私は何をすればいい?」
「取り敢えず、この街の風俗店を全て漁ろうか」
…………。
無言の圧力に、シターナは屈する事なくもう一度言った。
「この街の風俗店を全て漁ろうか」
「いや。いやいやいや」
「何がそんなに嫌なのか、私には分からないな。容姿の醜悪さを気にしているのなら心配せずとも……」
「いや、そうじゃない。あちらも商売だからな。私がどれだけ醜い顔でも対応してくれるだろう。なら問題は一つだ」
「行為の経験が無い事か」
「智慧の魔とは思えない淺はかな回答だなッ? そんな訳無いだろ! いや、そんな事あるんだが!」
「分かっているよ。冗談さ」
「…………隨分、下手くそな冗談だな。違う。お金だ。一つ二つならまだ良いかもしれない。だが全てを回るのは無理だ。そこまで蓄えが無い」
虛空を介せば出せない事も無いが、あれは五大陸奪還を果たす為の貯蓄も含まれている。こんな事で使う訳には行くまい。仮にもアルドは魔人の願いを一に引きけているのだから。個人的な事で……それも風俗関係で使うなど言語道斷。そんな事は頼まれたってしたくない。
「蓄えが足らないとは、隨分庶民的な事を言うね、アルド。お前は曲がりなりにもこの國の英雄だ。そんな事を気にする必要はないと思うよ」
「ん? 何故」
「英雄様が來たって、その事実があれば店の評判は上がる。料金なんて払う必要はないだろう。まあそれが嫌だと言うのなら…………もう一つ」
非常につまらなそうな表ばかり浮かべていたシターナが、しだけ笑った様な気がした。
「お前がもう一回になって店員を裝うという手があるけど」
それはアルドにとって、最も取りたくない手段だった。
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