《ワルフラーン ~廃れし神話》偽裝転生
己の重さを利用されて叩きつけられる事などいつぶりだろう。『鬼』となってからは初めての事だ。自分に対して技を掛けようという人間は、久しく居なかった。
この重さ。紛れもなく自分の重さだ。生半可な攻撃よりも隨分通用する。反吐を吐く程ではないが、全くの無傷という訳にはいかない。いや、そんな事はどうでもいい。
式羽は今、自分の事を『鬼』と呼んだ。
記憶が正しければ、彼は徹底してこちらの事を『化生殺し』と呼んでいた。それはディナントの居る地域が魔人の國だからであり、魔人がわざわざ種族を指して個人を呼ぶ事は非常にない。何せ魔人とは、人間を覗いたその他の種族を一括りにした言葉なのだから。
にも拘らず今の彼は『鬼』と、呼んだ。それは彼が……式羽が本とすり替わった事の証拠でもある。
「…………フッ!」
不意を突かれたのでけは立していない。無抵抗を貫けばこのまま関節を極められてしまいそうなので、ディナントは腕の筋を膨張させて、摑まれた手首を強引に解放。素早く後転して距離を取る。
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「……キサマが、『竜』を騙るモノ、か」
「…………まがりなりにも、ジバル一の武士と謳われていた男なだけはあるな。今ので首がへし折れぬとは」
「何故、『竜』ヲ騙っタ」
「我らが大義の為。カテドラル・ナイツも霧代アルドも朽ちるべきなのだ。貴様らの様な亡霊に、邪魔をされる訳にはいかないのだ」
カテドラル・ナイツを知っている上に、亡霊と稱するか。どうやらこの男は、アルドの事についてかなり詳しく知っている様だ。でなければ亡霊などという言葉は出てこない。
たった一人で百萬人の魔人を殲滅し、たった一人でジバル滅亡の危機を救い、自分たちも力を貸したとはいえ、死の執行者を打ち倒した。人のでありながら人ならざる所業し続け、尚も生き続ける彼には亡霊という言葉がピッタリなのかもしれない。世界中のありとあらゆる英雄を足した様な生命力は、或はそれ以上なのかもしれない。
「『鬼』よ、一つ尋ねる。『竜』は何処だ」
「尋ねてどうス、る」
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「始末する。もし居場所を教えるのならば、元はここの住人である事に免じ、貴様の事は見逃してやろう」
噓だ。見逃すとは思えない。こちらの忠誠心を試しているに違いない。さっきこの男はナイツも含めて朽ちるべきと言ったのだから、間違いあるまい。
「愚問」
虛空から武を取り出し、居合の構えを取る。その勢が何よりの答えとけ取った男は、「殘念んだ」と言って、無構えのまま、ゆっくりとこちらに近づいてきた。明らかな挑発行為だ。斬れるものなら斬ってみろとでも言いたいのだろうか。
ならばその要には応えよう。
「―――フンッ!」
歩き出して僅か二歩目にして、抜刀。踏み込みも含めて距離が遠すぎる狀況にも拘らず、居合を放った。男はその行に面食らいきを止めたが、距離が絶対的に足りない。あり得ない事に、ディナントが間合いを測り間違えたのだ。
『神盡』は空しく空を切る。カテドラル・ナイツの一人をこんな容易に仕留められる機會もそうそうあるまい。男がその瞬間を逃す道理は無く、神速の剣戟がディナントの首に當てられた。
「……なッ」
切れない。今までの首と手ごたえが違う。
男が驚愕しているに、ディナントの刀が裏返る。
「―――『飛燕』」
ジバルの剣において後ろに引く守りの剣は軽視される傾向にあり、『飛燕』はその軽視される技の一つだ。しかしこの技は、人には習得出來ない。この技を習得出來るのは己の骨を自由に変形・改造出來る魔人だけであり、始祖であるフェリーテを除けば、『鬼』だけだ。
首が切れないと分かるや、素早く狙いを変えて第二撃を打ち込まんとするが、それよりも早くディナントの一撃にを開かれ、不発に終わる。
「ほう…………!」
その正は後ろに踏み込む斬撃。
ただ退いて斬るなら誰でも出來るが、『飛燕』は居合に重さを持たせる為に重要な踏み込みによる力を、『鬼』の特を生かして力の方向を反転させ、その力で斬る技。居合の際に生じた力を利用しているので、言うなれば下がる居合だ。一撃一撃が重要な剣において、この技は高い奇襲を誇る。
居合などという、如何にも渾の一撃になり得そうな行為を囮に使うのが肝で、現に式羽を騙る男にも通用した。いや、この男はこちらの剣の腕を知っているからこそ通用したとも言えるので、まず見抜かれる事は無かった。
男は最初に居合が外れた時點で、全力で後ろに下がるべきだった。止めを刺そうとしたがばかリに、彼はを切り裂かれたのだ。
「何と……太い首だ。それが『鬼』の特か」
手応えは決して淺くなかったが、男は隨分とピンピンしている。それだけで言えばアルドにも似た生命力と言えるかもしれないが、彼はきちんと痛みをじているし、急所を突かれれば死ぬ。その上で耐えているだけと考えると、まるで効いた様子を見せないこの男は、アルドとはまた違った能力で耐えているのかもしれない。
程、ユーヴァンを殺したくなる訳だ。彼の焔は意識を燃やす。不死と言えども関係ない。意識がなければなんて只の塊に過ぎないのだから。
―――鎔爻を使うしかないか?
しかしリスクがある。不死ならば使わないと殺せないが、不死でない―――通常の手段でも殺せる存在ならば、不死殺しの灰油の無駄遣いだ。自分では製出來ない欠點を考慮すると、まだ使うべきではない気がする。
「強いな。を裂かれたのは久しぶりの事だぞ。どうだ? 主を裏切って、『八天』につかぬか? 貴様程の剣豪ならば他の者も文句は言わぬぞ」
「……我ガ、忠、を愚弄……スるカッ!」
「ふむ。ならば致し方なし。しかし同じ武士として敬意を払い、名乗るとしよう」
男は納刀しつつ、名乗りを上げる。
「六の太刀―――慈堂聖真。貴様の実力は良く分かった。カテドラル・ナイツとやらは期待以上の集団だと評価を改めよう。だが、甘い」
「な……ニ?」
「我等『八天』には遠く及ばん。特に一と二の太刀にはどうやったとしても葉わぬだろう。そして私も……貴様の遙か上を行く存在だ。貴様は死ぬだろう。どう抵抗しようともな。そして、貴様が死ねば後は容易い。貴様の姿を借り、側からカテドラル・ナイツを崩壊させる。奴への嫌がらせにアルドを殺すのも一興か」
慈堂はそう言うが、こちらにしてみればそれ程の実力差をじなかった。遙か上を行くとまで言われると、世界爭奪戦の際に対峙したあのを思い出すが、彼に同じ差をじるかと言われると、全くじない。
だが虛勢とも思えない。実際はともかく、慈堂にはその自信があるらしい。
「死ぬのは嫌か、『鬼』よ」
「…………カ、わん」
「そうか。では遠慮なく殺させてもらおう。真犯人が私とも知らず、貴様の事を恨みながら死ぬ他のナイツの顔が見たくて仕方がない」
この男を生かしておく訳にはいかない。彼が居るから部崩壊の不安は無いのだが、あの変裝能力を悪用されてナイツ全員を同族殺しに仕立て上げられでもしたら―――他でもないアルドに一番迷が掛かる。
誤解が解けねば、最悪ジバルそのものを敵に回す事になる。ここで逃げるのは愚の骨頂。仮に圧倒的な実力差があったとしても、退く理由にはならない。
―――推して參る!
自ら名乗りたくは無いが、これは剣豪同士の戦い。一瞬の気の緩みが命取りとなる筈だが、あちらには不死染みた力がある。まともにやっていたら持久戦で負けるだろう。なので最初から、全力で行く。
様子見は無しだ。
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