《勇者なんて怖くない!!~暗殺者が勇者になった場合~》第八話
「まさかこんな所で薫と再會するなんてな。大丈夫か? 立てる?」
 そう言って手を差しべてくる、ディーネにとっては見知らぬ男。口調からして、『薫』にとっては顔見知りなのだろう。また面倒な奴が寄ってきた、とディーネは何度目かわからないため息をつく。
「いや、問題ないよ。心配してくれてありがとう」
 當たり障りの無い言葉を言いつつ、自力で立ち上がるディーネ。彼の手を借りなかったのは、果たして煩わしかったからか、はたまた彼が気にらなかったからか。
 男は苦笑すると、ばした手を引っ込めることなくディーネの服へ。ついた土をそのまま払い始める。
「いや、いいって。自分でそのぐらいやるさ」
 こいつもしかしてホモなのではないか、と一瞬ディーネが思ってしまったことは緒だ。
 男の手を払い除けると、制服のズボンやブレザーについた土を払う。
「……悪かったよ。気付くことが出來なくて」
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「気にしないでよ。君のせいじゃ無いんだし」
「おいおい、俺のことは春斗でいいって言っただろ? そんな『君』だなんて他人行儀にしないでくれよ」
 期せずして男の名前を知ることが出來たディーネ。本來ならば喜ぶべきなのだろうが、どうにもこの男の雰囲気がホモ臭くて敵わない。
 ディーネは『薫』の容姿を思い返す。確かに彼は線の細いタイプの男ではあったが……まさかとは思うが、疑は晴れない。
 とにかく、そんな関係はこちらとしてもゴメンである。暗部という汚れ役だとしても、やりたくないものはやりたくないのだ。
 だが、暗部として彼らを騙し通す時にはなるべく『薫』をトレースしなければならない。そして、『薫』が目の前の男とそういう・・・・関係にあったのであれば、自分が斷るわけには行かないだろう。どうしてもやらなければならないのであれば、その時は…。
 ディーネが悲壯な決意を固めていると、男―春斗が聲をかけてくる。
「今度また何かあったら、遠慮無く俺を呼んでくれ。その場でなんとかしてやる」
「大丈夫だって。あんまり気負わないでよ」
春斗は何故ここまで薫に構うのか。ディーネの考えていたホモ説がどんどん真実みを帯びてきており、彼としては冷や汗を隠せない。最早ディーネに出來ることは、そういう関係で無い事を祈るだけである。
これ以上この話題をつついても利益にはならないと考えたディーネは、話題を逸らそうと畫策する。
「ところで、春斗はどうしてここに? 僕がああなっていた事に気付いたからって訳じゃ無いんだろ?」
「ああ、それはコイツだな」
そう言うと彼は、腰に下げていた片手用直剣をポンと叩く。鞘の中で刀と鞘がれ、金屬質な音が響いた。
「それは確か……」
「ああ、俺の能力で生み出された聖剣さ」
ディーネは事前に調査していた勇者達についての報と照らし合わせる。確か勇者というのは、召喚された時になにがしかの《スキル》を手にれると書かれていた。おそらく別世界の人間とこの世界の人間を強制的に中和させるための処置なのだろう。その辺りの説明はディーネの部下の方が詳しいが、彼にもその程度の想像は付いていた。
そして召喚された中で最も強力と思われるスキルを手にれたのがこの目の前の人、「辰己春斗たつみはると」である。
彼の能力は《聖剣聖マスターブレーダー・スミス》と呼ばれ、自らの能力で聖剣を作り出し、能力を飛躍的に上げるというである。まあディーネから言わせて貰えば、「剣持ってし強くなるだけ」とバッサリ切られるほどのでしかないが。
「そんな騒な持って、こんな所で何をする気だったのさ? 辻斬り?」
「俺を犯罪者のように言うのはやめないか? ただの素振りさ。剣の重さに慣れる必要もあるしね」
「え、でももう春斗は強いじゃないか。これ以上訓練する必要なんてあるの?」
ディーネの飛ばした悪戯な質問に、春斗は首を振って答える。
「強いと言っても、それはスキルの強さだしな。アレに頼り切りになると、いつ何が起こるか分からない。それに、パワーのごり押しで魔王に勝てるなら俺たちはいらないさ。しっかりと自分の技も上げておかなきゃ、折角の力が勿ないだろ?」
ふうん、とディーネは頷く。
「ま、応援してるよ春斗。僕は自分の部屋に戻る。頑張ってくれ」
「おう! また落ち著いて話そうぜ!」
そう言って春斗と別れたディーネ。
彼の姿が見えなくなる所まで來た後、一人思索に耽る。
(魔王……確かにあいつはそう言っていた。ということは魔王の復活というのは事実なのか?)
自らが潛した第一の目的でもある、勇者達が召喚された理由の確認。その第一段階として、勇者達にはどう吹き込まれているかという事は自然な形で確認出來た。ただ、この吹き込まれた理由が建前であり、勇者達本人には伝えられていないという可能もある。
(……コイツに関してはまだ調査が必要だな。それに勇者のスペックは…)
次に考えるのは召喚された勇者の素質についてである。これに関しては個々人で千差萬別といったところだろうか。不良集団のような雑魚も居れば、意識も整っている春斗のような有株もいる。今のところ能力を持った人しか見ていないが、弱い《スキル》を手にした者は自分……『薫』のほかにも何人か存在しているという。その辺りの実力も把握しておく必要があると、ディーネは心に留めておいた。
(ま、時間ならたっぷりあるんだ。気長に調べるとしますか)
ディーネは大きくびをして一息れる。とりあえず目下の目標は――
(――俺の部屋がどこか聞きそびれたッ――!!)
――自分の部屋を見つけることだろうか。
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