《勇者なんて怖くない!!~暗殺者が勇者になった場合~》第十八話
 水樹が予想していた通り、人目を避けるように林へと向かったのはディーネであった。誰かに出掛ける所を見られていても、「訓練をしていた」という言い訳が出來るように、きやすい服裝に著替えている。ちなみにボロボロとなっていた學生服は、自分がうと強固に主張した水樹によって回収されている。
 この世界の服のに違和を覚えつつ、ディーネは林の奧へと踏み込み、予定していた通りに魔法を発する。
「――『魔法爐起ラジエーターオープン』」
 その言葉を口にすると、四肢に刻まれた刻印が発し、魔力が中に行き渡った事をディーネへと通達する。
 この起ワードを口にすることが、ディーネが魔法を使うための條件。圧倒的な魔力量を誇る彼が背負っている唯一のハンデである。
 ディーネが過去説明をけた事によると、なんでもい頃にその莫大な魔力量を暴発させないための名殘だとか。今でもそれをリミッターとして活用しているの、ディーネ本人としては一刻も早く解除して貰いたい所だ。
Advertisement
 彼はその魔力を指先に集中させ、空へらせる。すると空中にの帯が、指の軌跡を追うように出現する。ディーネは迷うことなくその手をかし、一つの魔方陣を空中に描いた。
「こんな所か……『屆け、彼かの元へ』」
 最後の仕上げを呟くと、魔方陣が一層輝き、完したことを告げる。暫くすると、何処からともなく聲がディーネの脳に響く。
『……局長ですか。なくとも魔話が出來ているということは無事ではあるのですね。殘念です』
「ははは、初っ端から上司に喧嘩を売る部下なんて初めてだよ。お前減給な」
 ディーネの元へ屆いたのは、共に潛した部下であるフィリスの聲である。出だしからバカにされたディーネは、額に青筋を浮かべながらも彼に応対する。
『そうですか、ならば仕方ありません。國王に局長がこの前経費として私を買っていたと連絡して――』
「すいません! 給料20%アップさせるんでそれだけはお許しください!」
Advertisement
 ちなみに彼ら暗部は月給制。それに加えて任務の達料金がプラスされる。命を賭けた仕事の為、結構な高給取りなのだ。その中でもトップの筈のディーネが常に金欠なのは…まあ別のお話である。
『足りません。50%アップで』
「……せめて30%でお願い」
『40%』
「わかった。35%な」
『仕方ありませんね。それで手を打ってあげましょう』
 なぜ上から目線なのか。自らの部下に対して釈然としない気持ちが浮かんでくるも、そこをグッとこらえるディーネ。もう自分は年ではない、立派な大人なのだと自らに言い聞かせながら、深呼吸して気持ちを落ち著けようと―
『あ、すいません。その件は先月報告済みでした』
「50%カットだこの野郎!!」
 手近にあった木を毆り付ける事で溜まったストレスを発散させるディーネ。なんの罪もない木は鈍い音を立てながらそのを揺らした。
「今月やけに給料ねぇなとか思ってたらお前のせいかよ! おで武の代金帝國魔導開発局ヤツらに払えなくて散々な目に遭ったんだぞ!?」
『……ああ、この間やけに珍妙な格好をして開発局長と街を歩いてたあれですか』
「なんで知ってんのお前!?」
 自らの黒歴史を暴され揺するディーネ。良い様に弄ばれているその姿からは、暗部の威厳など微塵もじさせない。
『いやはや、初め見た時には遂に我らが局長も裝趣味に目覚めてしまったのかと、自らの進退を真剣に考えたですが……いえ、すいません。今もまだ考えていますね』
「遂にってなんだよ!?」
 因みにディーネがしていた事とは、メイドの格好で開発局長に一日奉仕することである。目撃した彼の部下曰く、
「非常に似合っていた。正直持ち帰りたかった」
「あんなことやこんなことをされたかった」
「踏んでしい」
 との事である。この事実が彼にとって良いことなのか悪いことなのか、それは定かではない。
『まあそんな冗談は置いておきましょう。いえ、局長の裝が似合ってしまう容姿については冗談ではありませんが、それも一先ず置いておきましょう』
「話題持ちかけたの君だよね? ねぇ?」
『細かいこと気にすると禿げますよ』
「は、ハゲちゃうわ!」
 咄嗟に頭へと手をやってしまったディーネを責められる者がいるだろうか。いや、ない。
『冗談はこのくらいにして、いい加減始めましょう局長。局長にしても、あまり時間は無い筈ですよ』
「……はぁ、わかったよ」
 フッと自らのスイッチを切り替えるディーネ。それまでのコミカルな雰囲気は一切消え、代わりに張り詰めたような張がその場を漂い始める。
 真剣な表をしたディーネは、自らの手にれた報をありったけ報告する。
「まず勇者達に関してだ。名前などの基本的な報、容姿などに関しては事前報告の通りで間違いないだろう」
 魔方陣の向こうからはただ羊皮紙にペンを走らせる音が微かに聞こえる。帝國への報告書類としてフィリスが記録をしているのだろう。自らのスパイ容疑を証明するを作っているとも言えるが、そう易々と見つかるほど甘い管理はしていない。彼ならば問題ないといえる。
「ただ、元の世界における勇者達の関係が分かり辛い。もしものことがあれば俺は即座に出するから、その為の逃走経路は用意しておけ」
『了解しました。何人かを王宮へと潛させることで対応致します』
「勇者の戦力としての件。これに関しては今は心配する必要はない。ただ、び代を考えると不安要素が殘る所だ。引き続き監視を続けて、逐次報告していく事にする」
『了解。報告書にもそう記載しておきます』
 手早く進んでいく報伝達。暗部としては必須のスキルであり、ディーネ達からしてみればむしろ出來ない方が問題ではあるが、それでもこの早さが帝國が最強たる要因の一部を支えているというのは間違いないだろう。優秀な暗部は優秀な報を集められる。當然の事だ。
「それとあれだ、寶の件なんだが……」
『どういたしましたか? もしや誤作でも起こしましたか?』
「いんや、そこは問題ない。能に関しては申し分なしだ。ただ―」
 ディーネは寶の接続された左腕を掲げる。ガシャリ、と重々しい金屬の音が辺りに響いた。
「―もうしばかり、耐久・・・を高めてしいところだ」
 彼の掲げた寶は、彼が魔力を通すと僅かなスパークと共に焼け焦げたような煙を上げ、その異常を如実に伝えていた。
 異常の原因は至極単純。僅かとはいえ発揮されたディーネの力に耐えきれず、寶が誤作を起こしているのだ。宇野との決闘で相手の魔法を力ずくで掻き消したのが直接的な原因と思われる。
『……次からは自重を覚えてください局長。寶もタダではないのですよ』
「悪かったよ。しばかり勇者の実力を舐めててな」
『そもそもです。局長はいつもいつも――』
「――お説教はそこまでだ。ご來客の様でね」
 と、ディーネの研ぎ澄まされた覚が周囲の気配を察知する。自分へと近付いてくる誰かが一人。ディーネは警戒してフィリスの話を打ち切ると聲を潛める。
『……なるほど。了解しました、ご武運を』
 フィリスが小聲でそう呟いたきり、彼との連絡は途切れる。発していた魔方陣と四肢の紋章がを失うと、ディーネはいつも通り『薫』として行を開始する。
(――はてさて、こんな夜に邪魔をしてくる無粋な侵者さんはどなたかな?)
 袖のから覗かせた何かが、星のを浴びて白銀に煌めいた。
【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。
【注意】※完結済みではありますが、こちらは第一部のみの完結となっております。(第二部はスタートしております!) Aランク冒険者パーティー、「グンキノドンワ」に所屬する白魔導師のレイ(16)は、魔力の総量が少なく回復魔法を使うと動けなくなってしまう。 しかし、元奴隷であったレイは、まだ幼い頃に拾ってくれたグンキノドンワのパーティーリーダーのロキに恩を感じ、それに報いる為必死にパーティーのヒーラーをつとめた。 回復魔法を使わずに済むよう、敵の注意を引きパーティーメンバーが攻撃を受けないように立ち回り、様々な資料や學術書を読み、戦闘が早めに終わるよう敵のウィークポイントを調べ、観察眼を養った。 また、それだけではなく、パーティーでの家事をこなし、料理洗濯買い出し、雑用全てをこなしてきた。 朝は皆より早く起き、武具防具の手入れ、朝食の用意。 夜は皆が寢靜まった後も本を読み知識をつけ、戦闘に有用なモノを習得した。 現にレイの努力の甲斐もあり、死傷者が出て當然の冒険者パーティーで、生還率100%を実現していた。 しかし、その努力は彼らの目には映ってはいなかったようで、今僕はヒールの満足に出來ない、役立たずとしてパーティーから追放される事になる。 このSSSランクダンジョン、【ユグドラシルの迷宮】で。 ◆◇◆◇◆◇ ※成り上がり、主人公最強です。 ※ざまあ有ります。タイトルの橫に★があるのがざまあ回です。 ※1話 大體1000~3000文字くらいです。よければ、暇潰しにどうぞ! ☆誤字報告をして下さいました皆様、ありがとうございます、助かりますm(_ _)m 【とっても大切なお願い】 もしよければですが、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです。 これにより、ランキングを駆け上がる事が出來、より多くの方に作品を読んでいただく事が出來るので、作者の執筆意欲も更に増大します! 勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫なので、よろしくお願いします! 皆様の応援のお陰で、ハイファンタジーランキング日間、週間、月間1位を頂けました! 本當にありがとうございます! 1000萬PV達成!ありがとうございます! 【書籍化】皆様の応援の力により、書籍化するようです!ありがとうございます!ただいま進行中です!
8 156【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの少年は、眠りからさめた女神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】
サーガフォレスト様より、1巻が6月15日(水)に発売しました! コミカライズ企畫も進行中です! 書籍版タイトルは『神の目覚めのギャラルホルン 〜外れスキル《目覚まし》は、封印解除の能力でした〜』に改めております。 ほか、詳細はページ下から。 14歳のリオンは駆け出しの冒険者。 だが手にしたスキルは、人を起こすしか能がない『目覚まし』という外れスキル。 リオンはギルドでのけ者にされ、いじめを受ける。 妹の病気を治すため、スキルを活かし朝に人を起こす『起こし屋』としてなんとか生計を立てていた。 ある日『目覚まし』の使用回數が10000回を達成する。 するとスキルが進化し、神も精霊も古代遺物も、眠っているものならなんでも目覚めさせる『封印解除』が可能になった。 ――起こしてくれてありがとう! 復活した女神は言う。 ――信徒になるなら、妹さんの病気を治してあげよう。 女神の出した條件は、信徒としての誓いをたてること。 勢いで『優しい最強を目指す』と答えたリオンは、女神の信徒となり、亡き父のような『優しく』『強い』冒険者を目指す。 目覚めた女神、その加護で能力向上。武具に秘められた力を開放。精霊も封印解除する。 さらに一生につき1つだけ與えられると思われていたスキルは、実は神様につき1つ。 つまり神様を何人も目覚めさせれば、無數のスキルを手にできる。 神話の時代から數千年が過ぎ、多くの神々や遺物が眠りについている世界。 ユニークな神様や道具に囲まれて、王都の起こし屋に過ぎなかった少年は彼が思う最強――『優しい最強』を目指す。 ※第3章まで終了しました。 第4章は、8月9日(火)から再開いたします。
8 98魔力ゼロの最強魔術師〜やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】
※ルビ大量に間違っていたようで、誤字報告ありがとうございます。 ◆TOブックス様より10月9日発売しました! ◆コミカライズも始まりした! ◆書籍化に伴いタイトル変更しました! 舊タイトル→魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 アベルは魔術師になりたかった。 そんなアベルは7歳のとき「魔力ゼロだから魔術師になれない」と言われ絶望する。 ショックを受けたアベルは引きこもりになった。 そのおかげでアベルは実家を追放される。 それでもアベルは好きな魔術の研究を続けていた。 そして気がついてしまう。 「あれ? この世界で知られている魔術理論、根本的に間違ってね?」ってことに。 そして魔術の真理に気がついたアベルは、最強へと至る――。 ◆日間シャンル別ランキング1位
8 199妹と転移したんだが何で俺だけ狼何だ?…まじで
妹と一緒に転移した筈なのに狼?になってしまった少年の話
8 79完璧超人がスライムに転生した結果
完璧超人の轟純也は自分が嫌いだ。 何をしても目立ち、自由が無い自分。 死ぬ間際に「不自由でもいいから、自由に生きたい!」と願いを言うと、謎の聲と共に意識が浮上し、気がつくと體がスライムになっていた! これは、元完璧超人のスライムとしての冒険の物語である。 息抜きと言いつつ、本編よりハイスピード!
8 176高欄に佇む、千載を距てた愛染で
山奧にある橋。愛染橋。 古くからその橋は、多くの人を見てきた。 かつては街と街を結ぶ橋だったが、今は忘れられた橋。 ある日、何故かその橋に惹かれ… その夜から夢を見る。 愛染橋に纏わる色んな人々の人生が、夢になって蘇る。
8 118