《勇者なんて怖くない!!~暗殺者が勇者になった場合~》第四十七話

  所変わってディーネ達がやって來たのは近くにあった村、ヤクハ村。村唯一の憩いの場所と言ってもいい、中心部の酒場である。

  が、いくら中心部と言えども田舎は田舎。太が中天に登る現在の時刻では、流石に數える程しか客はいない。多くの村人は畑を耕すなど、様々な仕事に出ている為當然と言えば當然だ。

  では、こんな時間からいる客は果たして一何をしているのか。

(……考える必要もないな)

  即座にしようもない考えに至ってしまったディーネは、それを打ち消す為に首を振る。

  因みに一応説明すると、要するに彼らは晝間から呑んだくれている暇人ということである。どこの世界でもそう言った人間は存在するのだ。

  一同は店員に案されるまま席へと座り、各々の注文を済ませる。一段落ついたところで水を一口含み、フィリスは口火を切る。

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「……それで、何の為に私達を呼んだ?  さっさと用件を話せ」

「その言い方ではまるで私に裏があるみたいでは無いですか……そんな意図はこれっぽっちも」

「惚けるな。貴様は博主義だが、用も無い人間を態々呼びつけるような非効率なことはしない筈だ。先程の魔獣討伐の件と合わせて、洗いざらい吐いてもらうぞ」

「……ふう、アメリアさんに隠し事は出來ないみたいですわね。分かりました。本當なら食事が終わってから改めて切り出そうと思ったのですが、こうなれば仕方ありません」

  溜息をつき、降參の意を表すドローレン。彼は魔力で亜空間を開放し、その中からあるを取り出してディーネ達が見やすいように機の中央へと置く。

  白銀のチェーンに、シンプルな裝飾の臺座。そこにぴったりと嵌っているのは、怪しく輝く闇の寶石。見ていると引き込まれそうになるような魅力を放つそれを、ディーネ達は一度見たことがあった。

「それは……!?」

「心當たりがお有りの様ですね。一応説明をしますと、これは先日に討伐した魔獣から確保したです。余りに異常な変種の魔獣だった為、何かしら関係があるかと思って確保しました」

  驚きの聲を上げる水樹達。ドローレンは手にれた経緯を説明すると、周囲の目を気にするように再びそのネックレスを亜空間へと収納する。寶石にはディーネ達が見たと同様《魅了》の魔力が込められており、あまり長時間衆目に曬すのは得策ではない為だ。

「魔獣狩りを専門にしているアメリアさんならば何か知っているのではないかと思ったのですが……どうやら意外な所に報は転がっていたみたいですわね」

「ああ、殘念ながらそいつは私も見たことがない。まあその點で言えば、このタイミングで私達を引き留めたのは正解だったという事だろう」

  ドローレンは真剣な表をすると、水樹へと顔を向ける。

「ミズキさん。貴方達が見たというネックレスの事をお聞かせ願えますか?」

「ええ、あれはし前の話なんですけど……」

  そして、ネックレスを見かけた時の狀況を、骸や奏の助けも借りながら事細かに伝える水樹。その話を腕組みしつつ、時折相槌を打って聞いていたドローレンだったが、彼が話し終わると腕組みを解いて水樹へと頭を下げる。

「ありがとうございます、ミズキさん。おで詳細が隨分と判明しました」

「いえ、こんな報で良ければ……そう言えば薫、あれ持ってたんじゃ無かったっけ?」

「ああ、確かに僕が持ってたけど……危ないからって言われて城に著いたらメリエルさんに回収されちゃった」

「あの年増騎士……肝心な所で」

「……まあ、そういうキャラもいるよね」

  軽く毒を吐く水樹に、フォローしているのかしていないのかよく分からない骸。そんな彼らを見て、奏はあらあらとよく分からない笑みを浮かべる。何時もの景だ。

  因みに、ディーネがメリエルにネックレスを持っていかれたのは事実だ。流石の彼と言えど、危険を想い人が所持している狀況は見逃せなかったのだろう。

  ただ、現在のネックレスの所在については別の話である。ディーネの元には既に『ネックレスの奪取に功した』という報告が上がってきており、おそらく現在では帝國の技局で解析が行われている頃だろう。重要な証拠品を、彼らが指を咥えて見逃すはずが無い。

「魔獣の能力を強化するネックレス……こんなものが複數存在するとなると、何かしら意図的なじざるを得ませんね。原因は々と考えられますが、やはり何処かの誰かが作ったというのが最も可能の高いでしょう。魔獣自が作ったという事も考えられますが……」

「まあ、想像もしたく無い話だな。奴らに知能が備わっても、ろくな結果にならないと決まっている」

  フィリスは肩を竦め、ドローレンの言葉を否定するように首を振る。

  真実を知っているディーネやフィリスは、相変わらずのドローレンの鋭さに心で舌を巻いていた。いずれは辿り著く結論とは言え、その結論に辿り著くための報を一気に手にれらるというのは豪運という他無い。

「……當初は一人で報を集めるつもりでしたが、し気が変わりました」

  ドローレンは笑みを浮かべると、自に手を當てる。祿でもないことを考えているな、とフィリスは顔を顰めた。

「これより私、ドローレン・フェミニウスは貴方達と行を共にさせて頂きます。嫌だ、と言われても勝手に著いていきますので、どうか宜しくお願いしますね?」

「……そんなことになるんじゃないかと思っていたよ」

  フィリスが頭を抱えるも、それを楽しむかのようにより一層彼へと笑みを浮かべるドローレン。『聖』と言われる割には、どうにも格の悪い笑みだと言える。

「ふふ、よく考えたら魔獣を狩る冒険者に著いていけば、より魔獣と戦えるのは當たり前のことだと思いまして。餅は餅屋、ですわ」

「貴様に振り回されるにもなってみろ。ほら、ミズキ達も……」

  そう言いつつフィリスは水樹達を見やるが……。

「ドローレンさんが著いてくるんですか?  とても頼もしいです!  ぜひ!」

「……イベント加、とても歓迎」

「キャラが多被っている事に目を瞑れば、確かに頼もしいですわね」

「うん、俺も賛だ」

  彼の思いとは裏腹に、一同は歓迎ムードでドローレンの事を迎えれる。これでは頼りにならないとじたフィリスは、最後の砦とばかりにディーネへと目を向ける。

(……無理だ、諦めろ)

  そんな意思を込めながら靜かに首を振るディーネ。ついにフィリスはがっくりと肩を落としてしまった。

  そしてこのタイミングで屆けられる料理の數々。うな垂れたまま靜かにスプーンを持ち、彼は靜かに料理を口に運び始めた。周囲に幻視出來る黒いオーラが、彼を如実に語っている。

「では決まりですわね!  丁度料理も屆いた事ですし、早速頂きましょうか」

  そんなフィリスを放って話を進めるドローレン。彼も大概変人であると、このタイミングで水樹達は実出來た。

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