《異世界は今日も平和(個人的見解)なので、喫茶店を経営します》

『おめでとうございます、3等賞、大當たり~』

*****

俺、舞澄辿まいずみたどるは死んだ。

過労死だった。

たぶん。

パソコンの畫面にJavaでプログラムを打ち込んでいたところまで記憶がある。

その後の記憶が一切ないが、1週間の耐久レースの果て。

俺はエナジーストップを起こしてしまったのだ。

最後はランナーズハイのような狀況で、『病院、くるなら、來てみろ』といった狂った思考が脳を舞っていた。

次に目を覚さましたとき、俺は何もない、白壁の広い部屋に、仰向けで寢転がっていた。

を起こし、じっと手を見る。

いつもの俺の手。

しかし。

生前、あれだけの睡眠があったのが噓のような、覚醒狀態。

眠気どころか、疲れもなく。

だからこそ。

背後からの気配を、すぐに察知することができたのだと思う。

「お目覚めですね」

優しいの聲。

引き寄せられるように振り返ると、天使。

狀蛍燈が脳天に飾られて。

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ギリシャ神話かなんたら神話か。

そんな白い、真っ白い、純白の『布』でを覆い。

そこから覗のぞく、腳線、そして満たる。

を長時間眺めると無禮なので、すぐに視線は顔へ。

ブロンドの長髪が右目を隠し。

左目のは青。

その瞳のラインが、緩やかなカーブを描いて落ちる。

こんなと、に落ちてみたかった。

「テッテレー!

異世界転生ガチャのコーナー!」

「は!?」

突然、テンションMAX、アズMAXな天使さん。

両手を高く掲げての満面の笑み。

「面倒なので、概略のみ説明します。

あなたは死にました。

で、今から異世界に転生します。

その世界は魔が跋扈ばっこする、常に死と隣り合わせの世界です。

さすがに手ぶらではかわいそうなので、好きなアイテム、能力を特典として付與します。

そして~」

その瞬間、目の前がり、とっさに防姿勢を取る。

・・・。

がおさまったとき、そこには、先ほどまではなかったモノ。

それは。

スーパーの景品くじ引きなどでよくある、『ガラガラ』だった。

「パンパカパーン。

これが、異世界ガチャ裝置です」

「これ、ガチャなの?」

「ガチャガチャいいますし」

「ガラガラでしょ」

「このガチャを引いて、出た玉のによって、付與されるアイテム、能力の數が変わります。

金の玉が1等賞で、特典10個。

銀の玉が2等賞で、特典5個。

銅の玉が3等賞で、特典3個。

赤の玉が4等賞で、特典2個。

青の玉が5等賞で、特典1個。

白の玉がハズレで、特典0個、です」

「ハズレってなんだよ!

そんなもんれんなよ!」

「そのほうがドキドキするでしょう。

スパイスです。

逆に金玉、銀玉が出る確率は、ほんとに低いです」

「略しちゃダメ!」

「では、さっさと引いてください。

順番待ちの死人たちが列を作ってますので。

詳細は取扱説明書を付與しますので、そちらを見てください」

「取説あんの!?」

天使さんが、だんだん雑になってきた。

この人も、もしかすると過労なのかもしれない。

そんな考えが浮かんだ。

さっさと回そう。

ガラガラー、っとね。

・・・

「おめでとうございます!

3等賞、大當たり~」

『大當たり~』とは言われたが・・・。

各出玉の出現確率を聞いていないので、喜んでいいのか、よくわからない。

「あなた、運がいいですよ!」

「運がなかったから死んだんですよ」

「銅玉も、めったに出ないんですよ。

白玉と同じくらいのレア、俗に言うSレアってやつです」

「白玉をレアって呼んじゃだめだろ」

「白玉を引いた人間の、あの、絶に満ちた表

たまりません」

「あんた、ほんとに天使なの?」

*****

その後、俺は、別室に通された。

その際、手渡されたのは『取説』。

まずは、これを読し、読了ののちに呼び鈴を鳴らせとのことだった。

・・・

天界って、こんな業務的なの?

部屋は、またしても真っ白。

しかも狹い。

漫畫喫茶の個室くらい狹い。

しかし、ドリンクバーどころか椅子さえも存在しない。

俺は、床に直じか、育座りで取説を読み進めた。

*****

読了。

ベルを鳴らすと、先ほどの天使さんがやってきて、最初の大部屋に再度通された。

ここで、取説の容の要約を説明する。

・大部屋に通されたあと、すぐに付與能力(もしくはアイテム)の要を開始する

・制限時間3分

・あまりにもチートな能力の場合、棄卻される

・故に、3分以に有効な能力を指定可能な個數分、天使に報告し、承認をけること

・制限時間を超えた場合、その後の発言は無効扱いとなる

・その後、すぐに異世界へ転送開始

・また、指定可能な個數分の申告が完了しても転送開始

・転送場所は選択不可

・まあ、がんばれ

以上。

「では、スタート」

『何を』スタートするかの説明、一切なくの合図。

戦略は1つ。

制限時間をいっぱいに使って、可能な限り無理そうな要から順に挙げていくこと!

しかし、その前に。

一言だけ。

言っておきたい、ことがある。

「俺は、魔とは戦わない」

「戦わないではなく、襲われるのですけどね」

「なので、まず1つ。

『シェルター』がしい。

しかも、『冷蔵、冷凍』機能付きのシェルターがしい。

かつ、移、呼び出し可能とする」

「なんで、そんなもの?

まあ、承認します」

「次!

倒した相手モンスターの能力を吸収できる、武としても使用可能な『包丁』がしい」

「うーん、『能力スキル吸収系』ですか。

よくある要です。

まあ、これは制限付きで許可します。

その制限は、また別途取説をつけますので、これを読んでください」

「最後!

シェルターを部に含むことができる、移、呼び出し可能な『喫茶店』がしい!

かつ、喫茶店の売り上げに応じて、この喫茶店の敷地を大きくできる、とする」

「は?」

天使の眉間にシワが寄る。

しかし、天使には義務があるのだ。

提示された要には、可能な限り速やかに回答する、ということ。

これも、取説に書いてあった。

「まあ、いいですけど。

承認です」

「よっしゃ!」

天界に來て、始めてのガッツポーズ。

否、前世でガッツポーズなんかしたことなかった気がする。

棄卻時の代案も考えていたが、全て不要のものとなった。

「可能要數、全てを使い切りましたので、これより転送を始めます。

心の準備だけしてください」

「へいへーい」

そして、俺のり始める。

ついに転生のとき。

しばしの間、天使さんと目が合う。

「喫茶店、経営してみたいと思ってたんですよ」

「そんな呑気なこと言ってたら、死にますよ」

「呑気なこと言わなくても、死にましたんで」

「そうですね」

「・・・。

この部屋、真っ白で味気ないので、何か家かなんか置いたらどうですか?」

「私には、その権限はありません」

「じゃあ、もし喫茶店が大きくなったら、遊びに來てください」

し寂しそうな表を浮かべた天使さんは・・・。

「休みができたら、出向きますよ」

そう言って、笑みを見せてくれたのだった。

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