《Primary Wizard ~ゼロから學ぶ基礎魔理論》

私が初めて挑戦した闘技場のランクは、賞金の出ないランクQ。

スパークとエーテルの魔を習得した後に出場したのが、1000$ジル程のわずかな賞金の出る闘技場ランクP。

ランクが上がるたびにアルファベットが若くなる。

現狀で私が使える『バースト』『スパーク』『エーテル』の3つの魔法を反復使用することで、ノムに教わった『収束』『放出』『制』の3能力を向上させる。

この目的を心に刻み、私は闘技場ランクPに再エントリーした。

相手のモンスターは最低ランクのランクQとほぼ同じ。

3戦目で戦ったゼリー狀のモンスターのがオレンジであった程度の違いだ。

槍と魔法を使い分ける戦い方に慣れてきた私は、苦戦することなく勝ち進んだ。

勢いに乗り、次の日には、次のランク『O(オー)』にエントリーする。

とオレンジのゼリー狀モンスター、&、やる気のない顔をした巨大なモグラのモンスターをあっさりと撃破。

そして、ラスト。

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ランクQ、Pでも相手にしたエーテルゴーレムが登場。

外面は同じだが、前ランクと比べると、きが數段機敏になっていた。

ゴーレム製造に使われている素材がいいのかしら。

などと簡単な考察を行ったのち。

戦闘開始。

その瞬間、私は裝備武の槍を場外に投げ捨てる。

邪魔。

突撃してくるゴーレムを持ち前の敏捷でもって対処しつつ、エーテル、バーストの魔法を続けざまに浴びせる。

最後にスパークの魔法を直撃させると、ゴーレムはかなくなった。

エーテル、バースト、スパークの魔は完璧にマスター。

戦いにも魔にも、それなりに自信が付いてきた。

使うほどに、その魔の個がわかってくる。

エーテルの魔が一番程が長い。

他の2つに比べると攻撃力が低いが、敵が近づいてくる前に先制攻撃できる利點は計り知れない。

スパークは消費魔力量が大きいが、その分攻撃力が高く、初撃で使うと一気に相手の力を削れる。

程は若干短め。

バーストはその中間といったところか。

さて。

『収束』『放出』『制』の3能力も、もう十分に長していることだろう。

などと、明確な拠もなく確信する。

付で賞金の1500$ジルをけ取り、私はノムの待つ宿に向かった。

*****

「うーん」

お寶でも鑑定するかのように、ノムが私を舐め回すように観察する。

鑑定やいかに。

「そこそこ強くなったみたいだね」

合格の査定結果をいただいた。

ただ、よくわからない。

をノムの前で使って見せて、威力や放出距離、発速度なんかを確認されるのかと思っていた。

見ただけでわかるの?

適當なこと言ってない?

が、いろいろいちゃもんを言って合格取り消しになるのも嫌なので、気にしないことにする。

「たくさん魔法使ったし。

強くなった実はあまりないけど」

なり強くはなったとは思うが、ノム先生と比較すると、その長量は誤差レベル。

強くなったと言ってよいのか。

「じゃあ、チェックする」

「チェック?」

「どれぐらい強くなったかチェックする」

「どうやって?」

先の私の考察の通り、魔の実技試験が始まるのかしら。

なんか張する。

「來ればわかる」

そう言って宿を出る先生。

そこはかとなく嫌な予

が、しかし、追従するしか選択肢はないようです。

*****

街外れの草原。

先日、エーテルの魔法を習得したときと同じ場所で。

先導していたノムが振り返り、私も立ち止まる。

その後、しばらく無言。

何?

たっぷり間を取って、その後、ノムが杖の先端を私の顔に向けてきた。

一瞬、思考停止。

その直後、のいろいろな部分から脂汗がにじんでくる。

「私が相手する」

ノムが臨戦態勢です!

やられた!

殺られる!

「殺すつもりじゃないよね!」

最低限の確認。

その他數點聞きたいことはあったが、その前にノムが回答する。

「もちろん手加減する。

じゃあスタート」

「っていきなり?!」

問答無用とはこのこと。

整理と覚悟の暇なく、昇級死験が始まった。

*****

私達2人の間に涼やかな風が吹き抜ける。

『もしかしてノムが発した風の魔法では』という考えが一瞬反的に浮かび、戦慄せんりつを覚える。

闘技場初日を超える、圧倒的恐怖。

ノムは1歩もかない。

『先に魔法を使え』という、無言の圧力。

時間経過のみで、神的にすり減る。

・・・。

どうせなら。

の驚く姿を見てみたい。

そんな。

命知らずの戯言たわごとが。

頭の中をかけ巡り。

私は。

私は!

ノムに向かって走り出す。

槍を両手で扱う。

左手は添えるだけ。

右手に力を込める。

槍は囮。

一定距離まで近づいたところで槍をノムに向かって投げ、彼がひるんだ隙に一気に間合いを詰め、回避困難な近距離でスパークの魔法を直撃させる。

以上の作戦を脳で復唱しながら、青髪魔師との距離をめ。

出位置!

右手を引き、槍を投げる勢に・・・

>

ろうとした私のは、進んできた方向と逆方向に吹っ飛んだ。

耳を劈つんざく発音と、雲1つない青く澄み渡った空を知覚する。

それ以外の報を取得できないまま、私は意識を失った。

*****

「どこが手加減したんだよ!

私、瞬殺しゅんさつされたし!!」

夕日に照らされた草原に、私の怒號が響き渡る。

意識を取り戻した私は、いまだ本調子ではない脳をフル稼働して報整理を行い、『ノムが手加減しなかった』という結論に達した。

いくらなんでもあんまりだ。

「手加減しなかったら死んでる」 

手加減の有無の問題ではなく、手加減の定義の問題だ。

手加減すりゃいいってもんじゃない。

教え子を発魔法でぶっ飛ばす先生とか、倫理上大丈夫なの?

それにしても、たった1撃で終わらされてしまった。

こちらは魔法の1発も発できなかった。

さすがにこれでは・・・

「で、チェックの結果は、まあダメだったと」

「いや、合格。

ちゃんと強くなってる」

「なんでだよ!!

わたし、ほぼ何もしてないじゃんか!」

意味不明。

理解不能。

ノムは私の何を確認して合格と言っているのか?

半殺しにされたのだから、説明くらいしてしい。

「大丈夫、なんとなくわかる。

それに楽しかったし」

「『それに楽しかったし。弱者をねじ伏せるのが』

って聞こえたけど」

もしかしてノムって、嗜的なアレなの?

趣味なの?

もしくは、ストレスたまってるの?

私が言うこと聞かないから?

明日から、もうし頑張ろう。

死にたくないし。

ノムが街の方角にを向ける。

どうやら試験はこれで終わりのようだ。

1歩2歩歩いたかと思うと、ノムがこちらを振り向いた。

「明日からは次のステップ。

次は、今回よりもさらに重要な容だから。

楽しみにしてて」

私をおいて帰路につくノム。

の哀愁。

草原にを吸われた狀態で、その背中が小さくなっていくのを見つめる。

「わたし、ステップごとに半殺しにされるのかな?」

いつも無表の浮かべる微笑びしょうにいやらしい何かをじ、私はそうつぶやいた。

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